あらすじ
宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描くベルトコンベア・サスペンス。第62回文藝賞受賞。
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Posted by ブクログ
題名の「box」に引っ張られているよう気もするが、安部公房的おもしろさがあり、中村文則的おもしろさがあった。不穏で尚且つ推進力のある小説。
「濃霧」に「ブレインフォグ」とフリガナがふってある言語感覚も好きだ。
「労働は返事をしない。献身の見返りは薄給で、いずれ体も思考も動かなくなって捨てられる。」p.26
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霧に包まれたような、モヤモヤとした不思議な読後感だった。
濃霧が立ち込める宅配所でライン作業をしている従業員視点の話。
視点がコロコロ変わるので、今誰の話だ?と一瞬なるのが読みにくく感じた。でもそこがこの本の不気味な雰囲気を作っているとも感じた。
箱を盗んでしまう従業員。箱の中身からドラマが生まれるかと思いきや、箱を盗むことそのものに陶酔してしまう。
他にも色々問題を抱えている人たち。
工場現場って、低学歴や年配、移民の集まりみたいにまとめられているけれど、蓋を開けるとその辺のそこそこの企業の会社員よりも、問題を抱えている、不謹慎な言い方をすればドラマがある人たちが多いのかもしれない。
本作はそういった人たちが、延々とループされるライン作業という仕事に気狂いしていく様子が描かれている。
なんか、工場勤務経験のある自分からしたら、いろいろと感じるものがある物語だった。
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むちゃくちゃ好き。
どこからが現実で、どこからが思考で、
どこまでが妄想で、どこまでが自分なのか。
霧のように輪郭がぼやけているのに、
不思議な引力でぐんぐん読み進めてしまう。
むっちゃ面白かった。
今の時代、「こんなことないでしょ」とも言えない
題材が真ん中にあって、とても現実感のある瞬間もあれば、妄想や思考が入り混じって白昼夢のような瞬間もあって。それがなんだかサスペンスっぽさに繋がってて続きが気になって一気読みしてしまった。
結局彼は今も霧の中なのか、
運び出すことに成功したのか。
あとカバーを外した時のダンボールのような装丁が粋。中表紙が蛍光色なのも、作中の表現をうまく拾っててグッジョブ。
Posted by ブクログ
好き、気持ち悪好き。
さとしと、さやかが推薦していたから購入。作品の雰囲気としては、小山田浩子の工場に近いような(あちらの方が、カオスというかディストピア感強めだけど)。
ラストもハッピーには終わらない感じがいいよね。さすが、芥川賞候補作品。
Posted by ブクログ
比嘉姉妹シリーズを読破中だが、あらすじを読んでどうしても気になる棘が出来てしまい、普段文庫ばかりで単行本は買わないのに、いてもたってもいられず買ってしまった。
この、なんというもやもや感。
文章はパキッとしていて読みやすいのに、霧がかかったように先が見えないの何だこれは。まさしく我々がいる霧の中の宅配所が読んでる感覚を具現化していて没入感がすごい。
そしたらまさにブレインフォグの話で、なんだやっぱりそうだったのかと思いつつ、え、この病気を体験させられたの?文章で?となって驚きを隠せないわけで。
これは賛否両論めっちゃ分かれるだろうけど、私は好きよりの好きで興奮冷めやらぬ感じ。こんな変なパワーに満ちた文が書ける人がいるんだなー。すごいなー。
なんて書いてる間に芥川賞候補だって。まぁそうなるか。面白いってか衝撃受けるもんな。
これでデビュー作ってのも恐ろしい。新作が楽しみになる作家さんがまた増えてしまったな。
Posted by ブクログ
ベルトコンベア、濃霧、単純作業、流れる箱箱箱箱。現実と妄想の境、未来も見えないその世界丸ごと箱詰めされているようであり、閉鎖感が不気味で息苦しい。
Posted by ブクログ
非常に上質な純文学!!こういう閉塞的でジメジメした薄気味悪い話がとても好き。
舞台は大手ネットショップの配送作業所で、ベルトコンベアで流れてくる大量の荷物を仕分けている人の話。
この本を読み終えると、A◯azonとか◯天で気軽にポチれなくなるかも…?
Posted by ブクログ
同じことを繰り返す日々の中で生きる4人それぞれの思考。何が現実で何が妄想かは分からない。正常なのか、狂っているのかも分からない。共感ができるというわけでもない。それでもなぜか物語の中に、霧の中に入り込んでしまう感覚。気づけば読み終わっていた。
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視点が次々と切り替わる構成がとにかく冴えていた。
登場人物ごとに温度も癖も違うのに、そのたび空気の色まで変わるようで、醍醐味があった。
同じ出来事でも、誰の目から見るかで意味が揺らぐ感じが面白く、全員の心情がほどけるようにわかっていく。
テンポのよさが裏目に出る場面もあって、感情の余韻がもう少しだけ深く沈んでくれたら完璧だったかもしれない。
視点の切り替えで物語が立体化していく感触が心地よく満足感があった。
Posted by ブクログ
薄霧の立ち込める宅配所で日々働く4人の物語。一人一人にスポットライトが当たり、何を考え、何を心に抱えて生きているかが描かれている。少しずつ、だけども確実に狂っていく4人を箱の外から覗いている感覚に陥った。安と同じく4人を覗くことをやめられなかった。
Posted by ブクログ
最悪な劣悪環境の中で、ベルトコンベアから
流れてくるダンボールに付いている番号を確認
して、指定のレーンに流す。
そんな単純作業を繰り返す安は、働きながら
箱の中身を妄想することで、作業に取り組んでいる。
いつしか妄想が、ある重大な事件を引き起こす
魔法となる。
私自身もこういったベルトコンベアの作業をしていたことがあるのだが、締め切った空間のような気がして、作業を繰り返していくうちに気持ちが
どんよりとしたことがあります。
Posted by ブクログ
宅配所で働く人の物語
誰のものかどんなものか分からないものを、最悪な労働条件の中、仕分けする労働者たち
やがて、荷物の中身が気になり出す
そして盗む
上司はそんな労働者に対して、「好きにして良いから、私の仕事を増やしてくれるな。つまりやり過ぎるな」と言う
その上司も過酷な労働を強いられている
現代社会の真理をついてるのかも知れない
正義を守れるのは余裕がある人だけなのだろうか?
Posted by ブクログ
2025/11/22 2
非正規で物流の仕分け作業をする4人。霧の立ちこめる現場は頭がぼーっと霧の中にいるようにもやもやすることを表現してるのかな。名前でなく番号で呼ばれるのは体も精神も病みそう。そんなに急がなくてもいいのに、と思うほどのスピードで届く商品はそんな思いで梱包されていたのかと申し訳ない気持ち。
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濃霧に包まれた宅配所での話で、読み進めるうちに、私自身も物語の終わりまで濃霧の中にいるような感覚になる。
途中で四人の視点が急に切り替わることも、その印象を強めている。
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霧の濃い宅配所って何なん?というのはひとまず置いておいて、結構面白かった。単純作業の仕事って、本当にしんどい。時間を埋めるために空想するの、分かる。コンビニ人間の主人公のように、自分がベルトコンベアの一部になってしまえれば楽なんだろうけどね
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村田沙耶香さん絶賛ということで読んでみたが、なるほど村田沙耶香さん絶賛だけある不気味さである。
今の気分もあってか、不気味さが少しつらく思えてしまったが、今後の作品も読んでみたいと感じた。
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宅配所の非正規社員。日々ロボットのように仕分け作業を続ける彼ら彼女らと、また、それを管理する仕事に追われる人々。終わることのないある意味不条理な日々と、それに無益に反抗を試みる個人を表現した物語と感じました。夢うつつの描写は引き込まれつつ不可思議な印象的で面白く感じました。読み方によっては意味わからん内容とも思えて、読み手次第とも思います。
星3つといたしました。
Posted by ブクログ
霧に覆われた宅配所、箱がただの荷物ではないという特殊な設定が斬新だった。
物語としては、登場人物の描き方がぼやっとしていて、誰が誰かわからなくなった。
終わり方も曖昧で、もう少し何かあってもよかったのかなと思った。
Posted by ブクログ
霧がずっと謎だったんだけど、最後、意識混濁を強める意味だったのかと思い至った。安(主人公)が見ているのは全て通勤バスの中の夢なのか、それとも単調で孤独な仕事のせいで日々、いや時間の境目すら曖昧模糊になるのか。
それから、安の想像力、箱の中身が見えないからこその彼のせっかくの想像力が、箱を開けて、しかも盗んで箱の一部を自分のものにしたことで、即物的なものしか思い描けなくなるくだりが面白かった。知ることの弊害ともいえそうで。
Posted by ブクログ
110ページほどの短い本なのにずっしり重い。
表紙のような奇抜な明るさは一切なく
濃霧の中ベルトコンベアに流れてくるBOXの
仕分け作業をする不穏な空気漂う話。
一歩も二歩も引いて、もっと冷静な目で見てみれば
毎日同じようなことを繰り返している生活は
みんなにも当てはまっていて
視野が狭くなってませんか?
大切なものを見過ごしてませんか?
ってことなのかな?
これだ!と断定しない物語の結末は
読み手によって捉え方が違うのも面白い。
第62回文藝賞受賞作
Posted by ブクログ
第62回文藝賞受賞作。
100ページほどで、非常に読みやすい。
ベルトコンベアーがグルグル回るように、視点が四人の人物の間を移り変わり、最後は霧のように終わる。
個人的には、学生時代のバイトを思い出した。
工場での立ちっぱなしの流れ作業、休憩時間は誰ともほとんど交流なく、とにかく時間が進まない。
耐えに耐えて、慣れてくると余計にキツくなる。
霧もなく、盗んでも単体では価値もなく、すぐにバレてクビにはなっていただろう。
軽作業は決して侮るべからず。
Posted by ブクログ
「BOX」を執拗に繰り返すタイトルは、陰鬱で湿気の多い宅配所の閉塞感、そこにある大量の箱の象徴なのでしょうか。本作は、宅配所で荷物の仕分け・管理に携わる4人を描く中編小説で、坂本湾さんのデビュー作にして文藝賞受賞作とのこと。
社会への鬱屈した思い、労働環境の糾弾を描いたものではありませんが、ベルトコンベアーの単純作業中の思考が、薄霧で人の輪郭も曖昧な環境と併せて、朦朧とした意識が徐々に人を変えていきます。
章立てもなく、急に4人の視点が切り替わり、特に終末では「私」の一人称が混在し、4人が閉塞感から解き放たれたのか、何事もなく元に戻ったのか、幻影を見ているようです。
本書を読みながら、梶井基次郎の『檸檬』を想起しました。「えたいの知れない不吉な塊」に悩む主人公が、レモンを丸善の棚に置き、爆弾が炸裂する空想をしながら店を出ていく…という話です。
イライラの現状を打破する手段として、癒しのレモンが爆弾に転化する妄想と、本作の箱からの盗品を箱であるロッカーに隠す快感は、ある意味病的で共通する匂いを感じました。
人間の醜悪な部分を暴いて剥き出しにする描写は、不気味ではありましたが引き込まれました。
カバーを外すと、本表紙は飾りっ気なしのクラフト色で、これって段ボール? そして見返しととびらの色はなんと、ショッキングピンク&イエロー! おぉ、これは著者から読み手へのギフトか?