最近ファミリーレストランでの外食が少ないので、サイゼリアに行ったのは結婚する15年程前になるでしょうか。この本を読むまでは、サイゼリアと他の外食レストランとの違いを理解していませんでしたが、この本に書かれている創業者(正垣氏)の理念を読んで素晴らしいと思いました。
また正垣氏は東京理科大で学んでいますが、この業界の経営者としては珍しいでしょう。同じ理系として、さらに効率的な作業を研究する「動作研究」を経営に取り入れた点、計画生産で農業に取り組むなど、経営工学の知識が随所に取り込まれている点等に共感しました。機会を見つけてサイゼリアで食事をしてみたいです。
以下は気になったポイントです。
・多くの外食産業は「自分たちの店はどうあるべきか」という哲学から出てきた低価格ではなく、場当たり的なもの(p13)
・サイゼリアにおける価格引き下げは、あくまでゴールに向かうための道標である(p25)
・日本では洋食系の外食産業は「脳をびっくりさせる」ことで成り立っていた、毎日食べるものではなく、誕生日を祝うなど、いつもとは違うものを求めるときに食べるもの(p39)
・正垣の仮説は「味とは速度である」、その国独自の味の体系があり、その体系から他国の味を判断しているから、味の受け止め方がかわってくるので速度(計測する場所で変わる)と同じ(p41)
・サイゼリアの料理は基本的には、ワインや前菜、フォカッチャ等と組み合わせて食べた時に一番おいしくなるように設計されている(p44)
・米の水軍含有量が異なると同じ量の水でも炊き上がりが異なるので、専用精米工場ではその日に精米する米の水分含有量を調べて、1パックの米粒量を決めている(p55)
・客のクレームを減らすために、包丁作業・仕込み作業・火加減を店の調理場からなくす努力をした(p63)
・目指した人時生産性は5000円、労働分配率を50%とするなら、残業なしの基準内賃金で社員一人に500万円の給料を払うために、一人当たり年間1000万円の粗利益必要、これを年間総労働時間の2000時間で割ると5000円となる(p64)
・サイゼリアの商品提供が速いのは、効率化された生産性の高い厨房と調理システムを組み合わせているから(p73)
・商社経由で仕入れたいたスパゲティはキロ270円だったが、直輸入に切り替えて130円と半額以下になった、日本では高級食材と言われているものの現地では高いものではない(p89)
・福島県白河市周辺に農作物の一大生産拠点を持っている、面積は280ha(東京ドームの62倍)である(p98)
・サイゼリアの提案する農業は、店舗で必要な分だけを生産する計画生産なので、収穫した全量は買い上げられる(p108)
・43歳は人生のターニングポイント、43歳でタネをまき、ずっと精進し続ければ10年後に花が咲く、43歳のときに何をするかが大事(p116)
・繁盛店は良い店とされず、原理原則から外れてた店として、早急に近隣に出店して集中したお客を分散させる(p126)
・飲食ビジネスの利益率が低い(銀行利率以下)のに飲食店をやるのは、脱税で成り立っているからと気づいた(p133)
・数字に置き換えられるとは、標準化ができる、すると問題点の発見も容易になり改善の効果も明らかになる(p134)
・苦労や問題というのは自分を成長させるために起きているので、正面から受け止めるべき(p156)
・ROI(投資回転率と売上高経常利益率の積算)を20%にするには、回転率が1の場合(売上=投資額)は利益率を20%確保、回転率2の場合は10%で達成できる(p189)
2011年11月26日作成