梶原阿貴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
こんな面白いノンフィクション、読んだことがあっただろうか。
できのよい小説にしか読めないが、どうやら事実らしい。
著者は俳優兼脚本家。
映画「桜の園」に出演し、「爆弾」やら「霧島です」やらを書いている。
どうりで。
いや、納得してはいけない。
こんな少女時代、普通、ない。
父親が爆弾犯で、ずっと家で潜伏しているなんて。
そして父親もまた役者だったなんて、、、
唐十郎、緑魔子、石橋蓮司という名が平気で出てくる。
その珍妙な家族関係。
潜伏していることを知って母親は結婚して著者を産んで、
ずっと夫をかくまってきた。何度も引っ越してきた。
子は親を選べない。
貧しいだけなら仕方ないが、友達を家に呼べないのだ。
まだ池袋という場所がそれをそんなにおかしなこととはしていなかったようだが。
夜の街で生活している家庭がそれなりにいたのだ。
それにしても爆弾犯。
先日自首して直後に死んだ「桐島」の横に指名手配の写真が
交番に貼ってあったとは。
父親はその後子供のために?自首し、刑に服す。
その間母娘は極貧の生活、静岡に受刑する父に会いに行っても
ぶすっとされがっかり。
やがて出所してもうまくいかず、2年で家族解散。
彼女は俳優の道へ、そしてやがて脚本家に、、、
やはり小学生時代の潜伏する父親との生活ぶりが妙にリアルで楽しい。
読ませる。ありえない。
子供は父親を選べない、、、
よくぐれずに、映画の脚本家になったものだ。
逃亡生活 1973―1985(池袋北口平和通り商店街;ジンミンノコ ほか)
裁判~服役 1986―1991(父の初公判を傍聴に行く;自由の森学園と若松プロと宝塚 ほか)
父出所~家族解散 1991―1993(父、二十年ぶりに娑婆に戻る;家族解散)
脚本家になろうとする 2023―(名探偵コナンで脚本家デビュー;東日本大震災後に宮城刑務所へ ほか) -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと家にいて靴もない男の人、たぶんお父さんなんだけど名前も知らないから呼びようもなくて、トイレも流してなくてなんなんだろうこの人、と思う生活から全ての理由が繋がるところまでの第一章の展開にざわっと鳥肌が立ちました。
いや、本書を手に取ったときから答えは知ってるのだけどそういう暮らしが毎日続くということの息詰まり感というか後ろめたさというか、小学生には想像を絶する辛さだったろうと思うことしかできなく。
友達に嘘をつかねばならない、隠し通さねばならないことがあるというのは友人関係を作る上での、ひいてはそれからの成長過程での重荷というか傷になる場合もあるかと思います。性格的にもちょっと暗いものになってしまうような。
著者とは違うけれど自分も家族関係のことで友達には言えない事情を抱えて、中学生になってからは友達を一切家に連れてこれなくなってしまったので「あれの数十倍のしんどさかな」などと想像しつつ読みました。
けれど書き方のせいもあるかと思いますが、この女の子(著者)は明るい。そして負けず嫌い。この子の持っているものは生来のものなのかそれとも「なんとかなるよ」が口癖のお母さんのおかげなのか。
いや、このお母さんもすごい人。
お母さんの側からの手記も読んでみたい。全然違う景色が見えてきそう。
しんどい話なのだけどこの第一章がとても興味深く面白い。文章が生き生きしている感じがします。
第二章以降、父が逮捕されてしまったあとの話になっていきますが、冷たく接してるようで父の抱えてしまった事情というか犯罪を犯してしまった要因について著者なりに分析している箇所には少しの愛情を含んだ父に対する同情のようなものを感じさせられました。
しかしそれはやはり家族だから感じるものなのかなと。(著者はそんなものではないと否定されるかもしれませんが)
実際にその事件で被害に遭われた当事者の方やその家族の方たちにとっては、たとえ事件で命を喪っていなかったとしてもおそらくとても許せないことだろうしそんなふうに著者が思うこともおそらく不愉快にしか感じられないのでは、と思うのです。
家族が解散してから以降の話は著者自身の芸能界に入ってから脚本家として立つまでの話がメインになっていきます。
著者の持ち前の負けず嫌いと父の話をすることで自分をアピールしようとする貪欲さ、そしてある人から「それが切り札」と半笑いで言われたことでそのアピールの仕方を封印したという下りには、芸能界に残るために足掻く苦悩にリアルさを感じました。
自分の書いた言葉で、誰かの人生を狂わせてしまう可能性があるから(p233)
役者の時にその恐ろしさを知り、知った上で今度は脚本家になっていくというところにぐっときます。
著者は役者に行詰まりを感じて脚本家を目指されたとのことですが。
芸能界に入るきっかけを思うと何だかんだ言ってもやはりお父さんのおかげはかなりあるんじゃないでしょうか。
時代のおかげもあったかもですが、一般人はこんな風には通常入っていけないと思います。大変な生い立ちてはあるけれどそれが強みにもなったという風に私は感じます。
その意味ではラッキーな人だとも。
もちろんそこから現在に至るはご本人の努力の賜物だとは思うけれども…
私は何も自分で選んでないので理不尽だとしか思えないし、人生を損しているような気がしていた。(p194)
子供は本当に親に翻弄されますね。宗教二世とは全然違うけど学童期には特に親の考えや行動に巻き込まれるより仕方がないときが多くて、納得できなくても諦めたり不条理を飲み込んだりさせられるところはよく似ている気がします。
時々容赦ない会話がされるところに吹き出してしまいます。(普通もう死んでるでしょ、とか)面白会話はおばあちゃんが登場するシーンが多い感じもします。このばあちゃんがまた何かかっこいい。
全体として重い事実があるから効いてくるわけで、意図的に書かれてるのでしょうけどセンスですね。
巻末の「おわりに」、が染みます。子どもに向けて、または自分のような状況にかつてあった子どもだった人に向けて書かれています。
著者が占ってもらった結果によると、著者はこれから書き物で世に名を広めていくらしいので脚本なのか、エッセイなのか、ノンフィクションなのかわかりませんがこれからまた面白い話にお目にかかれることを楽しみにしたいと思います。まずは「桐島です」観てないから観ようかな。
お父さん、写真を見たら随分とかっこいい俳優さんだったのですね。声もテノールとか。
俳優としてまだまだ見たかった人でしたね。 -
Posted by ブクログ
1970年代初めに20件近く続いた爆破事件は子供だった私にはかなり恐怖だった。その爆弾犯のひとりを父に持つ娘の話と聞いて興味を持って読んでみた。こんな話だ。
自宅には隠れるように暮らしている男がいる。靴も持っていない、名前すらない。友達を家に招いてはいけない。男の存在を他人に話してはいけない。さらにその男は自分の父親なのだ。何もしないで隠れている父と小学生の自分を母がひとりで働き養っている。日ごろの会話からこの男に秘密があることはわかっていたが、ある日父が新宿クリスマスツリー爆破事件の犯人で指名手配犯であることを母から知らされる...
家に隠れる爆弾犯の父がいる池袋での小学生時代、父の自首後の中学高校時代、俳優時代と父の出所そして家族解散、脚本家を目指す著者と父との再会の4つの章からなる。
著者は私より年下だが、彼女が育った70-80年代の池袋の風景は、隣町で育った私にも馴染みのあるもので、出てくる街の描写に自分の記憶を重ねながら懐かしく読みました。記憶違いか創作かなと思える描写もありますけれどもね。
著者としても娘としても爆弾犯の父とは距離を保って書いている。そりゃそうで、親子だからって変に父親に寄り添うように描いたら読者からクレームが来る。だから父は何もせず会話も少なく卑屈な男として描かれる。梶原譲ニはなぜ爆弾犯となったのか。そして今どう思っているのか。
「ゲリラ闘争とは民衆に支持、共感され、勇気、希望が生まれる豊かなものでなくてはならない。拍手喝采されるものでなくてはならない。しかし我々はそうすることができなかった」梶原は敗者であり何もなし得ず、逃げ隠れするだけのつまらない男だ。
あとがきで、親が犯罪者あるいは逃亡者のせいで苦しい思いをしている子供を励ます言葉を書いている。それはその通りだ。この本の目的がそうであれば私たちは文句を言えない。とはいえ死者こそ出なかったが梶原が起こした新宿の爆破事件で手足を失った被害者たちもいる。そうした被害者を差し置いて単純なハッピーエンドは描けないだろう。ただ著者も父親に文句を言いながらも父親の友人たちに助けられて俳優の仕事をし、それが脚本家の仕事に繋がっていく。そしてラストでは著者は一線を引きつつも彼女の母や祖母は彼を許して受け入れたようであり、家族の最後の幸せを再構築したかのような終わり方をする。そうした描写の端々に親子ならではの愛情らしきものが感じられる。
罪を犯した人が刑に服した後は社会としては許せても、被害者の中には許せない人たちもいる。それは仕方のないことだし、罪を犯した人はそれも含めて一生償っていくことになるのだろう。しかしその子供たちが一緒に償う必要はない。
本を売るためにはおそらく、爆弾犯の父親という存在を面白いネタとして利用すべきであって、同情や共感を求めようとすると反感を買う。この本はそこのギリギリの線を描いている。その意味で面白い作品になっているのでしょうね。 -
Posted by ブクログ
父の存在をひた隠しにして暮らしていた子供時代が、意外にも明るく、昭和感が懐かしくおもしろかった
都内の公立小学校ってこんないろいろな事情を抱えた子供が多かったのか~
靴のない父の
「おかえり、僕もさっき戻ったとこなんだ」
「お仕事お疲れさまでした。すぐご飯にするね」
この茶番w
リレーの練習の際に現れた真新しい靴を見た時の衝撃w
学校行ってる間に引っ越し完了してた話とかくさや事件とかとにかくエピソードが特殊でこんなこと言っちゃナンだが面白かった
殺人事件に巻き込まれた時なんかよくあんな対応で許されたよなぁ昭和だよなぁ
中学入学を機に急にいなくなった時はちょっと涙した
それから今に至るまでの長い時間、家族はくっついたり離れたりなんだかんだいい家族だと思った -
Posted by ブクログ
ネタバレ筆者の逞しさを強く感じた。
犯罪者の家族ってもっと大変で惨めなのかと思っていたけど、時代のせいか、筆者の性格か、あまりそんな印象を受けなかった。
役者をしていた父親の心理を考えるところでは、その時演じていた役にひっぱられて爆弾犯になったのかもしれないということに、また驚いた。
全編通して、筆者に共感する部分はところどころあれど、自分は圧倒的に被害者の立場からこの本を読んでいたことに気づく。
特に後半の、被災した宮城県の刑務所に知り合いを尋ねるところで「巡査部長が右目と左脚を失い、通行人12人が怪我をしているが、死人は出ていないのに、罪が重すぎるのではないか」と書いてあり、めちゃくちゃ引っかかってしまった。囚人に税金が使われていることも書かれてあって、確かにそうなのかもと思ったけど、右目と左脚失った人やその家族はそうは思わないだろうな〜と。
共感した部分も引っかかった部分も「おわりに」が良かったので読後は爽やかだった。