伊藤章治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「○○の歴史」を読むのは趣味みたいなものだが、歴史の大きな流れと○○が交錯するのが楽しい。
交易だけでなく、侵略行為や戦争によって酒や食べ物が別のエリアに渡ったり、○○の普及に歴史上の偉人がかかわっていたりする。
教科書上の史実や人物が急に生き生きと動き出すから不思議なものだ。
本書は、サブタイトルに「貧者のパン」とあるとおり、困窮史とジャガイモ史を重ね合わせた一冊。
清水安三(桜美林学園の創立者)とか川田龍吉(男爵イモの由来にして実業家)、志方之善(初の女医・荻野吟子の夫)なんかは、別途調べてみたくなった。それにしても大原孫三郎(クラレほか多数の企業にかかわり、社会貢献事業が半端ない)はいろんなところに出てくるなあ。すごい。
ま、本書は本書でアリなんだけど、品種(改良)とか料理とか、別のアプローチからの歴史も読んでみたくなった。
世界的に定着し、さまざまな食べられ方をしているのは、「飢えをしのげる作物だった」だけじゃないはずだろうから。 -
Posted by ブクログ
本書は、ジャガイモがいつどのようにして世界に広がったのかの考察書である。内容は学術的考察が多いようにも思えたが、知識としては興味深い。
本書によると、ジャガイモの原産地は南米ペルー・ティティカカ湖のほとりで、標高4000mの寒冷の地。人間の手による栽培化がはじまったのは、思ったよりも遅く西暦500年ごろだという。
それが、16世紀にインカ帝国を滅ぼしたスペイン人によってヨーロッパにもたらされ、日本には16世紀の末にオランダ船員によって運ばれたという。日本にきたのが、江戸中期とは、思ったよりも新しい作物なのだと思えた。
興味を引いたのは、ジャガイモは、寒冷地でも栽培が可能という点による「救荒作物」としての役割である。どの国でも「飢饉」は常態であった当時に「貧者のパン」として活躍した本書の歴史経過は、興味深いと思えた。
ジャガイモ歴史は、単に作物の歴史にとどまらず、飢饉による政治変動や移民などの社会変動につながることが本書で明らかにされている。これは「人類の歴史」が同時に「食べることとの戦いの歴史」であったということだろう。
本書によると、日本において三食とも米を食べられるようになったのは1955年(昭和30年)以降だったという。現在では想像もつかないことであるが、それまでは満足に食べることができなかったというのだ。歴史を考える上で、この視点は絶対に必要なものだとも思えた。
ただ、本書はジャガイモをとおして世界史の一面を考察しているが、扱う領域が多すぎるようにも思え、駆け足の考察のようにも感じた。しかし、世界史におけるジャガイモの重要性は十分にわかる本である。 -
Posted by ブクログ
「ジャガイモの世界史」というタイトルですが、中身はジャガイモに関する歴史エッセイで、半分くらいは日本に関することとなっています。南米のチチカカ湖付近を原産とするジャガイモは、土壌が悪くても収穫でき、栄養も豊富でまさに「貧者のパン」として救荒作物として世界を巡ります。ジャガイモが歴史に関与した事例は、有名なアイルランドのジャガイモ飢饉だけでなく、1991年のソ連クーデタにも顔を出します。また桜美林大学もまたジャガイモとつながりがあるそうです。ただ、著者がのべている「ジャガイモが「お助け芋」として登場する時代は「異常な時代」」という言葉は相当に重い言葉だと思います。