荒井献のレビュー一覧

  • ユダとは誰か 原始キリスト教と『ユダの福音書』の中のユダ

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    イスカリオテのユダに関する語源から芸術まで、ユダづくしの一冊。キリスト教におけるユダの位置付けの原理的な難しさを感じる。ユダはイエスを引渡した者であるという意味では確かに悪人であるが、そのユダの罪悪なかりせば死をもってみせたイエスの十字架の贖いも、その後の復活もないわけで…。
    時代が下るにつれて、ユダの評価が厳しくなるという事実はおもしろい。当初はユダの行為を含めて、イエスの辿った奇跡の一部とみていた可能性がある。後世の解釈次第でユダのポジションは大きく変わる。
    でも、歴史の中のイエスはやはり正直に思ったのだろう。こいつ「生まれてこなければよかったのに」と。

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    2018年05月18日
  • イエスとその時代

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    新約聖書学者荒井献の代表作のひとつ。聖書批評学的見地から新約聖書を検証し、イエスとイエスが生きた時代を論じている。我が国新約聖書学者の重鎮の書だけあって、文体は高貴で揺るぎがないが、やや著者の主観により過ぎる感も否めない。まあ、これはこれで荒井ファンには面白く読めるのであろうと思ったが、一方では、福音派のクリスチャンなどは本書を読んでもあまり賛意は示さないであろうとも考えた。新約聖書の史料的意味や記述の信憑性はともあれ、イエスの視座が常に社会の底辺にいる弱者の立場にあったという指摘だけで、自分はイエスが神の子であるとの信念をさらに強めた。
    あまり読みたがらないとは思うが、とりわけ福音派のクリス

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    2012年05月29日
  • ユダとは誰か 原始キリスト教と『ユダの福音書』の中のユダ

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    ネタバレ

    救世主イエスを裏切ったとされるイスカリオテのユダ、その原始キリスト教におけるイメージの変遷を解説した書。正典四福音書およびそれに続く諸文書(使徒教父文書・新約聖書外典)、および『ユダの福音書』におけるユダ像を考察、それぞれの資料がユダにいかなる意味を与えたか、それらから逆算される史実上のユダ(「歴史のユダ」)の姿を説く。
    本書は、原始キリスト教の諸文献におけるユダの描かれ方を追い、その変容と実情を解説したものである。キリスト教における「裏切者」「背教者」の代名詞として有名なイスカリオテのユダではあるが、その描かれ方は正典四福音書内においても差異がある。著者は各文書におけるユダの描写を丹念に抽出

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    2022年08月19日
  • イエスとその時代

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     マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四福音書に加え、トマス福音書、ピリポ福音書などの史料を比較対照させながら批判的に読み取り、「各福音書記者の編集作業と、編集の視座に見られる固有な思想」(p.15)を存分に考慮に入れた上で、イエスが宗教(=政治)にどのように関わってきたか、イエス自身の「視座」がどこにあるのかを推定したもの。
     いくつかのポイントが明示されているが、どの点も新鮮で、興味深いものばかりだった。おれ自身が聖書を読んだことないので、元になる知識が不十分であるだけ、難しく感じられるところも少なからずあったが、それでも面白い。まず伝統主義・保守主義の「サドカイ派」と、律法の「合理化」を行い、

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    2015年09月23日
  • イエスとその時代

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    イエスについて、イエスが生きた時代背景から説明してある。予備知識がないとかなり難解な文章である。ある程度知識をつけて、また読みたいと思う。

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    2013年03月26日