田栗美奈子のレビュー一覧
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ネタバレ『密やかな炎』がとても好きなタイプの物語だったので既刊のこちらもお取り寄せ。
「リディアは死んだ。だが、彼らはまだそれを知らない。」のショッキングな書き出しで始まる。
『密やかな炎』と同じく、その結末を迎えるに至った家族の顛末を辿る倒叙形式の物語。
これがこの著者の型なのかな。
倒叙といっても単なる過去の一時期に視点移動するのではなく、そもそもの発端である大過去(父ジェームスと母マリリンの馴れ初め)、10年前に訪れた家族の危機(マリリンの失踪)を語る中過去、直近での家族の歪みを描く小過去、それぞれの時点を唐突とも言えるほどの切り替わりで行きつ戻りつする。
さらには時折りリディアの死以降の未 -
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読み終わってから、最近の本だったという事に驚いた。翻訳者の後書きを踏まえると、まだアジア人差別のようなものが残っているのだなと感じた。まあでも、この本の主題はそうでは無いので、一旦置いておこう。
この本を読んでいて、コンプレックスの克服とは、なかなかうまくいかないものだなと、強く感じた。コンプレックスをバネに成功した人の話は、何度か聞いたことがあるのに。
親はやっぱり、自分のようになってほしく無いとか、こういうふうに育って欲しいという願望が捨てきれないのだろうな。表面的には成り立っている様に見える家族ではあるが、それは子供の協力があってこそ。むしろ、子供の共感力がなければ、早くに家庭崩壊 -
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ネタバレジェームズとマリリンとでは、「違う」に対する考え方が違った...。非常に上手な作りだと思った。
違うことと和解できていないふたりが、娘には理想を生きてほしいと自分がして欲しかったことや彼女の「役に立つ」であろうことを言ったりやったりする。でもそれが本人の性質や希望とは「違う」場合、それは重荷になる。
移民二世や、移民でなくとも、親の期待を子供に背負わせることはよくあるが、それが重くなりすぎるとどんなに苦しいことになるのか、結果として家族も苦しめることがあるという可能性を見た気がした。
型に当てはめたら幸せになるわけではない。子育てって、個の特徴をしっかりと捉え、尊重してあげることが大切な -
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ネタバレ家族に秘密にしていることはありますか? そりゃ、ありますよね、たいていの人は。でも、家族だからこそ、想いをきちんと伝えなければならないことってあると思うんです。この物語では、まず両親がきちんと本音をぶつけ合っていない。妻のマリリンは私と同じ女性なので、目指す生き方と、結婚妊娠出産育児との折り合いをつけるのは大変だったろうと思います。時代も1960年代ごろですし。だけど、何も打ち明けずに行動するのは、家族にとっては(特に子どもにとっては)捨てられたも同じことで、大きな傷を抱えてしまう。なぜ、きちんと話せなかったのか? 腹立たしくて、心を寄せることが出来なくなってしまいました。
子どもは親とは別人 -
Posted by ブクログ
ネタバレアジア系の大学教授の夫・ジェームズは
小さい頃からアジア系や日系が受ける差別を経験して育ってきた。
誰とも関りをもたず結婚するまで寂しい人生を送っていた。
そのせいもあり、娘に友達を作れ周囲に溶け込めと
しきりに言ってきかすようになる。
医師を志すのを諦めた子育て育児に精を出す妻のマリリン。
夫と同じ大学で出会い成績も優秀で医師を目指すために
頑張っていたがその矢先に妊娠が分かる。
そこからは医師を目指すのを諦め家庭に専念するようになる。
そして、その諦めは次第に娘に向き、娘に必要以上の
勉学や知識を与えようとする。
長女のリディアは父と母からの「愛」をたくさん受け、
それをしっかり受け止 -
Posted by ブクログ
本を読まない人にこの内容を話すとしたら「異民族間結婚の難問題 アッパーインテリ層の嘆き 女性特有のガラスの天井 銀の匙を咥えて生まれた悲哀」そして女性であるがゆえに苦しむ自分の歩きたい路、目指す頂上、そして結婚、家庭、子供・・だろうか。
最初はマリリンの苦悩 生き辛さ 米社会での東洋人の立ち位置に共感を持ちつつ読み進めるが ひりひり感が増す一方で苦しくなっていった~思った通り、家庭はバラバラ、岸辺のアルバム的空気感が募り リディア・ネイス・そしてハンナ(この子だけ、余りに空気感が薄く、だからこその幸せを見つけられそうな気配が)のそれぞれの立場と相互関係、それは両親との其々の関係にも微妙に絡ま