ニューヨークは美術館の宝庫だ。
本書を読む限り、その拝見には美術作品は時代の最先端の象徴だから、であるらしい。
日本人的感覚からすると、納得はできてもいまいちピンとこない。
しかし、本書を読むと、日本人とニューヨーカーでは美術作品とのふれあい方に違いが在るようだ。
日本人が美術館に行く目的は、教養を
...続きを読む高めるだとか、少なくとも文化的で非常に高尚な目的である。それに対して、ニューヨーカーは美術作品を楽しむことが生活の一部なのである。
本書の前半は、日本を代表する画家である千住博氏によるプロフェッショナルの目線での美術作品の楽しみ方の紹介となっている。
ニューヨークの2大美術館であるメトロポリタン美術館とMoMAの収蔵作品を通じて、作品を鑑賞するコツを伝授してくれる。
千住氏によれば、そのコツとは
「絵は単に眺める物ではない」
「絵は作者自身を物語るもの」
「絵を見る時は、画面を『読む』ことだ」
とのことだ。
美術作品の完成度を観るのではなく、それを作るにいたった作者自身と向き合うことがコツなのだそうだ。
ちょうど、ユニクロの柳井社長が、読書について「本を読むとは書いた人と対話すること」と考えているのと同じことだろう。
だから、作品を一度観るだけでなく、美術館に何度も足を運び、絵を見続けることになるのだそうだ。
そして本書の後半は、一般人としての目線で野地氏が千住氏から伝授された「コツ」を実践する。
最先端の現代美術が集まるニューヨークのギャラリーで、千住氏は絵と対話することができたのだろうか。
観光ではなく絵を見るためにニューヨークに行きたい、旅心をくすぐる1冊である。