あらすじ
「国」や「言語」の境界が危うくなった現代を照射する、新たな代表作!
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。
誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
「国はもういい。個人が大事。そこをいともたやすく、悲壮感など皆無のままに書かれたのがこの小説とも言える」
――池澤夏樹氏(文庫解説より)
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Posted by ブクログ
この物語の主人公 Hiruko が話すオリジナルの言語であるパンスカは、体言止めで、独特な言い回しをする言語だった。また言語といっても、そこに決まった形はなく、Hirukoがその時感じたままを、スカンジナビア半島周辺の言語の中で、より同じような質感を持つ言葉を選びつつ、会話は展開されていた。
恥ずかしながら、今まで日本語は表現できる種類の言葉が多く、表現においてあまり不自由を感じたことはなかったが、日本語という言語に支配されているからこそ、語ることのできないものも同時に存在するということを知る機会になった。
本書を読み、さまざまな言語を学ぶことは、さらに自分の表現の幅を増やすということにつながるのだと思った。
Hiruko の話す言葉は、字数やわかりやすさという指標に囚われておらず、読むのがすごく楽しかった。
ところで、旅がしたくなった。
Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ
自分が言葉を話せることや、言葉自体を
改めて素敵だと感じられる一冊。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
「国」や「言語」の境界が危うくなった現代を照射する、新たな代表作!
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。
誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
「国はもういい。個人が大事。そこをいともたやすく、悲壮感など皆無のままに書かれたのがこの小説である」
――池澤夏樹氏(文庫解説より)
⚫︎感想
言語を扱った本が大好きなので、とても好きな本になった。多和田葉子さんの作品はこちらが初めてだったが、他の作品も必ず読みたいと思う。何語だろうが、言葉のもつ、それ自体の響きや美しさやいろんなものを体感できる。
日本が失われ、日本人であるHiruko が日本語を話す人間を探す旅。設定やHirukoの困難への対応や内省が素敵で、一気に引き込まれた。出会う人々もさまざまな特徴を持っていて興味深い。もう一度読みたい。
Posted by ブクログ
面白く読んだのに、いざ感想を書こうとするとまとまらない…まとめられない。
消滅した国の言葉を話す人を探す旅。
消滅した国を故郷に持つHirukoは、独自の言語「パンスカ」(汎スカンジナビア語)を作り出して喋っている。その言語に興味を持ったデンマークの言語学者クヌートを筆頭に、旅の仲間が増えてく……
旅のきっかけや目的がハードで、手掛かりを掴んだと思ったらそうすんなりといかず…ですが、切実さよりも光や和気藹々を感じています。今のところ、かもしれないけれど。
HirukoとSusanoo、古事記の神様から付けられてるとしたら、この先はもっと大変なことになるのかなぁ。
ナヌークが開いたHPが、しばらくしたら消えているという描写があるので、日本の消滅の理由も剣呑なものかもしれません。小川洋子さんの「密やかな結晶」のように。
文化の片鱗はあるのに、場所も名前も記憶されてないとは……アジア人の区別つかないとはいえ。
去年、友人がデンマークへ旅行し、オーデンセにも滞在したので、長いこと積んでたけれどこのタイミングで読んだことは良かった気がします。
土産話聞いてなかったら、地名でさらに「???」となってたかも。
続きも読みます。
Posted by ブクログ
多和田葉子の言葉遊びが冴え渡っておりますね
パンスカなんて言語は多和田語でござんすわ
直感でありながら体系的、詩的で簡潔、超噛んでる
群像劇で多視点展開。僕らは今どこにいる?
場所も心もどこにある?
外面を変える、心を切り替える
スイッチ、不一致、ミファソラド
三部作とのことでこの先も気になりやさあねぇ