あらすじ
「伝説のコンサルタント」の第一作
1963年、国が定めた会計の指針に反逆し、
管理会計の重要性を説いた話題書が復活!
原価を“経理の塔”から引っぱり出し、広く大衆のものにする方法論
今までの原価計算のやり方が、
いかにダメなものであるかを明らかにする――
生きている経営に、
死んでいる原価計算を使うわけにはいかない。
(本書より)
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Posted by ブクログ
会計原則に固執していては事業の実態が見えてこない。本当は赤字なのに、会計上では黒字に見えてしまう事はままある。その最大の原因は「固定費の割掛け」である。伝説の経営者であり、多くのカリスマ経営者の師範でもあった一倉定氏。彼が出てくる前は、管理会計という概念すらなかったのであろう。固定費の配賦を間違えては実態とは異なる原価が計算され、赤字であるのに黒字であるといった誤った情報を元にした誤った意思決定をしかねない。本書では分かりやすく例をあげている。
本書は昭和38年(1963年)に書かれたたものであるが、その当時にこのような視点で経営を見ていた著者の先進性に驚く。復刻版という事で、当時と現在では取り巻く状況は大きく異なるが、本質は分からないのである。会計屋の言う事をそのまま鵜呑みにせず、会社が利益を出しているのかどうかをしっかりと把握し必要な手を打つのが経営者の仕事という事だ。
前半では固定費を製品の原価に入れる事によって、製品が売れない限りはそれが棚卸資産となり費用化されない事を問題視する。当たり前の話であるが、当時はまだ管理会計という概念すら無かったのであろう。書中では、固定費を製品原価と切り離して別の費用として計上するダイレクトコスティングとして提示されているが、海外企業がよく使うコントリビューションマージンと概念は同じである。
財務会計上の処理をそのまま鵜呑みにする経営者であってはならない。特に製造業が日本を引っ張ってきた中で中小企業の経営者などはそうした問題点を気づかない人も多かったのではないかと思う。実際、現在でも管理会計をしっかりと使いこなせている企業は多くないはずである。書店に行けば、原価計算のノウハウ本が売っているが、本質を理解しない薄っぺらい知識しか身につかないものばかりである。本書はそうしたものとは一線を画する本質を語った名著である。
書中、本田宗一郎氏の言葉が何度か引用されているが、当時はまだホンダも創業して10数年程度。まだ自動車には進出しておらず世界一のオートバイメーカーを作り上げた人として紹介されている。そこで語られているのが、人は自分のために働くという事。会社のために働くなどという人間は欺瞞であり、キライだと。自分のやりたい事をやる時が一番能率が上がると。この人間理解が後のF1制覇へと繋る原点を見た気がした。