谺健二のレビュー一覧
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三部作の完結編。現実と創作とが渾然一体になり、現実と創作の境界線が分からなくなるようなミステリー小説。
まずは900ページ近くのボリュームに圧倒され、創作の中で語られる雪御所圭子の驚くべき過去、実際に起きた猟奇連続殺人事件、少しずつ綴られる超越推理小説『赫い月照』とともに進行していく物語の中の猟奇連続殺人事件という構成に頭の中が、数々の殺人鬼に侵食されるようだった。日本人作家で、ここまでシリアル・キラーにこだわり描いた小説にお目に掛かったことは無い。
三部作の完結編であるが、最初の『未明の悪夢』が非常に面白く、気になっていた作家であったが、何しろ寡作ゆえ、殆んど著作を本屋で目にすることが無 -
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前作は震災の只中が描かれていたのに対し、本作は徹底してその後が描かれています。
震災が過ぎ去ってから浮き彫りになる問題は、東日本大震災が既に風化しつつある現状を鑑みる限り、単なる過去として読み飛ばすことは難しい。
かなり重い物語で、気力を削るとられるようでした。
個々の短編に関しては、ロジックよりはトリック。それも大掛かりな、という感じで奇想が売りのようです。なかでも表題作はバカトリック、多重解決が楽しめる良編です。
前編後編からなる「仮設の街の犯罪」は、とんでもない伏線にニヤニヤが止まりませんでした。
本作においてもミステリと震災は見事な融合を果たしているので、震災を描く必要性云々は全くの的 -
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読んでいて、なんともやるせない気持ちになった。もしあの大震災がなかったら・・・、人生が狂うこともなかったかもしれないし。
本書は神戸生れ育ちで、阪神淡路大震災を経験した作家・谺氏の2作目となります。
1作目「未明の悪夢」も大震災の神戸を舞台にしています。
もう10年以上経ったんですよね~。人間の記憶って本当に薄れていくものです。
ましてや実際に体験していないと余計に対岸の火事みたいな感じで尚更です。
3作目の「赫い月照」も、本書のそれからが描かれています。
この大変だった惨事を風化させたくない、という著者の意気込みが感じられます。
さて、本書ですが、これまた切ないです。
事件もそうですが、それ -
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三部作のラストです。神戸の震災、児童連続殺傷事件が軸になっています。特に後者の分析は可能性のある一説として、素人にでもわかりやすく解説されていると思います。
かなり重厚な作品なので読むには少し体力が必要です。
またこの話には作中作があり、個人的にかなり面白かった。単体で読みたいくらいでした。
しかし本作は良くも悪くも問題作です。何故作者はああいう終わり方にしたのでしょうか…
ちなみに、この三部作は時間軸と登場人物たちは繋がっていますが、それぞれの作品でカラーがかなり違います。全部読んだ印象だと、一冊ずつ別の作品として出しても良かったような気もします。 -
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1995年1月17日未明、神戸を未曾有の地震が襲った。
崩壊したマンションから脱出した私立探偵・有希真一は、馴染みの古本屋・多田夫妻の様子を見に行くが、無残にも店は崩壊していた。偶然通りかかった倉田明夫に援助を求めるも、瓦礫の下から救い出せたのは、多田の一粒種の鈴々だけであったが、彼女も既に事切れていた。
余震が続く中、真一は友人の占い師・雪御所圭子の安否を確かめるため、元町へ向かい奇跡的にも圭子を救出する。だが、彼女は精神に異常をきたしていた。
混乱と絶望に投げ出された神戸で、連続猟奇殺人が発生する。刑事の鯉口よりその話を聞いた真一は聞き込みを開始した。
事件は震災前後に起こるが、過去