谺健二のレビュー一覧

  • 未明の悪夢
    「これが先進国日本の本当の姿なのだと有希は思った。いくらアジアのリーダーを気取っても、いったん水が止まれば、都市生活に慣れてしまった人々は、自分たちの汚物すら自らの手では処理できない。どうしようもない吐き気を覚えて、有希はトイレの外へ出た。戦後五十年間、日本人はただあの汚物の山を積み上げるために、人...続きを読む
  • 恋霊館(こりょうかん)事件
    前作は震災の只中が描かれていたのに対し、本作は徹底してその後が描かれています。
    震災が過ぎ去ってから浮き彫りになる問題は、東日本大震災が既に風化しつつある現状を鑑みる限り、単なる過去として読み飛ばすことは難しい。
    かなり重い物語で、気力を削るとられるようでした。
    個々の短編に関しては、ロジックよりは...続きを読む
  • 未明の悪夢
    第8回鮎川哲也賞受賞作とのことですが、この年は氷川透、城平京、柄刀一と凄まじい面子が揃っていたようです。そんな中、見事受賞した本作は当初から「メッセージ性が強すぎる」という批判、言ってしまえば社会派を気取るな、という意見が少なからずあったそうです。
    しかし、本作に至っては事件と震災は乖離など起こして...続きを読む
  • 未明の悪夢
    神戸の震災がテーマ、ということで、ちょっと重いかな。。。と少し寝かせてしまった本。
    でも、読み始めたら、一気でした。
    時間のある日でよかった。
    震災を通じて関係ができる人々を、1945年から紹介し始める。
    人って、さっきまで全く関係なくても、ちょっとしたきっかけで知人になったりするんだなぁ。。。と、...続きを読む
  • 恋霊館(こりょうかん)事件
    読んでいて、なんともやるせない気持ちになった。もしあの大震災がなかったら・・・、人生が狂うこともなかったかもしれないし。
    本書は神戸生れ育ちで、阪神淡路大震災を経験した作家・谺氏の2作目となります。
    1作目「未明の悪夢」も大震災の神戸を舞台にしています。
    もう10年以上経ったんですよね~。人間の記憶...続きを読む
  • 未明の悪夢
    神戸の大地震直後の連続殺人犯を探偵が捜査する。これが話の骨子だけど、それの記述はなんだかなあ、といった感じ。神戸の公園のテントで生活する主人公と女友達が大阪に来て、自分たちとの境遇の違いに驚くシーンがあったが、このシーンは「なるほど」と感じた。大地震が起きて、家やインフラが大きく毀損した時、そこで生...続きを読む
  • 赫い月照
    三部作のラストです。神戸の震災、児童連続殺傷事件が軸になっています。特に後者の分析は可能性のある一説として、素人にでもわかりやすく解説されていると思います。
    かなり重厚な作品なので読むには少し体力が必要です。
    またこの話には作中作があり、個人的にかなり面白かった。単体で読みたいくらいでした。
    しかし...続きを読む
  • 未明の悪夢
    三部作の一冊目です。神戸の震災の最中に殺人事件が起こる話です。作者の体験も入っている為か、地震の描写はリアルです。地震の怖さは勿論、精神的なショックやその後に待ち受ける現実が嫌なほど丁寧に描かれています。
  • 未明の悪夢
    1995年1月17日未明、神戸を未曾有の地震が襲った。
    崩壊したマンションから脱出した私立探偵・有希真一は、馴染みの古本屋・多田夫妻の様子を見に行くが、無残にも店は崩壊していた。偶然通りかかった倉田明夫に援助を求めるも、瓦礫の下から救い出せたのは、多田の一粒種の鈴々だけであったが、彼女も既に事切れて...続きを読む