湯川秀樹のレビュー一覧
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・『学問することの喜びがこの頃はことさら身にしみて感ぜられる.くる日もくる日も研究生活を続けていけるということは,「喜び」などというにはもったいない,本当に有り難いことである.』:同じ気持ちを持っている点では,自分もアカデミア向きの人間なのだと思った.
・『大学に勤めているおかげで,若い純真な人たちと一緒に教えつつ教えられつつ研究していけることである.(中略)数多くの新しい弟を持ったような喜びを感ずる.』:企業で研究するか?大学で研究するか?この気持ちを持てるかどうかではないか.
・湯川先生が中間子論を発表したのは27歳の時で,同じ歳なのに,こうも差がついているのかと思うと自分の凡才を痛感する -
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日本人初のノーベル賞受賞者、言葉にうっとりする。難しいところもあるけれど、すごく面白い。論理の進め方が、物理をはじめとする理系だからかなぁ。仏教や文学、短歌の話もあり、とにかくエレガントな印象がある。湯川秀樹さんのような会話が出来る友だちが欲しいなぁ。読み進めながら「そうそう」と愉しい時間を過ごした。
わたしは、言葉がうまく紡げないときは、数式やおんがくなど、国語とは遠いものへ目を向ける。新聞だったり、絵画だったり、自然だったり。遠いようだけど、詩や短歌、文学に近付いている感じがする。湯川秀樹さん、ありがとう。もっともっと、読みたいなぁ。 -
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ネタバレ今週おすすめする一冊は、湯川秀樹著『目に見えないもの』です。
理論物理学者であり、わが国初のノーベル賞受賞者である湯川博士
の戦前・戦中の文章を集めた啓蒙書で、初版は昭和21年。ノーベル
賞受賞の3年前に出版された博士の初めての著書でした。
物理学の理論やものの見方を解説した文章を集めた第一部、自伝的
的な文章をまとめた第二部、そして短めのエッセーと書評からなる
第三部という構成です。いずれも一般向けの平易な文章なので、物
理学の素養は全くいりません。
湯川博士の専門は量子力学や素粒子物理学で、中間子という物質の
存在を理論的に証明したことが評価されてノーベル賞を受賞してい
ます。この中間 -
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理論物理学という学問をこころざし、その世界に魅せられて大きな業績を残しつつあった一人の若き科学者が、心を込めて書いた後進へのメッセージ。
初版が出たのが昭和21年。ひとつひとつのエッセイの終わりに(◯年◯月)とあり、それが昭和10年代の順不同であるところをみると、雑誌や学会誌か何かに発表された短文をテーマ別に取りまとめたものかもしれない。
第一部の最初のエッセイが昭和20年4月付けで、一番遅く書かれている。これが序文のように読める。時は太平洋戦争末期。学徒動員で出征させられた若者たちへの思いをつづった一文がある。
「時局多端早卒に筆を走らせ首尾一貫せぬが、動員学徒のしばらくの伴侶となり得ば筆 -
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湯川秀樹先生(1907~1981)、1949年、日本人初のノーベル賞受賞者です。私が生まれた年ですが、そういえば、小学校の同級生に秀樹という友達がいました。「詩と科学」(2017.2)、著者ならではでしょうか、ユニークなエッセイです。詩と科学、遠いようで近く、近いようで遠い。出発点は同じ、どちらも自然を見ることからはじまる。薔薇の花の美しさをたたえる気持ちと花の形状を調べようとする気持ちの間に大きな隔たりはない。しかし、薔薇の詩をつくるのと顕微鏡を見るのでは方向は違う・・・。わかりやすいようで、難しく・・・、でも、なんとなく共感を覚えました。