坂本湾のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
好き嫌いが分かれる作品かもしれないが、自分はとても面白い作品、好きな作品だと思った。
単純労働に従事していると、自分がロボットや機械の歯車の一つに過ぎないのではないかという思いに高確率で駆られることになると思う。
時間が流れるスピードが遅く、体が惰性で動き続ける中で、意識はあちらこちらに浮遊していく。
労働はお金を得るためという目的が一番大きいのは間違いないが、そこに思いを振り切らせるには、あまりにも拘束されている時間が長い。
この作品に登場する人間たちも、様々な鬱屈した思いを抱えて業務に向き合っている。
そんな中で魔が差してしまうのも、気持ちは分からなくはない。
さすが、芥川賞にノミネートさ -
Posted by ブクログ
一昨日、実家の小物を整理(捨てる??)するという単純作業をしながらAudibleで。
宅配所でベルトコンベアーを流れる箱を相手にする4人のお話。
アンは箱の中身を想像することに楽しみを覚えていたが有ることがきっかけで箱の中を確認するときに盗みを働く。イナモリは派遣職を得るまでのつなぎに働いている。斎藤は妻が病気で酒を飲みながら働く。神代は非正規を管理する非正規職員で煩わしい事は避けたい・・そして頭痛に悩まれ続けている。理不尽な労働、霧に立ちこめる宅配所。危うい危うい。
そんな中で4人が少しだけお互いを知る。その中であの忌々しい放送係の社員が自慰をするところを見て爆笑する。
そうこうするうち、盗 -
Posted by ブクログ
立場と背景の異なる四人の非正規労働者がベルトコンベアを軸に荷物を仕分け続ける。霧が立ち込める作業所とベルトコンベアの機械的運動と同調するように無機質なリアリズムが貫かれており、本編内で示唆されるようにストライキといった手段での連帯が見出だせない現代の日本において矮小化された「個人」が業務中飲酒や窃盗といった規模の小さな反抗に快楽を見出す様が面白い。融合された一人称としての「私」は連帯を失った「私」達の意識の融合体であり、終盤のマジックリアリズム的飛躍にはフィクションの希望を感じさせると同時に、集合体としての「私達」であっても連帯され得なかった個人としての「私」が際立つニヒリズムにも似た物悲しさ
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Posted by ブクログ
ネタバレ芥川賞候補作の中で一番おもしろそうだったので読んだ。
四人の登場人物の視点が次々に入れ替わり、時に交わり、或いは全員の立場を冷笑的に俯瞰しながら、何も起こらないままの労働を続けている。彼ら彼女らは全員、それぞれに全く異なるバックグラウンドを持つ人間であるはずなのだが、彼らの個性は極限まで捨象され、誰ひとりに感情移入することも出来ない。
最初に読んだ時、属性に応じた一人称や口調の区切りが一切なされていないことに戸惑いを覚えた。登場人物全員の属性を把握して尚、今だれの視点に立っているのか分からなくなることがしばしば起こった。
彼らは本質的に何者でもないと同時にあらゆる人間であり、全く異なる存在であ -
Posted by ブクログ
面白くてサクッと読み終わった。一時、物流業界を志望していた身としては、正直この領域で心身の健康をうまく保てる気がしなかった。単調な作業とオーバーワークは、人から意志を奪い取る。この環境で引き起こされる過ちは「魔が刺した」なんてものではなく、「そうすべきだから、そうした」というニュアンスの方がきっと近い。
終わり方も良かった。とある宅配場で異常が起きようと、変わらずどこかで荷物は集積され、どこかへと出荷されるべくベルトコンベアに真顔で流れてくる。労働、という行為に付随する地獄の1形態が、ひどく乾いた、それでいて妙に身体性を伴って提示される。
作者は日芸の劇作コース出身らしい。読んでいる最中立ち -
Posted by ブクログ
Audibleにて。
集積所で働く4人にフォーカスしたストーリー。
クローズドだからこそ生まれる問題・課題、レーン作業ならではのトラブル、それぞれの思考をリアルに初版化したって感じですね。
全てを凝縮して、こんなにもコンパクトに書籍化したのは凄いなと思いました。読み物として楽しめましたが、刺さるとか、影響を受けるといった小説ではないかな。
これはAudibleあるあるですが、真夜中に自室で1人で聴いてたんですけど、モーター音とかのリアルな音とかはやめて欲しいな〜。本気でビックリして、ヘッドフォンをもぎ取りましたよ。部屋で急に掃除機が稼働しだしたみたいな音で、一瞬パニックになりました笑
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Posted by ブクログ
単行本だけどページ数も少なく、字も詰め詰めでないのでサクッと読める作品でした。
タイトルと表紙が印象的で残っていましたが、
宅配所の軽作業で働く4人のモヤモヤを描いた物語のようでした。"共感も感情移入もさせず…"帯の角野光代さんのコメントがまとを得ている。
淡々と話が進んでいく様をベルトコンベアと重ねて、ベルトコンベア・サスペンスなのだろうか?
箱よりも、濃霧に包まれていて回りが見えない職場は作業するにも危ないだろう…。
霧は働く労働者たちの精神的なモヤモヤのたとえなのだろうか?
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●現代の若者の内面を表したような文が独特で面 -
Posted by ブクログ
ベルトコンベア・サスペンスって何?と思ったけど、見事にそのままでちょっと笑ってしまった。
Audibleで聴き進めるうちに、何だか苦しくなって何度か中断。
苦しい原因は、自分の閉所恐怖症だった。
物語の逃げ場のない閉塞感、ヘッドホンの密閉感、さらにはナレーターの無機質な声。
この三重の苦しさが相乗効果となってしんどかった。
別に煽られているわけでもなく、淡々とした文章なのに、苦しくなってしまうのはなぜだろう。
この世界観を描き切る著者の感性がすごい。
無機質で閉塞感のあるどこか現実味のない世界観は、昔観た映画『CUBE』を思い出した。
便利だからと、ついポチポチ買い物をしてしまう自分