あらすじ
宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描くベルトコンベア・サスペンス。第62回文藝賞受賞。
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単調な仕事に就き、日々それを繰り返すことによる不安感や閉塞感が表現されていた。著者は、宅配センターの仕分け作業について自身の経験を通し「身体は疲れるけど、脳は暇」と言い表していたが、実感がわかない。
私は仕事を通して、勤務に関わらず責任が問われる緊張感や、終わりが見えず時間が侵食される感覚をおほえ、脳の疲労を感じている。
単純作業を生業とすることは、表面的には自由や開放感を与えるが、長期的には虚無感や孤独感に苛まれるのだろう。
無人島に身を投じることを想像したとき、自由と孤独の両方を感じる。だから、どちらということではなく、自由と孤独は表裏一体で、責任から逃れることは社会とのつながりを手放すことになるのだろう。勝手に発展してしまったが、自分と対比させながら深く考える機会となった。
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題名の「box」に引っ張られているよう気もするが、安部公房的おもしろさがあり、中村文則的おもしろさがあった。不穏で尚且つ推進力のある小説。
「濃霧」に「ブレインフォグ」とフリガナがふってある言語感覚も好きだ。
「労働は返事をしない。献身の見返りは薄給で、いずれ体も思考も動かなくなって捨てられる。」p.26
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語り手の視点が唐突に入れ替わり、現実と妄想の境界がなくて混沌とした世界。ループして抜け出せない感覚に陥って困惑した。陰鬱で殺伐として湿度高めの空気感、息苦しかったけれどこの雰囲気は好きだ。安がモノに妄執する様に「銃」を思い出した。次作が楽しみ。
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気味悪い職場はデストピアかと思ったが、読んでいるうちに、これって現代の職場で感じるものそのものではないかと感じた。職場で何かあるとルールで縛られる閉塞感、正規と非正規の違い、仕事のやりがい、コミュニケーションがなくなっている現場。それによる孤立感、などなど。作品での描写は極端だけど、根底に流れているものを感じ取ると、自分が今置かれている状況とリンクする。ルールが作成されれば、現場では業務影響なければ許容する管理者も現実的で、これは閉塞感の中の救いみたいなものだろうか。
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物流を担う現場を舞台にしたプロレタリア文学。設定が面白い。登場人物の鬱屈とした感情、無機質で居心地の悪い空間、現代ではなさそうと思わされる警報や怒号。いいバランスだ。霧がかかった室内も不気味さを助長していた。現実と妄想が混濁する展開にもう少し捻りが欲しかったが、真面目な安さんが盗みをはたらくまでに至る描写が良かった。
単館系で上映している不気味な北欧ホラーのテイストで好み。
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霧に包まれた宅配所で働く主人公。ベルトコンベアーで運ばれてくる箱の中身を想像することで単純労働に耐えていたが、ある日箱の中身を見る機会が到来する。
芥川賞候補作。テーマの扱い方が上手くて題材も時流に即してるし面白い、巧みな現代の病理の詰め合わせ。六面体の内部に思いを馳せる人間の、ドロドロとした劣情を描くいびつな作品。混在する視点が1つの空間を暴こうとする試みと、コンベアに乗せられたような人間の労働を描く(110頁★3.8)
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薄霧たちこめる宅配所で仕分け作業する安は箱の中身を妄想することで単純作業の憂鬱を紛らせていた。
それがいつしか…
夢か現か、4人の視点が交錯し不条理な会話劇を観てるような、霧の中で迷い続けてるような、困惑するけどクセになる読み心地。
作品紹介を読んで面白そうだな、と思い読みはじめたら想像の斜め上を行く展開だった。
終盤の三行に「え?」と声が出た。
そういう、こと?と一瞬意味を掴みきった気になったけど、やっぱり霧の中、、まだ理解が追いついてないかも…?
デビュー作にして芥川賞候補作、、
今後の活躍が楽しみです。
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ワタクシが排除される労働の観点では担保されない個人の有り様を書いた小説と私は読みました。立ち込める霧のせいで見通しが悪く、横の繋がりが断ち切られている宅配所で打たれた点のように流れ作業に励んでいる様子は、一見するとその場に個人が存在するように感じられるのですが、束の間、仕組みの外へ出て俯瞰してみると、すぐに代わりが補充され、作業が滞りなく進んでいることに彼は気付く。突きつけられる、その幸不幸含めて代替可能の労働力として消費され続けてゆく彼らは私であり、私ではない私たちではないだろうか。閉塞感が漂う明瞭ではないストーリー展開で好き嫌いがハッキリ別れそうな作品ではありますが、令和でも、というより令和だからこそこういうプロレタリア文学を書く意味があるよなあ、と変な言い方にはなりますが嬉しくなりました。
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宅配所で働く4人の群像劇。労働に対する人間の快楽と嫌悪が濃霧の中で不気味に描かれる。ついに解放かと思いきや、気づけば思考はループして宅配所から出られなくなっている安の姿に、この作品の持つ恐ろしさを感じた。
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極めて閉じられた、荷物搬送の派遣の仕事とその空間。だんたんおかしくなっていく精神状態と、幻惑、そして単純作業を脳が拒否して盗みを働いてしまう。アドレナリンが出て高揚する感じが心地良くなり繰り返す。狂気の職場と、ひたすら流れていく箱。箱、箱。非常に短くも、きちんと盛り上がって、そしてどんよりと戻っていく波のように、優れたダークな表現力で読みながらぐいっと掴まれる感じだ。
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箱というモチーフ。そこにご都合主義とも言えるこれまたモチーフとしての霧の存在。3人称視点の物語で、3人称であるべき。現実と非現実が、霧に包まれるように混同していく。
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作品の構造が面白い。箱を閉鎖環境のメタファーとした労働小説。
宅配所で働く立場の違う4名の視点から、現代を生きる人々の心情を描く。この作品のタイトルは、この4名の箱から取ったものでしょう。
登場人物の1人である安は次々と流れてくる箱の中身を想像することで、退屈な作業をやり過ごしていた。そんな中、同僚の斉藤が嘔吐したことを起点として物語が動いていく。
箱や霧などのメタファーや三人称神視点の使い方などが面白く、読んでいて最後まで飽きませんでした。筆者の文藝賞受賞後のコメントを読むと、必死に考えて工夫して完成した作品だと分かります。
終わり方については個人的には好きですが、賛否あるところでしょうか。筆者の今後の作品も追っていきたいです。
設定 4.5
読みやすさ 4.0
表現力 4.0
統一感 4.5
読後感 4.5
★総合 4.5
Posted by ブクログ
誰かが見ている夢をずっと見せられているような…
一見普通に見えても人には誰にも言えない隠された欲望や事情を抱えている。それが薄霧立ち込める宅配所という舞台からも伝わってきました。
不気味な物語ですが、それが行き過ぎると滑稽にすら思えてきて登場人物達に不思議な愛着が湧いてくる、そんな小説でした。
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日常の些細な不幸や満たされなさを起因に生じるふとした出来心。一時の油断を発端にどんどん悪くなる境遇。誰にでも思い当たるちょっとした甘えや怠惰の責任を、誰しもが遭遇し得る形で当人が清算させられる物語。
突飛な展開は無く、ただ淡々と数人の人生の一端を適切な温度感で描写しており、私はとても好みに感じました。
当作品では四人の主要人物が登場し、似たような立場ではありつつもそれぞれが生活においての異なる苦悩を抱えています。そのどれもが可能性としては私も経験し得るであろうものとなっており、そこから先の立ちはだかるどの懲罰も見聞きしたことのある身近な不運或いは当然の帰結ばかりで、他人の困難として見過ごして良い話では無く他山の石として私も今後の振る舞いや人生設計について考えなければならないな……という感想を抱きました。日々の自己批判を怠らず、常々今の自分は正しいと思われる道を歩いているかの検閲を行わなければ、ふとした怠けから主要人物達と同じような展開が訪れてしまうかもしれないという危機感を与えてくれる、一種の自己啓発書のような含蓄に富んだ一作だと私は受け取りました。
また、創作であるにも関わらずひたすら写実的な現代の描写のみで物語を構成し、そして完成した作品が非常に面白いというのは新鮮な驚きがありましたね。
私と同様に悲哀や葛藤といった人間の脆さについての描写を好みとする方々にはとてもおすすめ出来る作品でした。
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4人の視点で宅配所の労働が書かれている
宅配所という箱、部屋、ロッカー、荷物、人間、全てがBOX。
夢と現実が相まったストーリーで、職場に立ち込める霧がその曖昧さを表現しているという事なのかな。
当初は仄暗い陰鬱とした皆の感情が、ハッピーエンドとなったと思いきや、それは夢で、また霧の立ち込める宅配所へと向かう。
短くて読みやすいけど、作者の伝えたいことがあまり分からなかった。
純文学は好きだし、小川さん推薦なので理解したかったが、私にはあまり分からず。
ただ、純文学で読みやすいというのは新人作家さんなのに素晴らしい力量なのだろう。
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濃霧立ち込める配達所で、次々流れてくる箱を仕分けする主人公。ある日、汚れた箱の詰め替えをしていて、荷物を一つポケットに入れてしまう…
湿っぽさと倦怠感がハンパない。妄想と現実がぐるぐる回って、これぞ純文学です。
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文藝賞受賞作。
やっぱり純文学はよく分からない。
途中夢のシーンが突如出てきて、そこからはどこまでが現実なのか捉えどころのないままラストまでいってしまった。
でも、霧にかこまれた宅配所という設定が分かりやすく、そこでの仕事の描写が興味深くもあり、わりと面白く読めた。
この手の軽作業は未経験なので、独特の空気感や閉鎖的な環境がなんだか薄気味悪かった。
4人の登場人物それぞれの思考回路の違いが分かりやすく、時々互いに接触し合うときに内面と外面の違いが垣間見えたりして面白かった。
最後がよく分からなかった。
一人ひとりの人間が集まって宅配所という大きな一つの集合体になって、それ自体に意志がある?みたいなことなんだろうか…。
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霧がたちこめる宅配所。
ここではたくさんの荷物がベルトコンベアに載せられてぐるぐると回っている。割り振られた番号の荷物をとりあげてレーンに載せかえるのが安(あん)たちバイトの仕事。
主な登場人物は四人。
ここでバイトをはじめて二年になる安。新人で次の派遣先が決まるまでのバイトの稲森。肺を患って余命いくばくもない妻の医療費の為に働くアル中の斉藤。オーバーワークでノイローゼ寸前の契約社員 神代。
機械的な動作、繰り返しの作業、狭窄していく視野、そして真っ白。集中力が脳からこぼれ落ちていき、自我があやふやになっていく。時間はひどく遅れていき、なんど時計を見ても、いっこうに過ぎる気配がない………
そういう労働の時間から逃れるために安は箱の中身を妄想して凌いでいた。
ある日 安は汚れた箱を取り替えるという神代を手伝って箱の中身を出した。そこには想像し得なかった奇妙な道具たちが並んでいた。安は反射的にその中のひとつを摑み取り神代の目を盗んで尻のポケットに滑り込ませた──。
100ページ程なのでサラッと読めるが解釈が難しい。
この話には “霧” がつきまとう。薄霧であったり濃霧であったり。
“霧”によって人間だけでなく全ての物事の輪郭が曖昧になっていくような…
それが こういう性質の仕事とあいまって なんともいえない空気感があった。
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終盤の休憩室、4人の緊迫したシーンが手に汗握った。
4人の視点の切り替わりをスムーズに行う手腕が見事だった。ミニマムな空間での群像劇が好きなので、とても楽しく読めた。
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濃霧に包まれた宅配場を舞台にしたお話。現代社会の労働と重なる部分があり、風刺的作品と捉えても良いのではないかと感じました。単純作業を繰り返す内に視野狭窄に陥り、自分の行動が実際に行なっているのか、夢の中なのか境界が歪んでいく描写が面白いと感じました。しかし、本書の内容は個人的に不明瞭な点が幾つかあり、一度読んだだけでは内容の真意を完全に理解しきれないと感じました。
100ページ余の作品なので読みやすく手に取りやすいと感じました。再読したいと思います。
Posted by ブクログ
箱を扱う仕事と、人生という箱のなかで生きている人間を重ねているように感じた。
人間も言ってしまえば箱なわけで。
その中には何が詰まっているのか。
色んな人の感想が気になる作品だった。
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うーん、難しい。現実なのか妄想なのか。その境目もあいまいで、結末もはっきりしません。
どこかの誰かに届けるはずの箱を、仕分ける仕事をする人たちの物語。これぞ純文学!といった拗らせた人たちが登場しますが、共感もできず理解ができませんでした。
Posted by ブクログ
除湿しろよがずっとついて回った
感想としてはよく分からないが本音だが読み終わってから数日間、薄く本著の事を考えている事に気がついた
何に引っ掛かっているのか言語化出来るほど噛み砕けてないが
Posted by ブクログ
宅配所で働く人の物語
誰のものかどんなものか分からないものを、最悪な労働条件の中、仕分けする労働者たち
やがて、荷物の中身が気になり出す
そして盗む
上司はそんな労働者に対して、「好きにして良いから、私の仕事を増やしてくれるな。つまりやり過ぎるな」と言う
その上司も過酷な労働を強いられている
現代社会の真理をついてるのかも知れない
正義を守れるのは余裕がある人だけなのだろうか?
Posted by ブクログ
2025/11/22 2
非正規で物流の仕分け作業をする4人。霧の立ちこめる現場は頭がぼーっと霧の中にいるようにもやもやすることを表現してるのかな。名前でなく番号で呼ばれるのは体も精神も病みそう。そんなに急がなくてもいいのに、と思うほどのスピードで届く商品はそんな思いで梱包されていたのかと申し訳ない気持ち。
Posted by ブクログ
濃霧に包まれた宅配所での話で、読み進めるうちに、私自身も物語の終わりまで濃霧の中にいるような感覚になる。
途中で四人の視点が急に切り替わることも、その印象を強めている。