志賀櫻のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
冒頭の、「日本の納税者の負担率は所得金が増えるにつれて低下していく」という驚きのデータの背景の核心部には、タックスヘイブンが大きく関わっていると筆者は述べている。
タックスヘイブンの大きな特徴は1.まともな税制が無い、2.固い秘密保持法がある、3.金融規制・その他の法規制が欠如しているということであり、この三つは高額所得者や大企業にとる脱税・租税回避、マネーロンダリングやテロ資金への関与、巨額投機による世界経済への悪影響という、重大な事態を引き起こしている。無論、問題はそれだけでなく、国の運営に必要な財政資金がきちんと負担されていないことで、公的サービスの整備と充実が出来なくなる、ひいては中間層・貧困層にしわ寄せが行くということにある。
金融危機を引き起こしている一因にヘッジファンドの存在がある。彼らの資源には、時にオフショア・センターを通じたものを利用してレバレッジを利かせており、危機感を感じた政府が対応しても税金をひどく浪費しただけで事態は変わらない、害悪が非常に大きい存在だと筆者は述べている。
正直、私は「他所の国の事だろう」と思っていたが、日本においても武富士事件(香港を舞台にした相続・贈与税の脱税事件)、フィルムリース事件(映画フィルムの償却期間を利用した所得税の脱税)、ハリポタ事件(スイス在住の翻訳者による「日本の非居住者であれば所得税の納税義務が無い」事を悪用した事件)、オウブンシャ・ホールディング事件((オランダに100%子会社を設立し法人税を免れようとした)、五菱会事件(ヤミ金で稼いだ50億円を隠匿していた)といった騒動が起きており、常に目を光らせておかなければいけないという危機感を感じた。
タックスヘイブンの真の問題はその存在そのものだけでなく、悪事によって不必要な金融危機が世界規模で繰り返し引き起こされていること、租税や金融取引に関する情報が何も出てこないという不透明性・閉鎖性にあるのだという。真面目に実直な生活をしている人が、極一部の連中によるマネーゲームで職を失い路頭に迷う、という事態は現実に起こってしまっている。本当に何とかしてもらいたい。
自分用キーワード
所得税制(累進課税) 政府税制調査会 デリバティブ プルーデンシャル・レギュレーション(金融機関がリスクをとり過ぎて破綻しないように規制をかけること) 「公法は水際で止まる(Public law stops at the water's edge)」 FATF(Financial Action Task Force:マネーロンダリングの問題に取り組んでいる。この内部にはエグモントグループという、特別なグループがある) ケイマン諸島、ブリティッシュ・バージン・アイランド、デラウェア州(有名なタックスヘイブン) MI6(タックスヘイブンとも繋がりがあると筆者はみている) シティ(ロンドン内にある一区画。タックスヘイブンと同様の機能を持っており、英国のGDPの20%以上を占めている) OECD租税委員会『有害な税の競争』 マーシャル・プラン(もともとOECDはこのプランの受け皿として設立された) マカオ(北朝鮮の秘密口座事件において使われた。なお、中国政府の猛反対によりリストから外されている) オフショア・センター(特別の優遇措置(規制の緩和など)を設けて外外取引を呼びこもうとするマーケット。多くの場合は外国人のみが利用を許され、国内の人間は利用できない(カジノと同じ理由)) 銀行秘密保護法(スイスの秘密口座で知られている。最近は圧力を受けるようになっている) ダッチ・サンドイッチ(さまざまな優遇税制を持つオランダを挟むことで節税が出来る) ループ・ホール(主に税に関する法律や条約の抜け穴) クレディ・スイス(著名なプライベートバンク。以前不祥事を起こした) タックスシェルター(節税のための商品) ジョン・ドウ・サモンズ(John Doe Summons:相手方の身元を特定しない召喚状のこと) UBS事件(2008,スイス) LGT事件(2006,リヒテンシュタイン) ジニ係数 シティズンシップ課税(居住性に着目せず、国籍ベースで所得課税をすること) FACTA(外国口座税務コンプライアンス法:アメリカの法。無視・契約しなければ30%の源泉徴収という非常に大きなペナルティを持つ) 痛税感(納税する時の負担感) 全世界所得課税方式 ポンジースキーム(アメリカにおけるねずみ講の名称の一つ) AIJ事件・オリンパス事件(共にタックスヘイブンが関わっている) CFC税制(日本における対タックスヘイブン法) 映画『トラフィック』(マネーロンダリングが描かれている) オルタナティブ投資 バンドワゴン効果 ボルカー・ルール AIFM(EUにおける指令の一つ) トービン税(投機マネーの国際間異動にブレーキをかけようとしたもの) マンデル=フレミング理論 -
Posted by ブクログ
タックス・ヘイブン、お金持ちや企業が税金をごまかすのに使う国、地域、という乱暴な認識しかなかったので、とりあえず買ってみた。
著者は、税金を取る側、後には税金逃れを取り締まる側の方。何事によらず第一線のプロ(だった)方のお話は興味深い。
(そちら側からの視点である、ということは差し引かなければいけないかもしれない。)
タックスヘイブンとは何か、どんなことが行われているか、どんなふうに取り締まろうとしているか、実例を上げながら解説されていてとても面白い。
岩波新書ということで堅いお話を覚悟したが、ものが犯罪、テロ関係だけにキナ臭くて、門外漢には興味深いエピソードが多い。諜報機関という単語が頻出するとは思ってもみなかった。(政府が表に出せないお金を動かすのにタックスヘイブンを使うから。右手のやっていることを左手が取り締まろうとしている。) -
Posted by ブクログ
ネタバレ男なら一度はなりたやタックスイーター(´・ω・`)
彼らの大好物
①予算、特に特別会計は予算統制が緩くガバガバ
②財政投融資、一般会計並みの規模
③租税特別措置、利益誘導のくせに減税呼ばわり
(100%減価償却で街並みの商売に異変あるぜ)
④国債、GDPの規模を考えずに未来へ負担押付け
タックスイーターの正体
①族議員、農林・建設・厚生・文教・郵政
②官僚、財投対象機関(公的法人)
③鉄のトライアングル(政官業)
本書にないが今問題視されているNPOは?
あと対策も専門機関頼みであるが、個別問題への
対応が一番得意なのは予算を作り執行する担当者
なので【使える金が少ない】状態にすれば自ずと
削ってくる事が可能な社会を国民と政治家・官僚
が作る事であり、全国に減税会が芽吹き育つ現状
の好例を布教する時代だと思う・・・選挙大事 -
Posted by ブクログ
税金、いっぱい取られてるよね。買い物をすればもれなく消費税を
取られるしさ、お酒には酒税、煙草にはたばこ税、温泉を利用すれば
入湯料、ホテルに宿泊すればサービス税。その他諸々。
納税は国民の義務だけれど、その使い方についてはまったくと言って
いいほど知らされない。政治家やエライお役人様が、まるで自分の財布
のごとく、湯水のように税金を無駄遣いしている。
時折、会計検査院の調査でとんでもない無駄遣いが判明して報道される
ことがある。その無駄遣い、誰が返してくれるのかと言えば誰も返済して
くれない。
そうして国は言うんだよね。「財源がないから増税します」って。
消費増税とセットのはずだった議員定数の削減の話はどこへ行って
しまったんでしょうね。増税だけして議員定数の削減には今のところ
知らんぷりのようだけれど。
さて、本書。元財務官僚の著者が昭和からの税金の歴史を解説しな
がら、私たちが払った税金が食い物にされているかを暴露している。
分かってはいたけどね。不必要な箱物ばっかり作ったり、族議員が
予算の分捕り合戦をしていたりはさ。
結局さ、どんなに消費税率を上げようと、分捕れるところから分捕ろうと
新しい税金を考え出しても日本が抱えている負債ってのは減らないの
ではないかね。
納税の義務に対し社会保障を受ける権利があると思うんだけど、この
権利は近い将来、消滅するんじゃないのか。
だって年金受給年齢は段階的に引き上げられ、受給金額は実質
引き下げが続いている。まして超少子高齢化なんだよね。お先、
真っ暗か、日本。
外遊先で大盤振る舞いしている安倍晋三だけれど、他国にお金を
ばら撒いている場合じゃないぞ~。
あ…そうか。社会保障が破たんしているから「一億総活躍社会」
とかで「一生働けっ!」ってことなのね。
悠々自適な老後は幻か。 -
Posted by ブクログ
魑魅魍魎。税を逃れようとする資本家と、多分それでもいいと思っている多数の政治家、官僚。これは、「思想」の問題か?
資本主義も民主主義も「公平」なルールに基づいて運用されているという了解のもとにあるから、その結果としてある程度の不平等や自分の思いとは異なる主張や制度も受け入れざるを得ない、というのが現在社会の基本的な「了解」ごとなんだろう。しかし、「公平」なルールに基づいてないとしたら・・。
情報とヒト・モノ・カネの移動が国境を簡単に越えていくようになった現在、そしてそれはテクノロジーの発達とともに人間の本性としても不可逆的な動きであることはおそらく明らかで、だからすべての仕組み・制度がグローバルに対応することを始めないと、そこに「公平」はなくなってくる。「了解」ができないことになり、紛争の種が撒かれていく。もうすでに、種は発芽し、次第に大きくなっている。そんなことを考えさせられた本であった。 -
Posted by ブクログ
現在の財政赤字のいったいどのくらいが、タックス・イーターの口に入り、全くの無駄になったのだろうか。本書には「絶望」しかない。この国を支配している政治家、官僚と資本家たち。税の再分配こそが政治・行政の最も重要な仕事のはずが、実際には中間層から「巻き上げた」税金は、政治家、官僚と資本家を富ませるだであった、と本書はいう。政治家と官僚、資本家が税金を食べていく、その手口は凄まじいばかりに多様で、ある意味税制、予算はそのためのつくられている。このことを知ると、税制や予算に関するニュースが全然別の見え方をしてくる。
国民は怒らなければならない。しかし、新聞や出版が軽減税率(この場合、新聞や出版はタックス・イーターそのものになる)を求めるような社会では、メディアがそのことを追求することは決してないのだろう。 -
Posted by ブクログ
タックスヘイブンについては、なんとなく「ケイマンのことでしょ。んで、そこをなんかうまく使って税金の支払いから逃れるんでしょ」ぐらいの認識であったが、果たしてその通りだった。
ただ、ケイマン以外にもタックスヘイブンは様々なところに存在していることがわかったと同時に、シティの連帯感やマネロンがどのように起こっているかもかいつまんでおり、内容が多岐に亘って面白かった。
ただ、筆者の半ば自慢話のようなものも混じっていて、ややぼやけている感じも否めない。もっと絞って書いてくれた方がありがたかったなと思う。
そしたらそんなに面白くはなかったかもしれないけれども。