大西暢夫のレビュー一覧

  • 津波の夜に 3.11の記憶

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    311。あの日眠れずに数日間テレビ画面に釘づけになっていた自分を思い出した。映像として、その後何度も何度も目から飛び込んできた悲惨な姿を、今回は文字を通して、それを現実に体験した人々の思いや行動を噛み締めながら心に刻み込んだ。体験を語る方々は急死に一生を得ながらも生きていたからこその言葉の一言一言が重くのしかかった。本当に本当に大変な大きな出来事であった。

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    2025年08月26日
  • 炎はつなぐ めぐる「手仕事」の物語

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    ネタバレ

    炎はつなぐ
    めぐる「手仕事」の物語

    著者:大西暢夫
    発行:2025年6月30日
    毎日新聞出版
    初出:毎日新聞東海版「人と知恵がつなぐ」(2020年4月~2021年4月)

    著者は、写真家であり、ドキュメンタリー映画の監督であり、文筆家でもある。過去にも、写真集やドキュメンタリー映画を取材した対象についてノンフィクション作品にまとめた本を何冊か出している。本書はノンフィクション作品の新作。429ページとボリュームはあるが、心豊かに、かつ、静かに、のめり込むでもなく、退屈するでもなく、実に心地よく最後まですんなり読みこなせる不思議な1冊だった。内容は豊富でとても勉強になった。知識的な勉強もあるが、心の勉強になったという感じ。

    *以下、ろうそくを「蝋燭」と表記しているが、PCでは本書に使われている「蠟燭」の「蠟」(虫に鼠のような字)が環境依存文字であり、インターネット上で表記されない可能性があるため、略字を使用。

    和蝋燭職人である、愛知県岡崎市の松井規有(のりあき)さんを取材する。和蝋燭づくりそのものに惹きつけられるわけではあるが、そこにいろいろな人の手が入っていることを著者は知ることになる。

    例えば、原料である蝋(蠟)はなにか?ハゼの木から抽出する。しかも、松井さんの工房には、長崎県島原市、福岡県みやま市、和歌山県海南市の3種類の蠟の塊が置いてある。ハゼの種類も抽出方法も違うものであり、それらを解かして芯に塗って成形したものが和蝋燭になる。そんなことを知る。

    芯はどうするか?和紙を細い筒のようにする。そこに灯心草(とうしんそう)という紐状のものを巻き付けていく。最後に、それがほどけないように綿を取り付ける、その綿は木綿の綿ではなく、蚕が作り出す真綿である。

    ここで、写真家、映画監督である著者の本能が働かないはずがない。ハゼの木はどうどこに生えているのか?いや、誰かが植えて育てているのか?蝋を抽出するのはどうやって?和紙はどこで誰が作っているのか?灯芯草は?真綿は?ぜひ、見てみたい、残したい、記録したい・・・

    そこへ行く、また新たな疑問、いや、つながりができる。例えば、和紙づくりを取材に行けば、そこで使われている簀(す)という道具を編んでいる職人のことが気になり始め、さらにそれが編まれている竹ひごを作っている職人にも会いたい。もちろん、和紙の原料植物であるミツマタ農家にも行くことに。取材に行けば行くほど、そうした好奇心はどんどん広がっていく。切りがない。

    しかし、その途中で最初に戻るというか、つながっていく不思議も体験できる。例えば、最後に紹介している蚕種をしている人。蚕種とは、蚕を増やす人であり、蚕蛾作った繭(まゆ)を切って中から蛹(さなぎ)を取り出す。残った繭は必要ない。すると、その繭は和蝋燭づくりの人が持って行くという。循環に終わりはない。

    同タイトルのドキュメンタリー映画も公開されている。
    大阪上映が待ち遠しい。

    **********
    (読書メモ、取材相手)

    第一章「和蝋燭の蝋~ハゼ編~」

    和蝋燭職人
    松井規有(のりあき)
    松本和蝋燭工房・三代目
    長女・深恵が四代目を継承中
    妻・文子
    和蝋燭の芯づくり
    *和紙、真綿、灯心草を組み合わせて作る
    愛知県岡崎市

    木蝋職人
    本多俊一
    本多木蝋(もくろう)工業所・三代目
    妻・美佐
    長崎県島原市
    *先代から植え続けたハゼの群生地、実を収穫市、蒸し器に入れて絞る。全体の重さの2割が蝋に、8割は蝋カスになる。それを必要とする一人が藍染職人。

    藍染職人
    森山哲治
    森山絣工房・五代目、藍染全行程の伝承者
    妻・万井(関西出身)、絣織り伝承者
    長男・浩一:将来の六代目
    先代・虎雄:藍染めとくくりの技術保持者
    その妻・冨子:くくりと絣織りの技術保持者
    福岡県広川町
    *藍の元となる蒅(すくも)にアルカリ水を入れて発酵させるときにPH調整をする必要があり木灰を使う。使い終わった泥のような灰(アルカリが抜けた灰)は陶芸家へと渡り、使われていく。小鹿田焼。

    小鹿田焼(おんだやき)
    小袋定雄
    小鹿田焼陶芸館窯元・八代目
    長男・道明、九代目
    定雄の母・ハツエ
    大分県日田市皿山地区
    *登り窯は造り替えて15回目の火入れが終わったが、窯は少しずつ変わり、一番いい状態になるのは寿命が近い終盤。内部に薪の灰やススが付着して、ガラス状に光ってくる。それは窯の崩壊が始まることを意味している。本当にいい状態なのは、わずかな期間。そうなるのは十代目の頃か、とのこと。
    *登り窯の中は1250度から1280度ぐらいに。そこから50時間焼く。それは20回目の火入れの時だった。火を入れるのは年に4回。

    藍甕
    *藍染に使う甕は土に埋め込まれているので分からないが、小さな子供だと溺れてしまいそうな深さがある。
    森陶器:大谷焼窯元
    (職人)
    森行雄
    弟・明治
    行雄の息子・崇史
    斎藤勝彦
    (店担当)
    行雄の母・佐代子
    行雄の妻・敦子(道場)
    徳島県鳴門市

    藍師
    新居修
    新居製藍所・六代目
    娘・加容子
    その夫・俊二:七代目
    その息子・翔太
    徳島県徳島市
    *藍の種を採り、苗を育てて収穫し、乾燥した葉を発酵させ、藍染職人へ届ける。
    *蒅(すくも)を作る前の乾燥藍は莚(むしろ)に包んで保存、ビニールシートではでできない。藁に含まれた枯草菌が藍の発酵に適している

    米農家
    *むしろ業者の仕入先は米農家。今もむしろを編む農家
    古川昇(専業農家)
    妻・絹子
    長男・友計
    佐賀県東与賀町


    第二章「和蝋燭の芯~和紙編~」

    和紙職人
    *和蝋燭の芯づくりに使う和紙ではなく、特殊な和紙「箔合紙(はくあいし)」に興味を持って取材に
    上田繁男
    横野和紙工房・六代目(形式的には現役引退、作業には欠かせない存在)
    妻・淳子
    息子・康正・七代目
    妻・裕子
    岡山県津山市
    *箔合紙とは緊迫の間に1枚1枚挟み込まれる非常に薄い和紙、ここでしか漉かれていない。
    *繊維のあるものはすべて紙になる(フキでもワラビでも)が強度不足。コウゾ、ガンピ、ミツマタが適する。
    *ミツマタはコウゾより繊維が短くて細いので表面が滑らかで印刷物などに向き、お札に使われている
    *コウゾは紙にすると強く、屏風の蝶番にも使用

    ミツマタ農家
    右手(うて)忍
    妻・幸江
    妹・眞木延子(津山に嫁いでいる)
    岡山県美作市右手地区
    *ここで加工されたミツマタはすべて横野和紙工房へ納品

    簀編み職人
    小畑文子
    娘・直美
    鳥取県鳥取市鹿野町
    *部屋の隅に布団、眠くなったらすぐ寝る、ウトウトしてミスするとやり直しになるから

    竹ひご職人
    *駿河竹千筋(すじ)細工
    大村俊一
    大竹工房代表
    秋山三千代(竹ひご作り)
    大古田雅斗(実演)
    久恒和彦
    静岡県静岡市

    金箔職人
    中村孝一郎:
    中村製箔所・二代目・会長
    中村賢良・三代目
    妻・博美
    息子・賢太郎、将来の四代目
    石川県金沢市
    *「箔打紙」も使用、兵庫県西宮市名塩地区だけで漉かれている。金箔を叩いて伸ばしていく際に使用。「金箔屋は和紙の準備についやす時間がほとんど」と孝一郎。
    *金は4グラムで畳一畳まで伸ばす
    *箔打紙を藁灰と柿渋につけ込み丈夫にする

    柿農家
    野原森夫・四代目
    (大西暢夫と中学時代の同級生)
    岐阜県池田町

    塗師屋(ぬっしや、ぬしや)
    京田博:
    京田仏壇店・五代目、木地師
    長男・充弘、六代目、塗師屋
    富山県高岡市
    *金箔を貼り付けるのは漆、箔をのばしていく際には真綿を使用

    漆刷毛師
    泉清吉:九世
    息子・清吉:十世
    *七世までは戸籍上も「清吉」だった(七世まで神田が地元だった)
    埼玉県さいたま市
    *漆刷毛で本当にいいものは男性の赤毛。海風に晒されて脂っ気が抜けきったもの。男性の漁師の毛など。女性なら海女も質がいい。

    漆掻き職人
    泉山義夫
    漆生産組合・組合長
    岩手県二戸市浄法寺町

    漆精製職人
    堤卓也:堤淺吉漆店・四代目経営者
    堤明哉:工場長
    京都市下京区

    樽職人
    上平義弘
    上平製樽所
    岩手県一戸町

    漆カンナ職人
    中畑文利
    妻・和子
    *町の鍛冶屋さんでもある
    青森県田子町

    砥石職人
    土橋要造
    砥石の堀師
    京都府亀岡市
    *荒砥(あらと)、中砥、合砥(あわせど)(仕上げ)

    浄法寺塗と津軽塗(漆器)
    岩舘隆
    浄法寺塗を復活させた伝統工芸士
    岩谷武治
    津軽塗の伝統工芸士
    青森県弘前市
    *研磨には砥石を使い、最終仕上げは研磨炭(駿河炭)を使う

    製炭師
    城戸口武夫
    妻・和代
    福井県おおい町名田庄
    *研磨炭には、駿河炭、朴炭、蠟色(ろいろ)炭、椿炭があり、漆関係は駿河炭を重用


    第三章「和蝋燭の芯~灯芯草編」

    灯芯引き
    ・安堵町歴史民俗資料館:橋本紀美
    ・灯芯保存会:馬場昇会長
    ・灯芯引き体験講師:谷野誓子(せいこ)、近藤倖子
    奈良県安堵町
    *灯心草は時代劇に出てくる油で灯りを灯す時に燃えている芯。今も奈良の墨づくりで使われている

    灯芯草農家
    井口(いのくち)明光
    い草農家、元灯心草農家
    福岡県越後市
    *灯心草はい草の原種、品種改良で畳表になった

    墨職人
    袋亜紀:古梅園広報
    本橋大司:墨職人、油煙墨づくり
    奈良県奈良市

    松煙職人
    堀池雅夫
    「紀州松煙」
    和歌山県田辺市
    *松煙墨(しょうえんぼく)はアカマツの脂から取る煤

    墨型彫刻師
    中村雅峯(がほう):七代目当主
    佐藤奈都子:中村の弟子
    奈良県奈良市


    第四章「和蝋燭の芯~真綿編」

    真綿職人
    北川茂次郎
    妻・みゑ子
    駒井淳子
    三女・しげ美
    北川忠一
    土川美恵子
    滋賀県米原市和多田

    養蚕農家
    瀧本亀六(6男、80歳)
    孫・慎吾
    その妹・真優
    2人の母・晴美
    瀧本良吉(次男・93歳)
    妻・京子(84歳)
    長男・良一
    娘・幸子
    愛媛県大洲市

    愛媛蚕種
    愛媛蚕種株式会社
    兵藤眞通:五代目経営者
    妻・恵子
    娘・美紀
    山口千代子
    吉平恵子
    愛媛県八幡浜市

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    2025年08月20日