吉岡乾のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者の淡々とした語り口には、達観とも諦観ともいえない風合いがあって、若干読み進めていくと何を訴えているのか、やや迷子になってしまう。
ところどころに差し挟まる謙遜が、ややノイズとなっている部分はあるものの、全体としては誠実に《言語学》について語っている本であった。
言語学という学問というよりは、学習と研究の違いについて言及したり、言語学と語学(語学学習)の違いについて論じたりと、文化的な面での言語を理由にしたある種のインテリの暴走を牽制している気がしている。
そこには豊かで多様であって良い世界が、徐々に失われつつあることに対する憤りもあるのかもしれない。
正しい言語なるものは存在しない。言語はツールであり、使い手によって使い勝手の良いように工夫されるものである。著者のそういった論は、頼むから他者を殴る道具に言語を使わないでくれという切実な思いがあるのだろうと感じた。
正しい日本語も、美しい日本語も存在しない。
言語学は言葉をどうこうすることは出来ない。ただ、そこにある多様な芳醇さを書き留めて、知識を蓄え伝えるだけである。その知識が多くの人の知性を豊かにするならば、無関心という社会最大の敵に対してのたしかな武器になるはずである。たぶん、そういうことなのだろう。
それはそれとして、現存する文字はおおざっぱにいって元をたどれば2種類に分類出来るとか、第一言語話者の数でいうと一位が中国語で、二位がスペイン語、三位が英語で、意外と英語は低いとか、日本語が実は十位内で検討しているとか、ナスは英語で複数の名称があるとか……いろいろと面白い雑学もあるので、楽しく読める一冊だと思う。 -
Posted by ブクログ
フィールド言語学者の本は、いつもどこか冒険譚のようで、それだけで楽しく読める。本書もその期待を裏切らない。ただし、フィールドでの苦労話や珍しい体験談が中心というより、そこから一歩引いて、より一般言語学的なテーマへと読者を連れていくタイプの本である。
全18章はそれぞれ独立していて、気になるトピックから読み始めてもよい。各章では、まず興味深い話題が提示され、そこからいったん脇道にそれ、さらに別の話題へと広がり、最後には元の問いに戻ってくる。この「寄り道ショーケース話法」とでも呼びたくなる展開が、本書の大きな魅力である。読んでいる側は、「この話はいったいどこに着地するのか」と少し不安になりながらも、その寄り道自体を楽しんでしまう。
一方で、この話の進み方や、ところどころに出てくる難読漢字は、読み手によっては少しハードルになるかもしれない。軽い読み物として一気に読むというより、興味のある章を拾いながら、少しずつ味わう方が合っている本だと思う。
もともとは授業のネタ本、いわば種本として購入したのだが、読んでみると、言語学だけでなく文化人類学に関心のある人にもかなり刺さりそうだった。うちの文化人類学系の先生たちにも勧めて、ぜひ感想を聞いてみたい。