あらすじ
大阪の心斎橋からほど近いエリアにある「空堀商店街」。そこには、兄妹二人が営むガラス工房があった。兄の道は幼い頃から落ち着きがなく、コミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調したり、他人の気持ちに共感したりすることができない。妹の羽衣子は、道とは対照的に、コミュニケーションが得意で何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいる。正反対の性格である二人は互いに苦手意識を抱いていて、祖父の遺言で共に工房を引き継ぐことになってからも、衝突が絶えなかった。そんなガラス工房に、ある客からの変わった依頼が舞い込む。それは、「ガラスの骨壺が欲しい」というもので――。『水を縫う』『大人は泣かないと思っていた』の寺地はるなが放つ、新たな感動作! 相容れない兄妹ふたりが過ごした、愛おしい10年間を描く傑作長編。
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Posted by ブクログ
兄妹の関係や、人それぞれの「普通」の違いについて深く考えさせられる作品だった。
発達障害の可能性がある兄と、その兄にずっと苦手意識を持っていた妹が、ガラス工房を通して少しずつお互いを理解していく流れがとても面白かったし感動した。
特に印象に残ったのは、118ページの、
「ぼくにとってはひとりひとりが違う状態が『ふつう』なんや」という言葉だった。
羽衣子は“特別な人”と“その他大勢”という感覚を持っていたけれど、道にとっては、一人ひとり違うこと自体が当たり前だった。その考え方がすごく優しくて、「普通になりたい」という気持ちが「普通にならなきゃ」としんどくなっている羽衣子にとって大切な考え方だなと思った。
信頼についてのやり取りもすごく印象的だった。
「『茂木くんはぜったいに自分を傷つけない』は信頼とは違うと思う。それはただの期待や」
という言葉は、自分の中でもかなり考えさせられた。過去に傷つけられた経験があると、「また同じことになるかもしれない」と思ってしまうけれど、今目の前にいる人は過去のその人とは別人で、似ている部分があったとしても、今自分関わっているその人自身をちゃんと見て判断しないといけないのだと思う。
182ページの、
「他人の感情って、天候なんかと同じやなって。ぼくがコントロールできるものではない、という意味では。雨が降ったら傘さすみたいに対処すればええんやと思うようになった」
という言葉もすごく好きだった。
理不尽なことがあった時、自分のせいだと考えすぎたり、「どうしてこうなるんだろう」と抱え込みすぎてしまうことがある。でも、人の感情や行動には、自分には理解できない事情や複雑さもあるのだと思うと、少し楽になれる気がした。諦めるというより、「自分ではコントロールできないものもある」と受け止める感覚に近いのかなと思った。
それから、この作品は子供との向き合い方についても考えさせられた。
ただ「普通」に矯正するのではなく、その子自身を理解しようとすることが大切なのだと思った。世間的に間違っていることはきちんと伝えながらも、まずは子供の目線で物事を見て、味方になってあげることが必要なのだと思う。
違っていることも、その人の個性であり魅力の一つなんだと感じたし、もし自分に子供ができたら、その子がつらいことがあっても「それでも生きていこう」と思えるような存在になれたらいいなと思った。
Posted by ブクログ
私自身も羽衣子と同じように、道は特別だから、障害があるけど輝くものを持ってる、と思ってしまっていた。ハッとさせられた。
あっという間に読み終えたし、没頭しすぎて現実に戻るのが大変なくらいだった笑
Posted by ブクログ
2人の合わない兄妹がそれぞれ苦悩を抱えてガラス工房とお互いと向き合っていく。道と羽衣子の
それぞれの視点で物語が進んで行くのが良かった。
舞台となった空掘商店街のガラス工房も見てみたい。