片山慶隆のレビュー一覧
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【大きな、それは大きな鼠でした】外務次官、そして外務大臣を務め、さらには主要国の公使や大使を歴任するなど、近代日本の外交を考えるにあたって避けては通れない人物、小村寿太郎。近代日本の悲願であった不平等条約改正や日英同盟等の小村が携わった外交案件をたどることにより、その時代の日本の外交の輪郭をも浮かび上がらせる力作です。著者は、関西外国語大学の専任講師等を務められた片山慶隆。
睦奥宗光があまりに大きな存在なので、どうしてもその影に隠れてしまいがちなのですが、改めて本書で小村寿太郎の足跡を考えると、小村が果たした役割というのもとんでもなく大きいものであることに気づかされます。そしてその役割の大 -
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本書は、日露戦争期におけるメディア-特に、新聞報道を考察したものである。この時期の新聞報道と言えば、大多数の新聞は日英同盟を背景に対ロシア強硬論(開戦論)を煽る一方で、ごく少数の「非戦論」者たちが開戦に反対した・・・というイメージが一般的に持たれている。筆者は、そうしたイメージは「神話」に過ぎないとして、複数の新聞を比較検討することで、当時の新聞報道の実態に迫っている。
本書が明らかにしたのは「当時の新聞の外国認識は、きわめて多様性に満ちており、それは一様でも、また政府の言いなりでもなかった」(p.201)という事実である。例えば、国を挙げて歓迎されたと言われている日英同盟でさえ、実は反対論 -
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本著から小村寿太郎の通史を知ることができる。
小村寿太郎は日記、手記等を残さなかったからか(当時は珍しいのでは)、彼に関する書物は意外と少ない。
歴史小説を含め。
その意味では貴重な本かもしれない。
小村寿太郎は藩閥でもなく、実力で外務大臣に上り詰めた。
また、彼を引き上げた陸奥宗光も非藩閥の実力者。
明治という時代は少数精鋭の時代ともいえるが(多くの優秀な人材が幕末で亡くなったという意味で)、彼のような実力者が登用されるという風土があったことが、時代のひとつの特徴ともいえるかもしれない。
ちなみに、”特徴”ということは、現在に学ぶべきこと、という意味も込めて。
(ただ、日清戦争時に、山県、 -
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日清、日露の激動の帝国主義の中に生まれた豪腕外務官僚。この時代だからこそ活きた人間だったと思うのだけど、政党に左右されずに一貫してポリティカルパワーのみで動いた姿勢は今でも参考になるに違いない。
朝鮮を確信的利益の土地としてロシア、英国とも渡り合い、最後は併合してしまったという事は朝鮮人からすると憎くてたまらない人間なんだろうね。
しかし、携帯電話がないこの頃の(今もそうかもしれないけど)外務大臣って本当に全権を委任されて条件を譲歩しながら交渉して妥結まで持って行ってるんだねとシミジミ思った。個人の力量が国を左右していたのだなと。いゃぁ、すごいね。 -
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関西外国語大学国際言語学部専任講師(日本近代史)の片山慶隆(1975-)による、外交官・小村寿太郎(1855-1911)の評伝。
【構成】
序章 二つの視角
第1章維新の激動のなかで
第2章外務省入省-官僚への転身
第3章日清戦争の勃発-駐清・駐朝公使時代
第4章「ねずみ公使」として-義和団事件への対応
第5章日英同盟と日露戦争-1901年、外相就任
第6章戦時外交と大陸進出-「満州問題」の発生
第7章同盟国の外交官-駐英大使として
第8章米中の狭間で-第二次外相時代
終章 小村外交とは
小村寿太郎と言えば、ポーツマス条約の全権大使、日米通商航海条約の改正による関税自主権回復といった業績で -
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ネタバレ偉大なる「ねずみ公使」の真実
幕末に結んだ欧米列強との不平等条約の改正を目指し、一九〇〇年代に日英同盟、日露戦争、韓国併合を推進した外相・小村寿太郎。日向国飫肥(おび)藩の下級藩士に生まれた小村は、病弱で一五〇センチに満たない身長、非藩閥出身と恵まれない出自ながら、第一回文部省留学生としてハーバード大学に留学。抜群の語学力と高い交渉能力を身につけ、日本を「一等国」に引き上げた。帝国主義と国際協調の間を巧みに動いた外政家の真実。
序 章 二つの視角
第一章 維新の激動のなかで
第二章 外務省入省 官僚への転身
第三章 日清戦争の勃発 駐清・駐朝公使時代
第四章 「ねずみ公使 -
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本書は、明治後期の「小村寿太郎」という近代日本を代表する外交官の本であるが、読みやすい上に、この時代をよく理解できるものである。
本書は、「小村寿太郎」の紹介を通して、その時代の日本についてもよくわかる構成となっており、この時代の歴史書としても高く評価できるが、この時代をよく知ろうと思うと、これでもまだ粗いのではないかとも思えた。
この時代の日本は、現在から見るとまったく別の世界の国のようなもので、知らなければならないことは数多い。
著者はあとがきに「本書は概説書であり、大学生などの初学者を読者に想定する入門書として執筆した」とあるが、まさにこの時代を知ろうとすると次々に疑問が湧いてく -
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ネタバレ片山慶隆『小村寿太郎』。
日露戦争時の外務大臣でもあった小村寿太郎の伝記的な本です。
名前だけは知ってるし、まあ業績もある程度は知ってるけど実態は知らないという感じの人だったので、新書で出てくれた事はとても嬉しかったです。
内容も読みやすいし…たまに「あれ?」ってなる事もありましたが^^;
特に高宗のところですが…私の勘違いかなあ…
ただ、著者の略歴見ましたが、若いですね…いや、悪い意味ではなく。
ただ、人物史って研究年数重ねただけ愛が増していく感じがするので(笑)、今後が一番楽しみです。
取り敢えず、外交官のくせに引き籠りなところが好きになりました。 -
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[ 内容 ]
日露戦争の時代、新聞界は黄金期を迎えていた。
福澤諭吉創刊の『時事新報』、陸羯南主筆『日本』といった高級紙から伊東巳代治による『東京日日新聞』、徳富蘇峰『国民新聞』や『東京朝日新聞』など時の政府に近いもの、政治家の女性問題のようなゴシップから政府・大企業批判、リベラルな主張までを載せる『萬朝報』『二六新報』。
知識人から下層階級、政府支持から社会主義者まで、多様な読者に向けた無数で雑多な新聞が、大国との戦争へと向かう日本と世界をいかに語り、論争をしたか。
膨大な史料を掘り起こし、新聞が大企業化する以前の、粗野で豊かだった時代を活写する、メディア史研究の試み。
[ 目次 ]
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