岩下明裕のレビュー一覧
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【あいだの視線】国や文化,そして民族の境界に焦点を当てるボーダー・スタディーズ(境界研究)を紹介した作品。数々の事例を紐解きながら,境界から眺める視点の重要性を訴えています。著者は,北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターで教授を務める岩下明裕。
あまり聞いたことがない学問だったので,まず「こういう見方があるんだな」という点が知れただけでも大きな収穫。題名は「国境学」となっていますが,国と国との関係にとどまらない複眼的な関係をもボーダースタディーズが視野に入れていることがよくわかりました。
〜ボーダースタディーズ,つまり境界研究は,一つの空間がもつさまざまな彩りをその境界が重なりあう場所 -
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ロシア外交を専門とする著者が、北方領土問題を中ロ(ソ)の国境問題と比較して議論を展開する。19世紀から続く中ロ国境問題は、国際法ではなく係争地を分け合う政治決断によって解決された。著者は、中ロの方法を参考に、日ロ双方がウィン-ウィンで解決する方法を模索する。
著者の提起は興味深いが、本書の一番の価値は北方領土問題の事実の分析だと思う。教科書にも載る領土問題だが、「北方領土問題」がいつから問題化したのか等の経緯や双方の主張・論点が書れている本は案外少ない。本書は、日ロ双方のバランスをとりながら、北方領土問題について客観的かつコンパクトに記述している点が好感を持てた。 -
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この著書は、「北方領土問題」というテーマを中露と日露の国境問題比較論を元に考察し政治的な妥協や日露間への応用の可能性を探っている。序章では現在なお続いている北方領土問題が、日本とソ連の戦後処理をめぐる一連のプロセスの中から発生した問題であり、1956年の日ソ共同宣言によるロシア側の2島返還検討と日本側の4島一括返還方針から始まる主張の食い違いからどう踏み出すのかが課題であるという。第1部では中露、中央アジアの国境問題を例に取り、法律的な議論を排除したフィフティ・フィフティ方式という相互の利益に配慮した解決方法が縷々解説されており、実に興味深い。第2部では中露の教訓を日露に適用して考察する。ここ
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ネタバレ[ 内容 ]
「北方領土問題」は、日本とソ連の戦後処理をめぐる交渉のプロセスのなかで生まれ、1956年の日ソ交渉においても、これを解決することができず、平和条約の締結に至らなかった。
以来五〇年、事態が進展しないなか、中国とロシアの間で、同じく第二次世界大戦に由来する国境問題が解決した。
本書は、この係争地を互いに「分け合う」という政治的妥協に至る道筋を検討し、日ロ間への具体的な応用を探るものである。
[ 目次 ]
1 中ソ国境問題はいかに可決されたか(暗闇のなかの模索 相互に受け入れ可能な妥協 中国と中央アジア―中ロ方式の試金石 十三年目の最終決着)
2 日ロ国境問題をいかに動かすか(中ロ -
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一読してわかったことは、とにかく領土問題に客観的見解などない、ということだった。
だいたい、どこがあり得る「線」なのかということも、厳密にみると何とも言えないらしい。(千島列島の先かも知れない)
日本政府は現状を不法占拠と見なしているが、ロシアにはロシアの言い分があり、お互いの主張は近くなったり遠くなったりしつつ平行線をたどったままなのだ。
膠着状態が打開されない一因は北方領土が両国間にとって真に切実な問題ではないからだ、という指摘もあるが、宙ぶらりんな状況を早く解決しなければならないのは当然だろう。
著者は、もとロシアと中国の国境画定プロセスの研究者である。(現・北大スラブ研究センタ