久保耕司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書を読みながら、植物の持つ潜在的な力に改めて驚いた。植物は「口がきけず動きもしない、人間たちの世界の調度品」にすぎないと思われていた。
しかし、植物は、動かないが故に長い時間をかけて進化してきた。そして、現在も植物は重要な役割を果たしている。
植物がなければ、地球上に酸素は生まれず、動物や人間が出現しなかった。そして、植物が光合成をして、動物や人間の栄養になってきた。現在のエネルギーのもとである石油、石炭、天然ガスは過去の植物の遺体が作った。それがなければ、産業革命も起こらなかった。
植物は、半分以上動物に食われても、再生する。植物の細胞には全能性がある。そうやって、私は組織培養 -
Posted by ブクログ
動物は問題から逃れるために動くことを選んだ。
植物は問題に対応するために動かないことを選んだ。
植物は「移動できない」ことが理由なのか、その作りは動物に比べると下等だと思われている。
だがこの本の著者、イタリアの植物学者ステファノ・マンクーゾさんによると、動物のそれと形態は違っても、植物も視覚や運動など様々な感覚を感知する器官を持っているという。
動物とは全く違う器官の作りや環境への素早い対応力など、植物がもつ様々な能力は限界に近づきつつある地球を守る手段になりうるとして、近年積極的に研究されている。
SDGsにも大きく関係する内容なので、持続可能な社会に興味がある方にはぜひ読んでほし -
Posted by ブクログ
内容については全く異論なし。
植物が動物とは全く違った形で知的に生きているということを感じているから。
〈本から〉
自然を深く観察せよ。そうすればあらゆることがよりよく理解出来るだろう。
アルベルト・アインシュタイン
環境に対する植物の運動反応は、屈性という名で一般的に知られている。
略
こうした屈性を組み合わせることにより、植物は厳しい環境を生き抜き、根を伸ばすことによって土壌に定着し、生存と安定性を確保することができるのだ。
複数の個体からなる一つの集合体
ファーブル
「動物の場合は『分割する』ということが、概して殺すことを意味するのにた -
Posted by ブクログ
植物の世界も「不思議な世界」満載。
いかに人間が「思い込み」や「偏見」で、
人間以外のものを見ているか、ということをこの本でも思った。
植物と日々暮らしている僕は、「不思議さ」も感じさせてもらっている。
しばらくは「植物」関係の本を読んでいきたい。
〈本から〉
植物は固着性(移動できないということ)をもつ生物であり、動物とは違う方法で進化し、モジュール構造(たくさんの構成要素が機能的にまとまった構造で、各部分は交換可能)でできた体をもつようになった。
植物は、いわゆる「群知能」〔集団の個々の構成員の総合作用によって全体の協調性が生み出され、高度な集団的振る舞いを可能にする知性〕も持ってい -
Posted by ブクログ
ネタバレ二年あまり前にも『植物は<知性>をもっている』を読んでいるがこの本もいい。より人間社会や営みにむけたメッセージが強い内容である。
前著がどうだったか記憶がないが、この本はカラー写真の色の出し方が独特だなと、愉快なイタリアのセンセイである著者の個性を生かしているように感じた。
P103 植物の運動には、内部エネルギーを利用する能動的な運動と、環境中に存在するエネルギーを利用する受動的な運動がある。
【中略】受動的な運動は、細胞壁の構成要素が持つ吸水力の差によって引き起こされる。(受動的な運動は風変わりなものばかりで、実行しているのが、内部エネルギーをも全く使わない”死んだ組織”なのだから驚きだ -
Posted by ブクログ
"地球で存在する生物の99.7%を占める植物。この地球を観察しているETは、この星の知的生命体をとらえる時どのような結論を見出すのだろうか?人類は知性を持ち、あたかもこの星の住人の如く過ごしているが、少数派であることを忘れている。
本書は、植物に目を向けその驚くべき生態を紹介している。
植物は動物のように専門の器官はないが、体内の液体を循環することができるし、においでコミュニケーションをとれるし、外部からの接触にも対応できる。人間が想像できる範囲で植物の謎に迫った本。本書には記載がないが、樹木など100年単位で生きているものもあるので、我々の時間軸とは別の次元で活動しているのだろうな -
Posted by ブクログ
我々人間は得てして植物を取るに足らない生物とみなしがちであるが、それは(植物が動物のような「脳」を持っていないことと、実際には動いている植物を人間が知覚できないことに起因する)偏見に過ぎないことが示されている。
植物は人間を含む動物とは異なる進化戦略を採った生物であり、動物と同様及び動物が持たない感覚も持っている。知性を「問題を解決する能力」と定義した場合、植物にも知性があると結論付けることができる、と本書では主張されている。
植物の知性に関する研究の進展は、人工知能等知性一般に関する研究等にも貢献し得ることも本書末尾で示唆されており、大変興味深い内容であった。 -
購入済み
多彩なパッチワーク!
色々なエピソードが満載され多彩に絡み合う、イタリアのなぜか憎めない人々の群像劇。
出だしはミステリータッチで、中盤からはエンターテイメントに展開するさまにグイグイ引き込まれました。
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Posted by ブクログ
私はヴィーガンで、植物や菌を食べて生きています。
元々、植物には脳がないだけで、知性やコミュニケーション能力など、そういったものはあると感じていました。
人間に理解できないだけ、判別できないだけ、認識できないだけで、植物はむしろ人間に語りかけているかもしれないとも考えています。
人間のモノサシだけで判断する愚かさは常々感じています。
その感じていたことをこの本はわかりやすく、根拠も示しながら、解説してくれました。
自分の感じていたことに根拠が補填され解像度が高まりました。
私たちは命を殺して生きています。
そこから逃れることはできません。
しかし、少しでも、犠牲にしない搾取しない選択肢はある