千住博のレビュー一覧
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紙に膠で天然の岩石の粉を貼り付ける。日本画の技法は、人々の知恵と工夫が長い年月をかけて育んできた匠のワザである。著者は日本画壇を牽引する巨匠、千住博。天才とばかり思っていたが、驚きの発言をしている。「実は毎日が挫折、毎日がスランプ。毎日スランプと挫折を味わいながら、そこから立ち直るのが氏の画業。変なことになってしまった。困って初めて自分自身に火が付く。」「過去の経験は一切生きない。毎日がはじめて。」と語る。「芸術の女神は厳しく、すぐにうまくいかない場面に直面させられる。」氏の言辞はまことに玄妙深淵だ。
芸術作品は頭から離れないイメージ、トラウマのような世界を引きずる。空想や妄想も画家にとっては -
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ニューヨークは美術館の宝庫だ。
本書を読む限り、その拝見には美術作品は時代の最先端の象徴だから、であるらしい。
日本人的感覚からすると、納得はできてもいまいちピンとこない。
しかし、本書を読むと、日本人とニューヨーカーでは美術作品とのふれあい方に違いが在るようだ。
日本人が美術館に行く目的は、教養を高めるだとか、少なくとも文化的で非常に高尚な目的である。それに対して、ニューヨーカーは美術作品を楽しむことが生活の一部なのである。
本書の前半は、日本を代表する画家である千住博氏によるプロフェッショナルの目線での美術作品の楽しみ方の紹介となっている。
ニューヨークの2大美術館であるメトロポリタン美 -
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ニューヨークの旅行に行った時、MOMAやメトロポリタン美術館などの本場の芸術に感動して、美術に関する知識が欲しくて思わず手に取った一冊。ピカソの絵があんなにたくさんあったのは、生涯に3万点もの作品を残したからなんだね。すごい情熱。良い美術館は照明や壁の色が違う。ゴッホは生活費を削って最高の絵の具を使ったから、今でもその色彩は色褪せていない。中世の作品に細部までこだわったものが多いのは、絵画は絶対普遍の「神との対話」だったから。モネにとっては、絵画は五感で感じるもので、印象派というものは、記者が「実体も存在感も何も書いていないじゃないか。あんなものはただの印象だ。」と皮肉をこめて投げつけた言葉だ