元木一朗のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
遺伝子組換え食品に漠然とした不安をもってる人におすすめ。何だか気持ち悪いという「イメージ」も否定せず,「科学」も紹介。結論としては,メリットは大で,安全性は十分確保されているとする。
何だか得体のしれない物を「怖い」と感じる感情は,人間にとってまったく自然なもの。そういう恐怖は,進化の過程で有利に働いてきた本能だ。ただ,その恐怖が高じて,事実を誤認したまま遺伝子組換え食品を無闇に忌避する態度はちょっと考えもの。
科学的事実を重視するなら,現在栽培され,消費されている遺伝子組換え食品は,メリットが大きく,安全性は高く,否定する理由は見当たらない。反対派は,過去の遺伝子組換え食品スキャンダルをあげつらって危険を訴えるが,当時告発された嫌疑は,現在では科学的に否定されてるものばかり。
なので反対派が「科学」に立脚してGMOに反対するのは得策でない。というか,バカ丸出しっぽい。するなら「イメージ」が受け入れられないという主張をすべし。塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混合して中和すると,食塩水ができる。「科学」からはこれは飲んでもよいはずだが「イメージ」からは何とも気持ち悪くて飲めたものでない。
日本のGMOの問題は,表示の問題が大きい。日本では忌避感情から(青いバラを除き)GMOは商業栽培されていないにもかかわらず,すでに多くのGMOが消費者の口に入っている。加工品等,表示義務がないものが多く,納豆や豆腐,味噌など,一目でダイズが使われていると分かるような食品にしか,非組換え原料が使われていないのが現状。GMO歓迎の人は高い豆腐を買わされて損だし,GMO忌避の人も知らないうちにGMOを食べていて損をしている。「科学」からGMOを許容する人にも,「イメージ」から回避する人にも,選択肢が与えられていない。
一つ著者のスタンスで気になったのは,GMOは放射能と違うとして,放射能に汚染された食品は微量でも摂るべきでないとしてるとこ。GMOと違って放射性物質による汚染にはメリットがないからだと思うけど,もうちょっと生産者側の視点も欲しい。
とはいえ,放射能汚染は許容できないとしている著者が,GMOについては安全と断言しているのだから,GMOについてはかなり安心してよいのだろう。でもまあ,豆腐も納豆も十分安いから,別に非組換えダイズを使ってくれてても個人的には構わないけど。 -
Posted by ブクログ
副題は、インチキ数字に騙されるな。(2011年刊)
・本書の成り立ち
・登場人物紹介
・怪しいグラフ
・【漫画】ベクレルってなあに?
・原発対こうにゃくゼリーの決闘
・シーベルトを追え
・必殺の放射能1億倍
・ネット情報0指令
・疫学調査のひみつ
・科学コミュニケーションは誰のために
・焼肉屋の悪夢
・プロジェクト・風車
・【巻末付録】東浩樹×元木一朗 対談
・コラム
・総統閣下より愛をこめて
本書は、ユーチューブなど動画投稿サイトで人気を集めたMAD動画「総統閣下シリーズ」をベースとし、書き下ろしたものである。
本来、客観的であるはずの数字であるが、ある意図のもとに加工されることにより、歪められインチキ数字となる。本書では、いくつかの例をあげながら、メディアリテラシーの重要さを判りやすく、面白く解説している。 -
Posted by ブクログ
大震災直後の原発事故でシーベルトやらベクレルやら放射能の単位について色々と調べるうちに行き着いたのが、YouTubeでヒトラー映画(「ヒトラー~最期の12日間~」と言うらしい)をパロディにして「総統閣下」が放射能について語るお笑い解説だった。残念乍らその画像は著作権に抵触するとの事で削除されてしまったようだが、今ここに書籍版としてパワーアップして再登場だ。
科学に関しては判りやすいが何よりだが、それ以上に「面白い」が重要だと気付いた、と語る著者が生み出したのがYouTubeでの「総統閣下」シリーズだが、本書ではそのキャラを利用した会話形式で改めて放射能を始めとして世に溢れる様々な数字・データについての見方を提示している。
放射線量についてはこんな具合だ。
「いいか、ここに白い皿、紫の皿、赤い皿、金の皿の寿司がある。それぞれ100円、200円、300円、500円だ。では白5、紫3、赤1、金1なら幾らになる?」
「合計10皿で1900円です!」
「皿の枚数を数えるのがベクレルで、シーベルトは財布に与えるダメージだ。すなわち同じような頻度で放射線を発生しても核種によって人体に与えるダメージは違うものなのだ。」
なんて判りやすく説得力のある説明なんだろう。YouTubeで当時見ていたよりはガンダムとかで判りにくかったけど、今回のは格段に表現がこなれているじゃないか。てな具合でサクサク読めること請け合います。 -
Posted by ブクログ
すべからく情報というものは、一方向からの入力だけでは判断が偏ると思い読んでみた本。
著者はバイオテクノロジーの専門家であり、ITについても専門として関わっているようだ。本書の批判をすると、論点は「遺伝子組み換え食品は危険ではありませんよ」というものである。しかし、聡明な著者はもちろん一般の消費者が激しい心理的抵抗を持っていることは承知しており、直球の主張を避けたかったと思われる。膨大な傍証をあげ、時に二重否定的な論点を説いてみたり、「しっかりと議論が必要」と中庸な結論を書いてみたり、非常に迂遠な書き方をしているため、結局、論点がぼやけてしまって伝わりにくい。決して、著者の論点を単純に批判するつもりはなく、主張がぼやけた感じがしてじれったい、という点が不満として残った。
専門家の立場として、「遺伝子組み換え作物に危険性がないことははっきりしている」そうだが、それがなぜなのかは説明が専門的になりすぎるからかそれほど詳しく書かれてはいない。学術論文のようなものを読まされても仕方ないと思うが、物足りなさを感じた。
また、例えば、途中はさまれた不耕起栽培に関するコラムなどを読むと、不耕気栽培を自ら実際に経験したわけではなく、反論の予防のために、話として抑えておく、程度の内容。どうも実験室の中から研究者が理論のみを述べているようなステレオタイプな印象を持つ。
細かい点をあげつらうことになるが「生産面で大豆は遺伝子組み換えについて問題がない、なぜなら既にほとんど国内生産されていないから」という点も、生産国が自国の都合で一方的に輸出をストップできるリスクは無視できないリスクであり、経済モデルからの観点を少々、失しているように思える。
本書のような書も必要だとは思う。ので、読んではみたものの、説得されるということはなかった。
-
Posted by ブクログ
総統閣下のおかげでベクレルとシーベルトの関係がやっと理解できました!
総統閣下万歳!
…という訳で。
難しい問題を難しく説明するのは誰でも出来る。
難しく問題を易しく説明するのは才能が必要。
普通はこの二つにひとつです。
しかし、本書のように難しい問題を面白おかしく説明して理解させるのはほとんどのひとがやろうとしない。
笑わせると解らせるは性質が異なる作業なのだから、相当のセンスが必要と思われます。敬遠されるのも無理ないですね。
総統閣下じゃなくて元木氏は類い稀なる才能の持ち主なのは間違いないでしょう。
それから、まさか澤井健先生の新作(?)が読めるとは思ってもいませんでした。