クリストフェル・カールソンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
super8さんの本棚から
北欧ミステリーの重厚で骨太な書き手がまた現れましたね
スウェーデンと言えばわいも大好きなヘニング・マンケルが有名ですが、やはりどことなく彼の作品を連想させる雰囲気を感じるのは、わいの思い込みでしょうか
長舌にも感じられる陰鬱な情景描写は長くつらい冬を耐える人々の心情を映しているのかもしれません
さて物語は故郷に戻ってきた作家である「私」が、ひとりの老婦人と知り合いになるところから始まります
そして三十年以上前に起きた連続殺人の真実に迫っていくことになります
事件の始まりはハクセキレイが運ぶ不吉な予感によって告げられます
ハクセキレイと言えば、春を告げる鳥で、日本では幸運の象徴とされており、おそらくスウェーデンでも待ちわびた春を連れてくる縁起のいい鳥とされているようです
しかし例えば季節外れのハクセキレイはまるで反対の意味に取られたりするというのは、結局物事の良し悪しはひとつのことのおもてうらということなのかもしれません
気になったのは原題は『Brinn mig en sol』(「私のために太陽を燃やしておくれ」の意)ですが、邦題は『暗殺の冬』となっています
これは1986年に実際に起き、作中でも語られているスウェーデンのオロフ・パルメ首相の暗殺事件を指していると思われますが、あまりいい邦題ではないように感じました
この事件が当時の警察に与えた混乱とトラウマが、本作で語られる連続殺人にも暗い影を落としているというのはわかるのですが…
そしてこの作品はハッランド組曲と言われるシリーズの二作目にあたるとのこと
北欧ミステリーの面白いところが濃縮されたような傑作でしたので、他作品の邦訳についても楽しみに待ちたいと思います
いや、一作目から邦訳しろや!( ゚д゚ )クワッ!! -
Posted by ブクログ
ネタバレスウェーデンの作家、クリストフェル・カールソンの初邦訳作品。
1986年、首相が殺され国中の警官が慌ただしい中、1人の女性が殺される。限られた捜査員で犯人を探すも、嘲笑うかのように2人目の殺害を示唆する電話が入る…
親子二代で挑んだ事件の真相が、三十年を経て明らかにされる。語りが落ち着いていて、非常に読みやすい。厚さほどの長さを感じないと思う。
個人的なイメージは、トマス・H・クックとヨルン・リーエル・ホルストを混ぜた感じで、クックほど後悔の側面は少なく、ホルストほど淡々としていない感じ(過去を振り返る系の作品はクックを思い出してしまうので、偏見かもしれないけど)。
なんとなく犯人はイメージするかもしれないが、そこから派生するある問題が辛い。もう色々と重い。
正直一番驚いたのは、緩やかなシリーズ作品らしいということで、この地方で起こる事件のシリーズがあるらしい(本作は二作目?勝手にヨハン・テオリンのエーランド諸島シリーズをイメージしている)。登場人物も一部重なっているとのことで、ぜひ邦訳を続けて欲しい。 -
Posted by ブクログ
プロローグ
表紙を見てほしい
スウェーデンの片田舎に建つ一軒家
リビングには明りが灯っている
サイコパスが見つめている
そんな光景だ
親子で警察官になったスヴェンとヴィダル
その土地で不吉な鳥と云われる“ハクセキレイ”を
時代は違えど二人とも見てしまっている
見た直後からお互いの事件が動き出す
30年余りの時を超えて、哀しき糸が意図したように
繋がっていく
視えない親子の絆が掘り起こされようとしている…
見つからなかった死体とともに…
本章
『暗殺の冬』
スウェーデンミステリーの最高峰★Super5!!!
これは、何というか…
素晴らしかった
ストーリーは物凄く複雑だし人物も程よく入り組んでいる
スウェーデンの片田舎の描写は克明かつ明瞭で、
さも現地にいるような錯覚を起こさせる
そして、その片田舎の地で、自身が事件を見聞きし、解決しようともがいているような感覚に陥るのである
結果的に親子で追った30年余りの事件の真相は
なんだっのか!?
衝撃的な事実と事実の裏に隠された嘘と過ち
これに気付いた我々は本書に潜む凄みに戦慄するのである
本年度、刊行された翻訳ミステリーでは、
間違いなくNo.1と云いたい
エピローグ
本書の著者は、スウェーデン人であるクリストフェル・カールソンの本邦デビュー作となる作品だ
勿論、ワールドカップ 日本VSスウェーデンを狙っての一冊である
サッカーは、恐らく日本が勝利するだろうが
本作の完成度には感服せざるおえないし、真犯人への下りは完膚なきまでに完敗である
スウェーデンの文學界に盛大な拍手と賛辞をを贈りたい
最後にそう思った!!!
完 -
Posted by ブクログ
1 986年2月28日の深夜
スウェーデン首相が暗殺されそのニュースが飛び交うなか
1人の女性が殺害される
それは連続殺人の始まりだった…
事件を担当した刑事スヴェンは犯人を追い続けるが、結局それは息子で刑事になったヴィダルに引き継がれる
刑事である親子の30年にも渡る執念の捜査の結末とは…
解説より
スコット・トゥローの『推定無罪』
カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』
ボストン・テランの『神は銃弾』
デニス・ルヘインの『ミスティック・リバー』
サラ・ウォーターズの『荊の城』
ジュリアン・バーンズの『終わりの感覚』
ローリー・リン・ドラモンド『あなたに不利な証拠として』
フェルナント・フォン・シーラッハの『犯罪』
ディーリア・オーエンズの『ザリガニの鳴くとろ』
以上の作品が好きなら、ぜひ本書を読むといいだろう。
かならずや心にしみいるはずである。
上記の作品全てを読んでいるわけではないが、納得!
読後、しばらく作品の余韻から抜け出せなかった -
Posted by ブクログ
この本は「山形小説家・ライター講座」の世話役で、文芸評論家の池上冬樹先生が不定期に受講生に送ってくださるお便りで「10年に一度の傑作」と紹介されていらしたので読みました。
池上先生の解説によると
しみじみと読ませる傑作。
スゥエーデンのハッランド県にきた小説家の「私」が語り手。
一言でいうなら、三十年以上にわたりスゥエーデンの小さな町で起きた連続殺人事件の謎を解き明かすミステリ。
深い文学性をたたえたミステリ。
以上解説より抜粋。
ということです。
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私の感想としては文学性が高く文章に厚みがあるのはよくわかるのですが、私にはちょっと高級すぎる感じがしました。
連続殺人事件は起きるのですが静かすぎてエンタメのはずなのにエンタメ度が低い感じがしました。
池上先生のようにエンタメを読まれる一方、福永武彦などの純文学を心から愛する方にはきっとこういう作品は特に響かれるのだろうと思いました。
でも私にはエンタメなのになんだか格調が高すぎて、全体に静謐で正直500ページがちょっと辛いと感じられるところもありました。 -
Posted by ブクログ
超★5 スウェーデンの小さな田舎町で起こった連続殺人、重厚で味わい深いスモールタウンミステリー
■あらすじ
スウェーデンの小さな田舎町、警察官スヴェンのもとに奇妙な電話が入る。女性を農場の近くでレイプしたというのだ。彼が現場に到着すると、自動車の中で女性が襲われたのちに殺害されていた。
その日は奇しくもスウェーデン首相が暗殺された夜で、警察では事件捜査が十分に進められなかった。悲劇はその後も続き、犠牲者が増えていく。スヴェンは捜査を続けるのだが、犯人は杳として知れない。そして事件の捜査は、スヴェンの息子であるヴィダルに引き継がれてゆく…
■きっと読みたくなるレビュー
週末の夜長にじっくりと楽しめるスモールタウンもの、北欧らしく重厚で味わい深いミステリーですね。派手なエンタメ的な展開ではなく、人間ドラマで読ませていくタイプの小説なので、日本人好みだと思います。普段翻訳小説を読まない方でも、きっと楽しめる作品ですよ。
本作は小さな田舎町で起こった殺人事件を軸に物語が展開していく。視点人物の中心は警察官のスヴェンで、彼自身の人生にこの事件は大きなインパクトを与えてしまうのです。
読み進めるほどにスヴェンには同情しちゃうよね。警察官はいろんな事件に関わるうちに「たんこぶ」ができてしまうというけど… ほんと、胸が苦しくなるね。責任感が強いからこそ重荷になってしまうんでしょう。
そしてこの事件は、スヴェンの息子であるヴィダルも関わっていくことになる。父と同じく警察官になったヴィダル、彼の静かで熱いの正義感、そして冷静新着な頭脳には痺れますね。特に物語の後半、事件解決のフェーズになるんだけど推理と行動力には目を見張るものがあります。そして真相に迫るシーンでは、ヴィダルの叫び声が暗闇に吸い込まれしまうようで… しんどかった。
また本作で描かれる被害者、女性たちですよね… いつも暴力にあってしまうのは若く弱い女性なんです。PTSDになってしまう辛さや、逃げ惑う苦しさも本当に胸が痛いです。日本でも議論が進んでますが、性犯罪には厳しい態度で制度や規制を進めたほうがいいと思います。
そして本作の終盤、これまで多くの人たちの人生を見てきたんだけど、そこに一石の課題が投じられることになる。澄みきった水面に波紋が広がるように、ある人物の心と感情が揺れることになるのです。
もし私の立場だったら、事実だけで判断ができるだろうか? 人それぞれに真実や正しさがあって、長い長い月日と生きながらえてきた場所や人間関係があってさ。でも結局、今その時点がいつでも考えられる最新のタイミングではあるんだよね。人って、死ぬその時まで歩き続けなければならないんすよね。
いやー、すっかり引き込まれてしまい、自分自身の生きてきた道のりを見つめ直したくなる物語でしたね。今年読んでおきたいミステリーの一冊だと思いました!
■ぜっさん推しポイント
本作はスモールタウンミステリーがメインではあるんですが、ちょっと特徴的な構成になっています。この事件を取材して物語を書こうとする小説家「私」が存在しており、この「私」という視点人物をとおして物語が進行。そして「私」は事件が起きた田舎町の元住民であり、ヴィダルの友人でもあるのです。
このおかげでノスタルジックな世界観になるし、ふたりの距離感で情緒的な深みが増してる。さらに事件の当事者の視点だけではなく、読者のような立ち位置の客観的に描かれることで、伝えたいことの本質やテーマの全体像が伝わりやすくなっていると思うんすよね。このあたりのひと工夫がプロの技だなーって思いました。 -
Posted by ブクログ
読みやすいが、サクサク読める小説ではない
三十年という長い時間に埋もれたままの事件
スウェーデンという国の歴史の変遷
複雑で進まない捜査
警察官スヴェンの苦悩が延々と続く 延々と
重く深く出口の見えない闇に彼と一緒に放り込まれた感じ
息子ヴィダルがそれを引き継ぎ、父子二世代に渡って物語が進んでいく
どういう結末なのか、真実がどこにあるのか、その果てに救いはあるのか?
「私」を通して徐々に見えてくる真相に、感情がわからないため息をつく
スヴェンが息子を警察官にさせたくない気持ちがよくわかった
それは単なる未解決事件ではなく、「病」だから
やりきれなさが残る北欧ミステリーの傑作
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Posted by ブクログ
《真実を知ることに、意味はあるのか》
SNSで見掛けて気になっていた作品。
1986年、スウェーデンの首相が暗殺された夜、その混乱の裏で一人の女性が殺される。首相暗殺事件の混乱が初動捜査を妨げ、犯人は闇に消える。そして再び殺人がー…。
物語の内容自体は全然穏やかじゃないのに、文章の温度がすごく低くて、淡々としている。
記憶とか時間とか、人の内側にあるものを描く文章が詩的で印象的だった。
詩的な文章も相まって、冬の薄暗いスウェーデンの景色の中で、人の記憶だけがぼんやり浮かんでくるみたい。
「犯人を追うぞ!」というテンションで読むより、静かな文章に浸りながら、少しずつ謎が浮かび上がってくるのを楽しむ本だな、と感じた。
私はどちらかと言うと「犯人を追うぞ!」というテンションの作品の方が好みなので、中盤過ぎまではなかなか入り込めず(꧞ 'ᢦ' )
それ以降は面白く読めました♪
登場人物たちが抱えてるものがずーっと胸に沈んでくる感じで、とにかく重い!( ´-` ).。oO
真実もドーン!って明らかになるわけではなく、静かに登場人物たちの過去や選択を積み重ねて、どう受け止めるかを読者に委ねてくる感じで、読み終わってスッキリ!というよりかは余韻を残してくる感じ。
真実は必ずしも明らかにしなくてはいけないものなのか?
明らかにしたほうがいい場合もあるし、知らないほうが幸せな場合もある。
でも、だからといって真実を隠していいとも言い切れない。
答えが出ないこと自体がこの作品の答えなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2026年の28冊目は、クリストフェル・カールソンの「暗殺の冬」です。ミステリーという枠を越えて、優れた文学作品と言っても良い趣が有ります。私達がどう生きるのか?どう罪と向き合って行くのか考えさせられる作品です。
勿論、ミステリー作品としても派手な展開こそ有りませんが、優れていると思います。いくつもの伏線が散りばめられ、ラストに向けて回収されて行きます。
スウェーデンにとってのJFK暗殺事件、1986年に起きたオロフ・パルメ首相が暗殺されたその日に、1人の女性が暴行され死亡するという事件を発端にハッランド地方にティアルプの怪物と呼ばれる殺人鬼が出現します。
スヴェンとヴィダルという警察官親子、作家の私、スヴェンの同僚エヴィ、第三の事件の被害者イセラの心情が丁寧に描写されて行きます。そこで私達は、事件とスウェーデンの田舎社会に囚われてしまった人達の哀しい人生を見せ付けられます。10年に一度は、言い過ぎだとは思いますが、年間ベスト級の素晴らしい本だと思います。
☆4.8