阿部恭子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
犯罪加害者家族に対しての相談業務や同行支援などのサポートを生業とされている筆者が、家族間殺人というそれぞれの事件の背景に何があったのかを丁寧に検証して紐解いてくれて様々な考察をしてくれて大変分かりやすかった。
家族は血が繋がっていても法的に結ばれていても自分と同じ人間ではない。家族なのだからいつかは理解し合えると楽観視し過ぎることは事態の悪化を招く。改善が難しいと分かった段階で第三者に相談するなり、別居や離婚など物理的に離れる事は事件を未然に防ぐ上で大事な事なのだろうと思う。
とは言え第4章の洗脳された家族の事件(実際の事件名の記載はなし)では外部から悪意を持って侵入した人間によって悲劇が起こっている。尼崎連続変死事件も同じ構造だ。このような悪意を持った人間に対して何ができるのだろう?と悩んでしまった。
加害者となった弟を支える兄の法廷での台詞が刺さった。
「弟が起こした事件に関して分かってやりたいという気持ちはあるがご遺族(弟の妻)の心情を考えると許せない。だが、何があってもお前の兄である事に変わりはない」
-------------------
備忘録
●主な家族間事件
2019 野田市小4虐待死事件
2020 岩手妊婦殺害死体遺棄事件
2010 宮崎家族三人殺害事件
2019 元農水事務次官長男刺殺事件
2018 目黒女児虐待死事件
2018 滋賀医科大学生母親殺害事件 教育虐待
2016 名古屋小6受験殺人事件 教育虐待
2012 尼崎連続変死事件
嬰児遺棄事件
残された家族の人生
洗脳された家族
兄弟間殺人
●家族間事件の主な準備因子
マイノリティの家族
父と長男の絶対的な優位
劣等感から生まれる殺意、
学歴偏重主義
男尊女卑で女性への支援が不十分
ジェンダーバイアス、ルッキズム
生育歴
世間の同調圧力
人様に迷惑をかけてはいけないという共同体の価値観
兄弟に対する家庭での差別的な対応
家庭に居場所がない
地方だと相談に行くとすぐ噂になるような閉鎖的な空間
サポート体制が脆弱
●犯罪者家族の心理
市民権を剥奪されたかのような恐怖心、常に行動を監視されているような緊張感、犯罪者同様に蔑まされている屈辱感を味わう
困難な家庭環境の中で自立した生活を手に入れたためプライドも高く他人を信用せず援助も受け入れず、結果的に周囲との軋轢を生み孤立を深めた。
早い段階でその不条理を理解してあげられる支援者がいればある程度は和らいでくるかもしれない。
家庭は閉鎖的で社会から孤立している。社会に開かれた家族である事が事件を防ぐ
家族間事件の難しいところは怒りの矛先が向かっても情があるので単純に警察に突き出せとか家族の縁を切れとか他人が言っても容易に解決しない所。
家庭は本来安心できる空間であり家族は最初に信頼関係を結ぶ相手である
●なぜ第三者に相談できなかったのか?
男は車と家庭を持って初めて一人前という根強い文化。容易に離婚ができない。
家庭が悲惨というのは社会的な体裁が悪い
子供が罪を犯せば親の責任という文化が強く親の社会的な責任が高いほど厳しい批判になり背負わされる責任が大きく問題を隠す傾向になる
DVの被害に遭い精神的、肉体的に追い詰められ正常な判断ができない
●どうしたらいいか
家族だからこそ離れて距離をとる必要がある。家庭内でトラブルがあれば見て見ぬ振りはせずに第三者を入れて解決を図るべき。人に頼らず自分の問題は自分で解決するという過信こそが家族間事件を招く。
暴力や人格否定に社会が敏感になること
加害者家族であっても人格は別でありあなたに責任はないと堂々と伝えられる成熟した社会になる事が不可欠 -
Posted by ブクログ
今だけ、金だけ、自分だけと考える人が増えているとも聞く中で、本書のタイトルはショッキングだ。著者は、2008年から全国の犯罪加害者家族を対象に支援活動を行い、数多くの事例を通じてたどり着いたお金と幸せに関する本書を執筆した。犯罪家族と言えば、貧困層をイメージするかもしれないが、必ずしもそうとも言えない。お金が運んでくるものは、必ずしも幸せとは限らない。豊かに生きることは、お金持ちになることだろうか。箱入り三姉妹の確執と生涯、家事手伝いという生き方の末路。富裕層の子どもの引きこもりと働かない男が生きる道。田舎の名士に嫁いだ女性と夫の性犯罪。貧乏な恋人を捨て、金持ちと結婚した女の略奪愛の顛末と後悔。夫を経済的に支配する妻の代償。資産家の家庭内性暴力の悪夢。アフルエンザ(金満病)は、お金で人を支配することを幼い頃から覚え、感覚が麻痺したまま成人する。良かれと思って、子どもの意思を無視して受験勉強を強いる教育虐待と子どもたちの軋轢。親の過干渉が子どもたち生きる気力を奪っている実態。日本人の妬み僻みと世間体、因習と家族の葛藤を通じて「幸せとは何か」。昔みた映画の世界。そう横溝正史原作、市川崑監督の金田一耕助シリーズだ。見立て殺人としても超一級の「犬神家の一族(3種の家宝)」、「獄門島(3種の俳句)」、「悪魔の手まり歌(3番まで続く手まり歌)」を観ているような書籍でもあった。
-
Posted by ブクログ
日本の殺人事件における家族間の割合は最近のデータでも全体の4割を占めるという。著者は、2008年に日本初の加害者家族の支援団体を立ち上げ、これまでに3000件以上の相談にかかわってきた。殺人などの犯罪加害者とその家族と面談を重ねる中で、心を開いた家族が打ち明けた内容が解き明かされていく。具体的事例を通じて犯罪の背景に語られる、父という権力、母という暴力、長男という呪い、近親性交で生まれた子どもたち、親近性交が生じる背景と進む。犯罪の背景に、家制度、家父長制、男尊女卑、性別役割分業等にあぐらをかいた父、押し込められる母、過大な要求をされる長男、放置される弟妹などの家族間の闇が絡み合い、支配と抑圧の複雑な家族関係へと発展する。近親性交の世代間連鎖を起こす事例の数々は、アルコール依存症などのアダレルチルドレン、シェルショックなどの戦争トラウマに伴う暴力などと同様と思える。また、遺伝子学的問題はあるものの多様な性のあり方として、近親性交も新たなパートナーのあり方ではないかと投げかける。
書名の「近親性交(以前は近親相姦)」だけを見ると、ポルノ情報や淫らな書籍ではないかと勘違いする人がいるかもしれない。だが、著者は今われわれが学ぶべきケアの倫理やフェミニズムに通底する重要な示唆を与えてくれていると感じる。 -
Posted by ブクログ
家族が重大な事件を起こしたら、
その家族も罰せられるべきなのか?
この問いにYESかNOかという単純な答えは出せない。
そんなことを考えさせれた本
加害者家族の苦悩やその後の人生は壮絶だ
賠償、贖罪、被害者家族に謝罪ができればいいが全てを拒絶される絶望、そして世間からのバッシングと差別
あらゆるものを背負って生きていかなければならない。
この本はそんな加害者家族の苦悩を綴っている。
それはドラマではなくひたすら残酷な事実
犯罪は誰もを不幸に陥れる
加害者家族に対し
「身内が犯罪を犯したのだから家族も罪人」
「家族が悪かったから身内が犯行を犯した」
などと考える人も多く
ネットなどでの誹謗中傷
住む土地を追われたり、仕事ができなくなったり
結婚をあきらめたり、離婚したり…
という現実がある
この本は苦悩する加害者家族を支えるためのNPO法人「world open heart」を創立した阿部恭子さんのルポ
アメリカでは加害者関係を支える人たちがいますが
日本には今まで加害者家族を支える団体はなかったそう。
阿部さんは、このNPOを作った経緯と苦悩、活動や実態なども書かれていますが、その心と信念と勇気に感動。
と言いつつも私も自問自答する
例えば…
自分の家族が殺されたり残酷な犯罪に巻き込まれた時に
加害者家族を許せるのか?謝罪を受け入れることができるのか?
と言われると、おそらくできそうもない。
頭ではわかったつもりでも
現実問題、心が付いていくかと言われると…
憎しみで何も考えられなくなるような気がする。
いや、もしかしたら逆に私や私の家族が犯罪を犯したら…
被害者の方にどうやってお詫びするのか?
謝罪を受け入れられないとしたら…
ネットで住所を特定され
住居を追われ、仕事を失い…
となると…
死を考えるかもしれない…
犯罪はあってはならないこと
自分には無縁だと思っていても
被害者、加害者、関係者になることはゼロではない。
ただ、この本や阿部さんの活動を知ることで
加害者家族の苦悩を知ることは大きい。
そして、阿部さんの活動によって救われる人も多い。
深い内容でした。 -
Posted by ブクログ
犯罪の加害者は罰せられるべきだ。それに異論はない。よくあるのはセンセーショナルな殺人事件の犯人の家族が自殺したという報道。それって当然の報いなのか。犯罪者の家族を守る必要はないのか。
例として登場する加害者家族の多くは住居も仕事も人間関係も捨てて、正体がバレないよう息を潜めて生活している。やがて、彼らは犯罪者本人を家族と思わず、憎悪を向けるか、最初からいなかった者とみなすようになる。それは犯罪被害者を増やすに過ぎない。
犯罪加害者の家族を守ることは、被害者への賠償責任につながるし、将来の加害者の自立や再犯防止の助けにもなる。加害者家族を守ることは社会的な利点があるのだ。なにより、彼らには直接の罪はない。
本書は、こうした考えで加害者家族の支援を目的とするNPO法人を立ち上げた著者によるその活動記録。加えて、なぜ、著者は加害者家族支援を志し、具体的にどのような行動を起こしたのかが語られる。