坂本湾のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ霧に包まれたような、モヤモヤとした不思議な読後感だった。
濃霧が立ち込める宅配所でライン作業をしている従業員視点の話。
視点がコロコロ変わるので、今誰の話だ?と一瞬なるのが読みにくく感じた。でもそこがこの本の不気味な雰囲気を作っているとも感じた。
箱を盗んでしまう従業員。箱の中身からドラマが生まれるかと思いきや、箱を盗むことそのものに陶酔してしまう。
他にも色々問題を抱えている人たち。
工場現場って、低学歴や年配、移民の集まりみたいにまとめられているけれど、蓋を開けるとその辺のそこそこの企業の会社員よりも、問題を抱えている、不謹慎な言い方をすればドラマがある人たちが多いのかもしれない。
本作 -
Posted by ブクログ
むちゃくちゃ好き。
どこからが現実で、どこからが思考で、
どこまでが妄想で、どこまでが自分なのか。
霧のように輪郭がぼやけているのに、
不思議な引力でぐんぐん読み進めてしまう。
むっちゃ面白かった。
今の時代、「こんなことないでしょ」とも言えない
題材が真ん中にあって、とても現実感のある瞬間もあれば、妄想や思考が入り混じって白昼夢のような瞬間もあって。それがなんだかサスペンスっぽさに繋がってて続きが気になって一気読みしてしまった。
結局彼は今も霧の中なのか、
運び出すことに成功したのか。
あとカバーを外した時のダンボールのような装丁が粋。中表紙が蛍光色なのも、作中の表現をうまく拾って -
Posted by ブクログ
「BOX」を執拗に繰り返すタイトルは、陰鬱で湿気の多い宅配所の閉塞感、そこにある大量の箱の象徴なのでしょうか。本作は、宅配所で荷物の仕分け・管理に携わる4人を描く中編小説で、坂本湾さんのデビュー作にして文藝賞受賞作とのこと。
社会への鬱屈した思い、労働環境の糾弾を描いたものではありませんが、ベルトコンベアーの単純作業中の思考が、薄霧で人の輪郭も曖昧な環境と併せて、朦朧とした意識が徐々に人を変えていきます。
章立てもなく、急に4人の視点が切り替わり、特に終末では「私」の一人称が混在し、4人が閉塞感から解き放たれたのか、何事もなく元に戻ったのか、幻影を見ているようです。
本書を読みなが