あらすじ
宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描くベルトコンベア・サスペンス。第62回文藝賞受賞。
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Posted by ブクログ
なんだか読んでいて、いや〜な感じのするストーリーでした。舞台が「霧の立ち込める宅配所」というのがすでにゾッとしました。その宅配所で働く人たちのストーリーなのですが、とにかく話がありえないような展開で「職場ホラー」でした。
その宅配所に出てくる登場人物はほぼ全員が非正規社員で、宅配所に入ってくる荷物を窃盗し放題という実際にあったら怖い話で始まっていきます。宅配所は24時間やっていて日勤と夜勤ではスタッフが違って、夜勤ではベトナム人ばかりだそうでした。とにかく日勤夜勤全員が窃盗の容疑者という、自分はよく宅急便を使っているのですが、もし宅配所がこんな舞台だったら・・・と考えるとゾッとします。
だいぶ前に「おいしいごはんが食べられますように」という小説を読みました。その小説の帯に「職場ホラーNo.1」と書かれていましたが、あれも職場での怖い人間模様を書いていてゾッとしましたが、この小説も「職場ホラーNo.2」だと思っています。
ある意味面白かった作品でした。
Posted by ブクログ
純文学を純文学だと認識した上で読む初めての純文学。なんとなーく純文学って総じて陰鬱な雰囲気があって手を出しづらかったけど、読んでみるとちょっとクスリとする場面もあったし、おもしろかった。でもやっぱり陰鬱な印象は変わらない。それがダメってわけじゃもちろんないけど、初めからそうだとわかってるとなんか抵抗があるんだよね。
それぞれの心象風景を描くのがメインだからそういうふうに感じるのかなぁ?学のない私がいくら考えても詮無きことだけども。
霧に覆われた宅配所で働く人たちがそれぞれの心に抱える不安や衝動によって緩やか~に破滅に向かっていく感じが胃に棘を刺されているようで読んでて重苦しかったなー。終盤にみんな1度吹っ切れてはしゃいでたシーンはちょっと笑っちゃったけど。
今になって思うと宅配所を覆っていた霧は何かのメタファーだったんだろう。でも国語の成績があまりよろしくなかった私にはそれがなんなのかわからない。こういう作品がセンター試験(今は共通テストっていうんだっけ?)か何かの問題になって受験生を悩ませるんだね。
国語が得意な学生のみなさん、この作品の伝えんとするメッセージがおわかりになりましたら是非ワタクシにご一報ください。私はダメです。そういうの意識しちゃうと勉強みたいになって純粋に読書を楽しめなくなるので。だから私は他の学のある方に頼ることにします。この私こそ他力本願の権化。我ながらなんと情けないこと。
Posted by ブクログ
ある殺風景な地に立つ物流倉庫という一つの大きな箱の中で、生きるための疎外された配達の仕分けという労働に従事する人々が集められている。
日々どこからか来て、どこかへ運ばれる箱を仕分けている彼ら自身も人としての苦悩、あるいは欲望を秘めた箱である。陰鬱な大きな箱の中で、箱たち予期せず接触することで互いの梱包が解かれ、人としての本質が漏れ出していく。
やがて小さな箱はそれぞれの行き先へ放たれる。
むかしの「世にも」の映像でイメージしてしまうような、先の読めなさと不思議な余韻があった。
Posted by ブクログ
運ばれてくる箱を選別する部品のようになった4人の話。
物流倉庫という設定が面白そうだったので読んでみました。こういった場所に霧が立ち込めている、というのは人間関係を表してるよう。
芥川賞候補作ですがかなり読みやすくサクサク読み進められました。でも、全員の行動の理由が凡人の私でも理解できるという不可解な部分がなかったために受賞に至らなかったのかもしれない。
この作業、1日2時間ほどでしたが短期間、似たような仕事をしたことがあってノリノリでやれる日となんとかこなしていくだけの日がありました。箱は開けられる仕事だったんですが持ち上げたときに小さい箱なのに重い分銅が入っていたときに脳がバグってギョッとしたなぁ。
Posted by ブクログ
●感想
以下のことが著者の主張と受け取った。
宅配所という箱があり、宅配所の中に物理的なダンボール箱がある。社会という箱の中に会社という箱があり、その中に人という箱がある。
最後の小さな箱の中には様々違うものが入っているのに、外からは見えないし、中身のわからないまま、右から左へ流している。人との関わりも、同様である。人は、中身のわからないダンボールと言え、見た目は同じ、交換可能。だれも気にしない。
私たちを取り巻く労働環境は交換可能すぎて、自分の存在意義が見出せない。
コンビニ人間を思い出した。
社会の歯車としてきちんとやれていることに安心感を覚える人もいる。 BOX BOX BOX BOXはその対局に感じた。私自身は?どちらかというとコンビニ人間に近いかな。社会活動の中で交換可能でない人なんているのか?この人が働けなくなるとたちまち動かなくなる会社、なんてあるのだろうか。仕事に自分の存在意義を求めるのはある程度理解できるし大切だと思うが、いつかはできなくなる仕事に、そこまで依存すること自体怖いので、私は仕事ってそういうものでしょうと思ってしまった。
仕事以外の自分を空洞化しては虚しすぎる。
●本概要
デビュー作にして第174回芥川賞候補作! 第62回文藝賞受賞作。
宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描き、新時代の〈労働〉を暴くベルトコンベア・サスペンス。
「私」であることを必要とされない労働において、「私」を保ち続けることはいかにして可能か?時代の閉塞感をこれでもかと執拗に抉りだす圧巻のデビュー作。
\\小川哲氏、角田光代氏、村田沙耶香氏、推薦!//
こんなに不気味で心地の悪い小説は、高度な技術、強い決意、正確な批評眼がなければ書けない。とにかく周到でストイックな小説。
――小川哲(文藝賞 選考委員)
共感も感情移入もさせず、4人は人間性をも感じさせず、現実か妄想かもはやわからないのに、それでも「読ませる」力のある小説だった。
――角田光代(文藝賞 選考委員)
計算された不気味さの中を歩く仄暗い快楽の中にいつのまにか導かれていた。
次の作品世界を読みたいと感じる小説だった。
――村田沙耶香(文藝賞 選考委員)
薄霧のたちこめる宅配所。粛々とはたらく作業員たちのあいだで、レーンに流れてくる無数の荷物を仕分ける安(あん)。一日中ほどんど誰とも口をきかず、箱の中身を妄想することで単調な労働をやり過ごすうちに、箱の中身と妄想の「答え合わせ」をしたいという欲望が安を蝕んでいく。あるとき思いもよらない理由から、決して開けることの許されない箱の中身を覗きみることに成功すると、たしかにあったはずの箱が次々と消えていくようになってーー。
Posted by ブクログ
薄霧が蔓延する宅配所で、流れてくる箱の仕分け作業に追われる作業員は単純で朦朧とする労働の時間を凌ぐため箱の中身を妄想する内に開けて覗き込みたいという禁断の衝動を抱き始めるが——
昼間でありながら薄曇りで、じっとりとした湿度に包まれた空間。しっとりと濡れたようなコンクリート壁に囲まれた薄霧の蔓延する宅配所で、終わりのない仕分け作業が今日も続いている。
本作は、ベルトコンベアを流れる箱の中身に禁断の執着を抱いていく若手作業員の安を中心に、激務にすり減る神代、持病の痛みを抱える稲森、そして精神の限界を迎える斉藤といった登場人物たちの姿を描き出す。彼らを覆い尽くしているのは、どうしようもない倦怠感と厭世的な感情だ。それは決して特別なものではなく、誰もが日常のふとした瞬間に抱える共感しうる感情でもある。
しかし、この物語には明確なハイライトや劇的な危機感は存在しない。正常な感覚を持った人間であれば、すぐにでも別の仕事を探したり休職したりするはずの環境下で、彼らはなぜかその場から逃げ出さない、逃げ出せない。まるで目に見えない呪力に縛り付けられているかのように、誰もが宅配所という閉鎖空間にじっと留まり続けるのだ。
読者はその奇妙な光景を、モニター越しに対岸の火事を眺めるような距離感で追体験することになる。地に足のつかない夢の中を歩くような感覚。そこにあるのは、フィクション特有の完全な絵空事ではなく、生々しいまでの「リアルな非現実感」だ。渦中にいる人間から正常な判断力や選択肢を奪い去る、単調な労働と閉塞感の恐ろしさがそこにはある。
終盤、その呪縛が解けたかのように思える展開が訪れるが、果たしてそれは現実だったのか、それとも新たな錯覚だったのか。ページを閉じた後も、すっきりと目を覚ますことはできない。「こうすればいいのに」と冷静に振り返れる安全な場所にいながらにして、未だ悪夢のまどろみの中に引きずり込まれたままになる。逃げ場のないどんよりとした湿度と、終わらないコンベアの幻影が、心の奥底にねっとりと残り続けるような一冊である。
Posted by ブクログ
宅配便の仕分けセンターのようなところが舞台だが、何故かいつも霧が立ち込めている設定になっているところが怪しげ。
今は相当に機械化されているだろうが、少し前までは普通にあったんだろうな、こういう職場も。身体と心を分離する術がないと、精神が少しづつ歪んでいくのも分からなくはない。想像力を掻き立てられながら読み進めた。
しかし、主たる登場人物が後半一同に会したり、突然後日談として何故か全員がハッピーになっているなど、少し唐突感のある展開でイマイチ入り込めなかったところもあった。
Posted by ブクログ
抽象的にも具体的にも感じられた不思議な作品だった。
霧は、先の見えない人生に対する不安や恐怖を表しているように思えた。
ただ漠然と作業を繰り返す毎日。
これで本当に良いのだろうか?と思いつつも、自分自身の能力にある種の「諦め」のようなものを感じてしまい、現状を打開することを放棄してしまう。
そのような状況で安は魔が差してしまい、パンドラの箱を開けてしまったのか?
個人的に、ラストシーンで安だけがバッドエンドを迎えたように感じられたが、解釈が難しいところ。
箱は開けてみないと何が入っているのかわからない。
職場、人生も同じようなものだと思う。
何も見えない世界で、失敗しながら、苦しみながら、もがいて生きていくのが我々人間なのかもしれないと思った。