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宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描くベルトコンベア・サスペンス。第62回文藝賞受賞。
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Posted by ブクログ
むちゃくちゃ好き。 どこからが現実で、どこからが思考で、 どこまでが妄想で、どこまでが自分なのか。 霧のように輪郭がぼやけているのに、 不思議な引力でぐんぐん読み進めてしまう。 むっちゃ面白かった。 今の時代、「こんなことないでしょ」とも言えない 題材が真ん中にあって、とても現実感のある瞬間も...続きを読むあれば、妄想や思考が入り混じって白昼夢のような瞬間もあって。それがなんだかサスペンスっぽさに繋がってて続きが気になって一気読みしてしまった。 結局彼は今も霧の中なのか、 運び出すことに成功したのか。 あとカバーを外した時のダンボールのような装丁が粋。中表紙が蛍光色なのも、作中の表現をうまく拾っててグッジョブ。
同じことを繰り返す日々の中で生きる4人それぞれの思考。何が現実で何が妄想かは分からない。正常なのか、狂っているのかも分からない。共感ができるというわけでもない。それでもなぜか物語の中に、霧の中に入り込んでしまう感覚。気づけば読み終わっていた。
視点が次々と切り替わる構成がとにかく冴えていた。 登場人物ごとに温度も癖も違うのに、そのたび空気の色まで変わるようで、醍醐味があった。 同じ出来事でも、誰の目から見るかで意味が揺らぐ感じが面白く、全員の心情がほどけるようにわかっていく。 テンポのよさが裏目に出る場面もあって、感情の余韻がもう少...続きを読むしだけ深く沈んでくれたら完璧だったかもしれない。 視点の切り替えで物語が立体化していく感触が心地よく満足感があった。
薄霧の立ち込める宅配所で日々働く4人の物語。一人一人にスポットライトが当たり、何を考え、何を心に抱えて生きているかが描かれている。少しずつ、だけども確実に狂っていく4人を箱の外から覗いている感覚に陥った。安と同じく4人を覗くことをやめられなかった。
最悪な劣悪環境の中で、ベルトコンベアから 流れてくるダンボールに付いている番号を確認 して、指定のレーンに流す。 そんな単純作業を繰り返す安は、働きながら 箱の中身を妄想することで、作業に取り組んでいる。 いつしか妄想が、ある重大な事件を引き起こす 魔法となる。 私自身もこういったベルトコンベアの作...続きを読む業をしていたことがあるのだが、締め切った空間のような気がして、作業を繰り返していくうちに気持ちが どんよりとしたことがあります。
第62回文藝賞受賞作。 100ページほどで、非常に読みやすい。 ベルトコンベアーがグルグル回るように、視点が四人の人物の間を移り変わり、最後は霧のように終わる。 個人的には、学生時代のバイトを思い出した。 工場での立ちっぱなしの流れ作業、休憩時間は誰ともほとんど交流なく、とにかく時間が進まない。...続きを読む 耐えに耐えて、慣れてくると余計にキツくなる。 霧もなく、盗んでも単体では価値もなく、すぐにバレてクビにはなっていただろう。 軽作業は決して侮るべからず。
「BOX」を執拗に繰り返すタイトルは、陰鬱で湿気の多い宅配所の閉塞感、そこにある大量の箱の象徴なのでしょうか。本作は、宅配所で荷物の仕分け・管理に携わる4人を描く中編小説で、坂本湾さんのデビュー作にして文藝賞受賞作とのこと。 社会への鬱屈した思い、労働環境の糾弾を描いたものではありませんが、ベ...続きを読むルトコンベアーの単純作業中の思考が、薄霧で人の輪郭も曖昧な環境と併せて、朦朧とした意識が徐々に人を変えていきます。 章立てもなく、急に4人の視点が切り替わり、特に終末では「私」の一人称が混在し、4人が閉塞感から解き放たれたのか、何事もなく元に戻ったのか、幻影を見ているようです。 本書を読みながら、梶井基次郎の『檸檬』を想起しました。「えたいの知れない不吉な塊」に悩む主人公が、レモンを丸善の棚に置き、爆弾が炸裂する空想をしながら店を出ていく…という話です。 イライラの現状を打破する手段として、癒しのレモンが爆弾に転化する妄想と、本作の箱からの盗品を箱であるロッカーに隠す快感は、ある意味病的で共通する匂いを感じました。 人間の醜悪な部分を暴いて剥き出しにする描写は、不気味ではありましたが引き込まれました。 カバーを外すと、本表紙は飾りっ気なしのクラフト色で、これって段ボール? そして見返しととびらの色はなんと、ショッキングピンク&イエロー! おぉ、これは著者から読み手へのギフトか?
荷物を仕分ける宅配所の、単調な作業に関わる4人の物語。110ページの短い話だけど、中身は、なんとも言えない結構濃い目な感じでした。 妄想と現実が混ざり合い、読み進めるうちにこっち側が現実なのか分からなくなっていきました。同じ毎日の繰り返しが、少しずつ人を狂わせていく怖さがじわじわ押し寄せて来ました。...続きを読む どの職場でも、誰もが狂ってしまう要素があるけど、みんな何か狂わない防波堤(趣味、娯楽、家族、責任‥etc)のようなものが、それぞれ持ってるから平常を保てるんだろうなぁ‥
霧に包まれたような、モヤモヤとした不思議な読後感だった。 濃霧が立ち込める宅配所でライン作業をしている従業員視点の話。 視点がコロコロ変わるので、今誰の話だ?と一瞬なるのが読みにくく感じた。でもそこがこの本の不気味な雰囲気を作っているとも感じた。 箱を盗んでしまう従業員。箱の中身からドラマが生まれ...続きを読むるかと思いきや、箱を盗むことそのものに陶酔してしまう。 他にも色々問題を抱えている人たち。 工場現場って、低学歴や年配、移民の集まりみたいにまとめられているけれど、蓋を開けるとその辺のそこそこの企業の会社員よりも、問題を抱えている、不謹慎な言い方をすればドラマがある人たちが多いのかもしれない。 本作はそういった人たちが、延々とループされるライン作業という仕事に気狂いしていく様子が描かれている。 なんか、工場勤務経験のある自分からしたら、いろいろと感じるものがある物語だった。
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