田辺保のレビュー一覧

  • 重力と恩寵

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    2023/3/5(3回目)
    「苦しみがなくなるようにとか、苦しみが少なくなるようにとか求めないこと。そうではなく、苦しみ によって損なわれないようにと求めること」辛くて苦しんでいたときに恩師から言われた言葉
    「どうか、わたしは消えて行けますように。今わたしに見られているものが、もはやわたしに見られ るものではなくなることによって、完全に美しくなれますように」この世には究極的な言葉が存在するだろうが、これはその一つ 本当に眩しくて透きとおっていて信じられないほど美しくて悲しい
    「知性は(中略)鋭敏で、尖鋭で、正確で、厳密で、酷薄でなくてはならない」恩師によく似合う言葉
    「泣いてはならない、慰めを

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    2024年11月29日
  • 工場日記

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    とてつもない本だった。シモーヌ・ヴェイユという人物はとても偉大な女性だ。
    この本の最初200数ページほどは、素朴な日記、あるいは日誌のような形式で書かれている。淡々と書かれた中に、職場の人間関係や、思ったことが散りばめられている。そして、最後の数十ページは、彼女が宛てた手紙が載せられている。わたしはこの手紙の部分にもっとも息を呑んだ。文章から受ける印象は、日誌の文体と手紙の文体ではかなり違うように思う。やさしさの度合いというか、温もりというか。日誌における言葉と、手紙における言葉はやはり何かが違う。何が原因かは、一考の価値あり。

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    2021年11月10日
  • 重力と恩寵

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    何か一つの宗教を信じることは他の宗教を否定することになると思っているので、彼女の言う「神」を、真理やら世界やらに言い換えてから読んだ。宗教には明るくないのですが。

    最近色々と考え実行してみたりしていることを、彼女も考え実行していたことをちょっと嬉しく思い、彼女がもっと遠いところにいることを目標にこれからも先へ進みたい。

    生きるために大切なことを教えてくれる本。

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    2014年02月07日
  • 重力と恩寵

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    主人が奴隷を作り奴隷が主人を作るという意味において、ヴェイユはきっと正しさの奴隷だったのだろうと思う。ここまで透徹している人間が生き易いわけはないけれど、この本は私の生き易さの指標になると同時に生きにくさの補強にもなったと思う。

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    2014年01月24日
  • 重力と恩寵

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    心を抉られるような表現からドキッとするところもあるけれど、心洗われる哲学。良くも悪くもその程度しか理解できなかった。色々な関連書を読んでもう一度戻ってきたい。

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    2013年10月28日
  • 重力と恩寵

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    人に対して「透明感」という言葉を使うのはまず好意的な感情からだと思う。僕もシモーヌ・ヴェイユという人の深く澄まされた知性に、憧れや好意を感じる。
    しかしそれにしても、いくらなんでもこの人の透明感は、度が過ぎている。水清ければ魚棲まず、ではないが、突き詰められた「聖」性は汚く図太く生きる生命力の対極のように思え、悲壮感さえ覚える。

    関連して、ヴェイユの教え子の書いた本を読んだ。師への親愛の情に溢れた本だった。この人が周囲の人に理解され、愛されて生きたのだと思うと、何か救われたような気持ちになる。そんなことも含め、ヴェイユという人は僕に希望や勇気をくれる存在だ。

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    2012年05月01日
  • 重力と恩寵

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    一周(よりちょっと手前くらい)すると辿り着く本。

    次のステップに辿り着く(一周する)為には、是非ガウタマ・シッダールタ(ブッダ)とのセットでどうぞ。

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    2011年09月24日
  • 重力と恩寵

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    ギュスタヴ・ティボンがヴェイユのカイエを編集して出したもの。ヴェイユの(一応)処女作品。訳は田辺保。
    鏤められた真理を鋭くついた言葉達。箴言集のようなもの。

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    2009年10月04日
  • 重力と恩寵

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    ネタバレ

    なぜ勧められたか覚えてないのだけど、仲の良い友人に「重力と恩寵読んだことある?たぶんすごく共鳴すると思う」的なことを言われたのが今年の初めくらいにあり、たまたま某図書室でも発見して、これは今読むべしということだなと思い、手に取りました。

    なんの脚注もないので解釈むっずとなりながらなではあるものの、読み終わりました。
    また別の人に、少し前に読んでいた悪徳の栄えとは真逆すぎて面白いですと伝えたら(快楽に対する態度とか)、「両極端すぎるように見えて紙一重なところがありそうじゃない」と言われて、確かに己の中にジュリエットもヴェイユも存在するので、それはあながちそういう側面もあるかもと思っている。基本

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    2024年05月09日
  • 重力と恩寵

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    断章集だったのもあって読み終わるのに4ヶ月くらいかかった

    自分も、自分の思想も、消えて見えなくなって欲しいと願ったところに彼女らしさを感じる
    何かと比較した時の善は社会的な利益しか得ないってところは共感だけど、逆にそうじゃない善なんて僕は出来ない

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    2024年03月03日
  • 工場日記

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    労働環境の劣悪さ。隷属状態。当時の工場労働者の悲哀がリアルに伝わってくる。苛烈な抑圧による思考停止。それは現代社会にも置き換えられるものだ。

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    2023年03月18日
  • 工場日記

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    ヴェイユが過酷な工場労働をし、最終的には1日当たりのネジの数ばかり記録している痛ましい記録。最後の方の手紙でぎりぎり体裁を保っている感じだ。

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    2022年10月10日
  • 工場日記

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    考えることが削られていく感覚の描写が、読んでいて辛い。
    こういう生々しい労働の現実を知らずに、あれこれ哲学したり、倫理的に考えたりすることは、虚しいことなのではないかと思う。

    医師や看護師が働く現代の病院にも当てはまるよね?と思った。

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    2022年01月02日
  • 重力と恩寵

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    凄まじい。彼女がノートに書き綴った箴言の数々を死後編纂して出版された本書は、どれも信仰への確信と悲痛なまでに苦しみを受け入れようとする決意に満ちている。その余りにも高尚なストイックさに最初は距離を感じたが、著者の人生を知って納得がいった。ユダヤ人の家系に生まれ哲学科の教師になるも、病弱で偏頭痛に悩まされる自己を顧みず農場や工場で働き出す。貧民の救済のために革命運動に身を投じ、世界大戦への抗議として行ったハンストで餓死するという生涯。逃れられない心身の痛み、そんな痛みと向き合う時に本書は最高の鎮静剤となる。

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    2013年03月08日
  • 重力と恩寵

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    ネタバレ

    重力が、愛と感じるか、それとも単なる重みでしかないと感じるかはその人によるだろう。ヴェイユは重力を逃れられない運命であると認識しているようだ。そして恩寵はその重力から開放されるものだという。
    重力を違う言葉で読み替えると関係ということになる。私達がいま生きて、重力を感じているのも、星同士の関係にあるだろう。ヴェイユは関係の働きかけが一方に傾くと違う方はおろそかになるという。
    そして、関係というのは主に思考のことなのだ。ヴェイユがのべたいのは思考と、それ以外のものの関係につきる。それ以外のものとは光のことだと。
    難解だがよみすすめてゆきたい。

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    2012年06月15日
  • 重力と恩寵

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    ネタバレ

     ヴェイユが思索の断片をつづった『カイエ』による箴言集。猛烈に毒があり、長く続けて読むのはつらいが、ときどき手に取りたくなる。強く励まされる言葉があるかと思えば、あまりの厳しい指摘に暗澹となることもある。

     「人に哀願するのは、自分だけの価値体系を他人の精神の中に力ずくででもはいりこませようとする絶望的なこころみである」
     「同じひとつの行いでも、動機が高いときよりも、動機が低いときの方が、ずっとやりやすい。低い動機には、高い動機よりも多くのエネルギーが含まれている。問題はここだ。低い動機に属しているエネルギーを、どうやって高い動機に移しかえるか」

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    2012年01月18日
  • 重力と恩寵

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    生きることはひとつの思想である。そして、死もまたひとつの思想である。神によりよく遣えるものは、必ず神の裏切りに逢う。なぜならば、神は人が神の力にすがって生きることを望んでいないから。そう信じて、無神論者こそがよりよく神の教えに遵う者だと言い切った、異端の人。貧困のものが自分の糧をたよって、その財を盗むならばそれは構わないと信じて、家のテーブルの上に財布を投げ置いたという、そんなエピソードを持つ。ヴェイユは生きることが思想であることを知っていた人なのだろう。そして、嘘か真かはさておき、民衆のために命を投げ打つ思想を生きて見せてキリストのならいを忘れずに、自分もまた神の手をまたずに、自らに鞭打ちな

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    2009年10月04日
  • 重力と恩寵

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    -服従は、最高の徳である。必然を愛すること-

    フランスの女性思想家で、1943年34歳のとき、食物を拒否し、死去したシモーヌ・ヴェイユ。論理的で、鋭く、激しいまでに厳しい言葉の数々は魂を揺らします。世事にキュウキュウとして弱弱しくなっている自分に喝!

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    2009年10月07日
  • 工場日記

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    同じ頭痛持ちとして、頻出する頭痛の訴えがとにかく胸に迫り、痛ましかった。私には無理だ…。
    他者という人間を人間扱いする、こんなシンプルなことが実は非常に難しく、私たちは誰一人としてできていないことを日々痛感している。せいぜい、半径1mの手が届く人間のことしか本当に「人間」としては考えられない。コミュニティを形成して生きる人間のそうした致命的な欠陥に、机上の哲学ではなく全身全霊の愛をもってぶつかり、当事者意識という言葉を超えた実践を行った人だ。

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    2023年04月17日
  • 重力と恩寵

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    エックハルトに続いて再読。文庫派なので、カイエは買わない。認識のレベルでなく、現実の苛烈な生活の中で魂の真空化=自己の蒸発を実践して行く様は壮観だけど、コワイよこの姉さん。高野悦子の「二十歳の原点」思い出してしまった僕はダメ男ですか。そうですか。ふと想像したんだけど、この徹底的に下降してゆくことで一発逆転して天上へ離脱していこうとする女性の、日々の生活のメモ群が、現在の日本のweb日記文化の中で展開していたらどうなったろう?故・南條あやのメールサイト(町田あかね時代の方ね)を超えるサイトになったんではなかろうか。おっと、妄想が過ぎたね。

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    2009年10月04日