あらすじ
宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描くベルトコンベア・サスペンス。第62回文藝賞受賞。
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Posted by ブクログ
芥川賞候補作の中で一番おもしろそうだったので読んだ。
四人の登場人物の視点が次々に入れ替わり、時に交わり、或いは全員の立場を冷笑的に俯瞰しながら、何も起こらないままの労働を続けている。彼ら彼女らは全員、それぞれに全く異なるバックグラウンドを持つ人間であるはずなのだが、彼らの個性は極限まで捨象され、誰ひとりに感情移入することも出来ない。
最初に読んだ時、属性に応じた一人称や口調の区切りが一切なされていないことに戸惑いを覚えた。登場人物全員の属性を把握して尚、今だれの視点に立っているのか分からなくなることがしばしば起こった。
彼らは本質的に何者でもないと同時にあらゆる人間であり、全く異なる存在でありながら全く同一の存在である。霧の中にある彼らの輪郭は常に漠然としているからこそ惹かれ、はっきりと自我を持った瞬間彼らへの興味は消え失せる。箱の中の荷物を覗くことと同じである。
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面白くてサクッと読み終わった。一時、物流業界を志望していた身としては、正直この領域で心身の健康をうまく保てる気がしなかった。単調な作業とオーバーワークは、人から意志を奪い取る。この環境で引き起こされる過ちは「魔が刺した」なんてものではなく、「そうすべきだから、そうした」というニュアンスの方がきっと近い。
終わり方も良かった。とある宅配場で異常が起きようと、変わらずどこかで荷物は集積され、どこかへと出荷されるべくベルトコンベアに真顔で流れてくる。労働、という行為に付随する地獄の1形態が、ひどく乾いた、それでいて妙に身体性を伴って提示される。
作者は日芸の劇作コース出身らしい。読んでいる最中立ち上がるイメージが、映画のようなパッと見現実っぽくみえるものではなく、明らかな作り物の舞台であったのはそれ故にか。
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これは誰かの、あなたの、わたしの頭の中で働いているということ。人生とは単純作業である。何かあるかもしれないし何かあった風になっているかもしれないし、若くは夢の中の出来事かもしれない。
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読み終わって、仕事してる時を思い出しました。単調な作業の中、現実か幻か分からなくなるような感覚。本当にあったことか夢の中のことなのか。ちょっと難しく、短いながらも読み応えがありました。
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第174回芥川賞候補作。地上波初放送が先日発表された映画『ラストマイル』よろしく大量の荷物を仕分ける宅配所の作業員たちを描いた物語。もし作業員に魔が差して荷物を盗んでしまったら?という一応のサスペンス設定はあるものの、建物内を濃霧が立ち込めた辺りから現実と虚構の境界がどんどん曖昧になり不気味な世界に誘われる。資本主義の下で心を殺して働く現代人を痛烈に批評する怪作。
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私と何歳も違わない方がこんなにも解像度高く、でも謎に溢れた小説を書けるのか!と尊敬。
ベルトコンベアで荷物の仕分けをする人たちの働く中での心の動き、もがき、葛藤...
色んなものが煮詰まって装丁のようになっていく話。
働き方を考え直すきっかけになったし、周りの人の人柄を考えて仕事選びをする大切さを教えてくれた1冊だなと感じた..!
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語り手の視点が唐突に入れ替わり、現実と妄想の境界がなくて混沌とした世界。ループして抜け出せない感覚に陥って困惑した。陰鬱で殺伐として湿度高めの空気感、息苦しかったけれどこの雰囲気は好きだ。安がモノに妄執する様に「銃」を思い出した。次作が楽しみ。
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気味悪い職場はデストピアかと思ったが、読んでいるうちに、これって現代の職場で感じるものそのものではないかと感じた。職場で何かあるとルールで縛られる閉塞感、正規と非正規の違い、仕事のやりがい、コミュニケーションがなくなっている現場。それによる孤立感、などなど。作品での描写は極端だけど、根底に流れているものを感じ取ると、自分が今置かれている状況とリンクする。ルールが作成されれば、現場では業務影響なければ許容する管理者も現実的で、これは閉塞感の中の救いみたいなものだろうか。
Posted by ブクログ
物流を担う現場を舞台にしたプロレタリア文学。設定が面白い。登場人物の鬱屈とした感情、無機質で居心地の悪い空間、現代ではなさそうと思わされる警報や怒号。いいバランスだ。霧がかかった室内も不気味さを助長していた。現実と妄想が混濁する展開にもう少し捻りが欲しかったが、真面目な安さんが盗みをはたらくまでに至る描写が良かった。
単館系で上映している不気味な北欧ホラーのテイストで好み。
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霧に包まれた宅配所で働く主人公。ベルトコンベアーで運ばれてくる箱の中身を想像することで単純労働に耐えていたが、ある日箱の中身を見る機会が到来する。
芥川賞候補作。テーマの扱い方が上手くて題材も時流に即してるし面白い、巧みな現代の病理の詰め合わせ。六面体の内部に思いを馳せる人間の、ドロドロとした劣情を描くいびつな作品。混在する視点が1つの空間を暴こうとする試みと、コンベアに乗せられたような人間の労働を描く(110頁★3.8)
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薄霧たちこめる宅配所で仕分け作業する安は箱の中身を妄想することで単純作業の憂鬱を紛らせていた。
それがいつしか…
夢か現か、4人の視点が交錯し不条理な会話劇を観てるような、霧の中で迷い続けてるような、困惑するけどクセになる読み心地。
作品紹介を読んで面白そうだな、と思い読みはじめたら想像の斜め上を行く展開だった。
終盤の三行に「え?」と声が出た。
そういう、こと?と一瞬意味を掴みきった気になったけど、やっぱり霧の中、、まだ理解が追いついてないかも…?
デビュー作にして芥川賞候補作、、
今後の活躍が楽しみです。
Posted by ブクログ
いまの環境に耐えられなくなったとき、バランスを取ろうとして何かに逃避してしまう、せざるを得なくなる感覚が、事象は違えど自分の過去の感覚を呼び戻してくる感じがしてドシっと重さを感じる読み心地でした。
Posted by ブクログ
芥川賞候補作
主語がいきなり変わって、あれ?となった。
箱の中身が気になり、中身を盗むことが常習化してしまうことに、なんでそんなことしちゃうの?って思ったけど、単純作業をずーっとしていると、人間どこか狂ってくるのかな?ハラハラしてすぐに読み終わってしまった。
Posted by ブクログ
読みやすいけど、いまいち理解し難かった。
人生で誰もが陥る悪い節目や、マイナスな感情を、宅配所に例えているのかもしれない。
宅配所で働く作業員たちが話の中心となっている。
そして上司や上の司令塔の人たちがあまり出てこない。
例えば、口だけで指示をしていたり、隠れて物事を行うなど。
それは現代社会そのものの構造なのかもしれない。
社長などの子供の優遇、外国人の差別(区別も然り)。
人間誰だって、しんどい時に何かを想像して上書きして、逃げ場を持って生きていかないと、死にぶち当たるのかも。
読む人によって感想が左右される作品だと思った。
Posted by ブクログ
芥川賞候補作は肌に合わないと分かっているのに、つい手に取ってしまった。
やっぱり、わけが分からない。
でも、ベルトコンベアから流れてくる荷物(箱)の対応を延々としている登場人物たちの姿が、まざまざと目に浮かんできた。
決して明るい職場ではない。むしろ、箱に嘔吐する奴がいれば、箱を盗む奴もいる。やばい職場だ。
でもそのヤバさが、この職場では当たり前のように思えてきてしまう。何でだろう。
まるで、箱と同様、登場人物たちも皆、職場にいる間は無機物なのではないかと疑えてきてしまう。
この小説、読んでて何が面白いんだろう。けなしている訳ではなく、素直にそう思った。
自分の知らない世界、自分の周りにいない人の生活を垣間見れるから、つい読み進めてしまうのだろうか。
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霧が立ち込める宅配場という謎設定。
レーンに流れてくる荷物をひたすら仕分けるという、単純化されたライン作業に、なんとかして刺激を与えようとする作業員達の淡々とした本能的な言動を読み進める感覚がフレッシュ。
ポップなジャケに対して、中身は湿度が高く闇は深め。ページ数は少なくとも濃厚である。
3.8点
Posted by ブクログ
霧に包まれた作業所のレーンに流れて来る荷物を別のレーンに載せるだけという作業を続ける安と稲森と斉藤、そして上司の神代。
霧に包まれ朦朧とする中で全てが混沌として狂っていく摩訶不思議な世界。
芥川賞候補、受賞は逃した。
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ちょっと薄気味悪い??宅配所なんで霧が??隣の人が見えないくらいの霧??謎めいた宅配所での箱、箱、箱に翻弄され狂わされた人々の話。読みやすいはずのページ数に苦戦!!
Posted by ブクログ
霧が立ち込める宅配所を舞台にベルトコンベアで運ばれる箱たちの仕分けをする人たちの仕事と妄想と窃盗の物語。気になる段ボール箱の中、覗き込みたい気持ちがわかる。
Posted by ブクログ
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「テープを引き剥がし、
蓋を開けて、覗き込みたい」
宅配所で箱を仕分けるうちに生じた、禁断の衝動ーー
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こちらも昨年読んでました。
買うか悩みましたが、
どうしても表紙のデザインが気になって。
終始不穏で、湿度が高くて。
あとちょっと気持ち悪いです。苦笑
登場人物の興奮?が上がる瞬間に、
読みながら私も興奮しててなんか疲れました。苦笑
カバーを外すと、
段ボールのようになっていて、
装丁も含めて面白い一冊でした。
Posted by ブクログ
誰かが見ている夢をずっと見せられているような…
一見普通に見えても人には誰にも言えない隠された欲望や事情を抱えている。それが薄霧立ち込める宅配所という舞台からも伝わってきました。
不気味な物語ですが、それが行き過ぎると滑稽にすら思えてきて登場人物達に不思議な愛着が湧いてくる、そんな小説でした。
Posted by ブクログ
日常の些細な不幸や満たされなさを起因に生じるふとした出来心。一時の油断を発端にどんどん悪くなる境遇。誰にでも思い当たるちょっとした甘えや怠惰の責任を、誰しもが遭遇し得る形で当人が清算させられる物語。
突飛な展開は無く、ただ淡々と数人の人生の一端を適切な温度感で描写しており、私はとても好みに感じました。
当作品では四人の主要人物が登場し、似たような立場ではありつつもそれぞれが生活においての異なる苦悩を抱えています。そのどれもが可能性としては私も経験し得るであろうものとなっており、そこから先の立ちはだかるどの懲罰も見聞きしたことのある身近な不運或いは当然の帰結ばかりで、他人の困難として見過ごして良い話では無く他山の石として私も今後の振る舞いや人生設計について考えなければならないな……という感想を抱きました。日々の自己批判を怠らず、常々今の自分は正しいと思われる道を歩いているかの検閲を行わなければ、ふとした怠けから主要人物達と同じような展開が訪れてしまうかもしれないという危機感を与えてくれる、一種の自己啓発書のような含蓄に富んだ一作だと私は受け取りました。
また、創作であるにも関わらずひたすら写実的な現代の描写のみで物語を構成し、そして完成した作品が非常に面白いというのは新鮮な驚きがありましたね。
私と同様に悲哀や葛藤といった人間の脆さについての描写を好みとする方々にはとてもおすすめ出来る作品でした。
Posted by ブクログ
4人の視点で宅配所の労働が書かれている
宅配所という箱、部屋、ロッカー、荷物、人間、全てがBOX。
夢と現実が相まったストーリーで、職場に立ち込める霧がその曖昧さを表現しているという事なのかな。
当初は仄暗い陰鬱とした皆の感情が、ハッピーエンドとなったと思いきや、それは夢で、また霧の立ち込める宅配所へと向かう。
短くて読みやすいけど、作者の伝えたいことがあまり分からなかった。
純文学は好きだし、小川さん推薦なので理解したかったが、私にはあまり分からず。
ただ、純文学で読みやすいというのは新人作家さんなのに素晴らしい力量なのだろう。
Posted by ブクログ
濃霧立ち込める配達所で、次々流れてくる箱を仕分けする主人公。ある日、汚れた箱の詰め替えをしていて、荷物を一つポケットに入れてしまう…
湿っぽさと倦怠感がハンパない。妄想と現実がぐるぐる回って、これぞ純文学です。
Posted by ブクログ
文藝賞受賞作。
やっぱり純文学はよく分からない。
途中夢のシーンが突如出てきて、そこからはどこまでが現実なのか捉えどころのないままラストまでいってしまった。
でも、霧にかこまれた宅配所という設定が分かりやすく、そこでの仕事の描写が興味深くもあり、わりと面白く読めた。
この手の軽作業は未経験なので、独特の空気感や閉鎖的な環境がなんだか薄気味悪かった。
4人の登場人物それぞれの思考回路の違いが分かりやすく、時々互いに接触し合うときに内面と外面の違いが垣間見えたりして面白かった。
最後がよく分からなかった。
一人ひとりの人間が集まって宅配所という大きな一つの集合体になって、それ自体に意志がある?みたいなことなんだろうか…。