土形亜理のレビュー一覧

  • みずうみの満ちるまで

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    誰かの台詞でも「」を用いない文体で描かれる。それが私には、私の声も存在も認識されないような、遠くの場所で人々を見守らされているかのように感じる。それは、私に物語への干渉を許されず、突き放された気持ちにさせる。どんな小説だとしても、それが当たり前なのは重々承知であるが、どこか寂しい。何より、この世界は私達にとっても起こり得る未来で、この世界を自分たちと結び付けておかないと同じ事を起こしてしまうと思う。私も物語の一部にして欲しいのにそうさせてくれない。そんな俯瞰した目線で描かれる本作は、私たちの未来を予言したかのような雰囲気を醸し出している。
    と、前半程度を読んだ自分は考えており、少し残念に思って

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    2026年04月02日
  • みずうみの満ちるまで

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    自然環境の崩壊が進む近未来。貧しいものは死に、富めるものがデジタル世界で生きながらえる、そんな中で、敢えて永遠の命を放棄した富めるものたち、生きながらえることになってしまった貧しきものたち、意図せずデジタルの命を得てしまったものたち、そういった彼らが巻き戻せない現世について考える物語りだったと思います。世界観が完成されていて秀逸と感じました。私個人としてはストーリーのピークが最終盤でなかったように感じてその点だけがやや残念ではあったのですが、大変深く考察された内容に好印象でした。星4つとしました。

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    2026年04月03日
  • みずうみの満ちるまで

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    ネタバレ

    SFというと、無機質で退廃的な印象があります。けれども本作は瑞々しい木々が並ぶ、
    美しい風景を見ているようでした。
    それは本作の舞台が荒廃した世界の中の楽園だから。しかしここを楽園と思うかは登場人物によって異なる。仮想空間で永遠の命を得るか、地表で生まれて死を選ぶのか。はたまたどちらも選べないのか。最後まで読むと他の選択肢も出てくるかもしれない。

    この荒廃した世界で何かを選ぶことができるのは、一部の人間だけ。それ以外の人間は、選ぶことなく奪われて続けていく。そんな人間が減るように、三毛猫は難民を救い続ける。そんな風に感じられました。残酷な世界なのに、楽園の美しい様と三毛猫の存在により、綺麗な

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    2026年02月03日
  • みずうみの満ちるまで

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    ネタバレ

    文章が美しく、登場人物も、みな魅力的。
    全体的に好みなSFなのだか、読み進めると吸引力が減っていく感じ。

    ヘヴンズガーデン創設者の三毛猫の思想も疑問が残るし、主人公エルムが考えた先に行き着くところ(悲しみで満ちた湖の一部となって、悲しみと結ばれて孤独が終わる)も、これでラストとするには弱いなぁという感想。

    あとリンクスが好きだったので、湖を渡り、いつか星々のあいだを旅するかもと思われていた彼女が最後の最後で…。
    エルムに対しての決定打にはなるけれど、いち読者としては残念。←依怙贔屓なのは自覚してます。

    わたしたちが運んできたものをうけとって
    そして、わたしたちの知らない世界へ渡して

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    2026年05月03日
  • みずうみの満ちるまで

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    ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。

    地球温暖化と戦争、詰まるところ人の営みの結果終末期を迎える地球を舞台にしたSF小説。

    富を持たないものは十分なインフラを得られず、早くに死ぬのに対し、富裕層はデジタル世界に意識をアップロードし、永遠の命を得るという二極化した世界。
    そんな中、自治区に設けられたヘブンズガーデンでは富裕層に対して全資産の寄付と引き換えに、望む形の幸せな最期を約束。その施設でコーディネーターとして働いているのが主人公。

    永遠の命が得られるのにヘブンズガーデンで死を選ぶ富裕層達が抱えるこの世界への後悔や苦悩、難民として自治区に保護されている側の生への向き合い方、施設管理者側

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    2026年02月16日