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キリスト教の始祖イエスとは何者か。どのような時代・社会に生き、語り、死んだのか。聖書学・歴史学の最新の成果の上に、イエスに関する伝承の最古層を探り、初期キリスト教の担い手の社会的条件を明らかにする。また、奇蹟などを含むイエスの行動を分析し、時の権力に抗した彼の真意、民衆との深いかかわりを解明する。
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Posted by ブクログ
新約聖書学者荒井献の代表作のひとつ。聖書批評学的見地から新約聖書を検証し、イエスとイエスが生きた時代を論じている。我が国新約聖書学者の重鎮の書だけあって、文体は高貴で揺るぎがないが、やや著者の主観により過ぎる感も否めない。まあ、これはこれで荒井ファンには面白く読めるのであろうと思ったが、一方では、福...続きを読む音派のクリスチャンなどは本書を読んでもあまり賛意は示さないであろうとも考えた。新約聖書の史料的意味や記述の信憑性はともあれ、イエスの視座が常に社会の底辺にいる弱者の立場にあったという指摘だけで、自分はイエスが神の子であるとの信念をさらに強めた。 あまり読みたがらないとは思うが、とりわけ福音派のクリスチャンは本書を読むべきと思う。
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四福音書に加え、トマス福音書、ピリポ福音書などの史料を比較対照させながら批判的に読み取り、「各福音書記者の編集作業と、編集の視座に見られる固有な思想」(p.15)を存分に考慮に入れた上で、イエスが宗教(=政治)にどのように関わってきたか、イエス自身の「視座」がどこにあ...続きを読むるのかを推定したもの。 いくつかのポイントが明示されているが、どの点も新鮮で、興味深いものばかりだった。おれ自身が聖書を読んだことないので、元になる知識が不十分であるだけ、難しく感じられるところも少なからずあったが、それでも面白い。まず伝統主義・保守主義の「サドカイ派」と、律法の「合理化」を行い、「天使論や復活信仰を積極的に受けいれた」(p.34)「パリサイ派」について。パリサイ派の律法主義に陥る傾向が「前景で出てくるのは紀元後七〇年以後に、ユダヤ教正統派の位置についた以後のことであって、イエスの時代にこの傾向を読みとることについては慎重でなければならない」(p.35)という部分が新鮮だった。また、イエスがいわゆる「奇跡行為」を振る舞ったという事実がイエスの視座を示すものである、という部分(pp.80-1)。つまり、イエスの力そのものではなく、イエスが民衆の希求に即応するような「功利的」、「御利益宗教的」な振る舞いをしたことが、社会の最下層に所属していた価値理念に応える姿勢を見せていた、という主張が理解できた。ついついどんな奇跡をどうやって起こしたのだろう、と思ってしまうが、そういうことではない、ということが分かる。また、聖書の読解について述べた部分で、「譬話の本文は、私の解釈の対象としてのものから私に自己理解を迫るひとの性格を帯びて迫りくる。―これをより一般的に言えば、聖書の本文は、それが解釈主体の認識のあり方に変革を齎した時にこそ、解釈主体によって了解されたということになる」(pp.136-7)ということは、重要な問題であると思う。これが聖書の魅力の究極的な部分なのではないだろうか。ところで、「良きサマリア人」、「失われた一匹の羊」の話の解釈が、そんなに単純なものではないということが分かった。同じように、「神のものは神に」の話や、処刑前の「あなたがユダヤ人の王であるか」のくだりも、一般的な解釈と異なる部分で、著者のロジックを辿ることは興味深い。最後に、pp.180-1の「祈るイエス」に対する解釈は、「人間イエス」を描くものとして、興味深かった。マルコの想像力への間接的な裏付け、という部分であるが、こういったイエスの苦悩が、最期の「アラム語で叫んだといわれる言葉『エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ』、―訳すれば「わが神、わが神、どうして私をお見捨てになったのですか」(p.189)という絶叫に象徴されるのだとすれば、一人の人間の歴史として、イエスや聖書を捉えることができると思う。 とても古い本で、学校の文化祭の古本市で手に入れたが、有益な本だった。(15/09/23)
イエスについて、イエスが生きた時代背景から説明してある。予備知識がないとかなり難解な文章である。ある程度知識をつけて、また読みたいと思う。
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