製造業ルーツにIT業界の構造改革を図る
SHIFTが開いた3つのブラックボックス
ルーツ
製造業における属人的な「職人技」を分解し、効率的な仕組みに再構築
>>>2カ月かかる金型を2日で作るプロセスをシステム化
ソフトウエアのテスト業務に適用
>>> 開発とテストの分業化、独自ツールの導入など
人的資本経営に適用
>>> 人材の可視化、能力開発、検定制度など
IT業界の構造改革
>>> エンジニアの育成、多重下請け構造の打破など
部下は評価の場で上長が自分をどうアピールしてくれているのか、年収をどう引き上げてくれるのか「毎回注視している」(SHIFTのある社員)。経営陣の目線も厳しい。プレゼンが曖昧だったり、単に資料を読み上げたりするだけでは、「『ちゃんと部下を見ているのか』と丹下さんに突っ込まれる」(中園部長)。上長は経営層と部下の両方から、給与について相当に強いプレッシャーを感じているのだ。もっとも、成果をあげてもらわなければ部下の給料だって上げられない。「(部下の)成果を上げられないからといってグリグリと責任を追及するような会社ではない。ただプレッシャーは常に働いている」(新井部長)。
AIを活用すれば、レジュメの内容や面接での候補者の発言を参照し、候補者の気持ちをくすぐる通知書を作ることができる。「『あなたの良かったところはここです」とか、『SHIFTはあなたにこんなキャリアパスを用意できます』といった文言があれば、候補者は『ここまで見てくれているのか』と驚いてくれる」(井戸マネージャ 1)。結果、定型文をただ送るのに比べ内定承諾率が5~10%程度高まるという。ただし、ここでもすべてをAI任せにはしておらず、人が最終チェックして通知書を仕上げる。
合理だけでは人は動かないから
「縁の下の力持ち賞」は、SHIFTの人への理解がどういうものかをよく表している。
これまで見てきた通り、成果主義・能力主義を軸にSHIFTは理詰めの人材戦略を展開してきた。2章では「自分の成果を数字で表せないのは諦めだ」という社員のコメントも取り上げた。その徹底ぶりに、「理屈として正しいのだとしても・・・・・・」と、 辟易とした方もきっといると思う。
ではSHIFTは定量的に測れる成果のみで人の価値を判断するような、ある種、 殺伐とした環境を目指しているのか。それはちょっと、というか、かなり違う。もちろん能力と、そしてなにより成果を重視はする。だからといって、可視化された成果ばかりを重視しているかというと、それも違う。
ポイントは、ここで言う成果や能力とは何か、という点にある。2章や3章でも触れた通り、SHIFTは数値化それ自体を目的にしているのではなく、数値化できない部分をはっきりさせるために、数値化を目指す。つまり「社員の価値は数字だけでは示せない」ことをSHIFTは分かっている。
数値で表せないとして、それを「ないもの」として扱っていいわけではない。数値では表せず、結果的に必ずしも人事評価の対象とはならないにしても、模範とすべき行動や役割を示す社員が少なからずいる。自分個人の成果にはつながらなくても、やっていることは目立たなくても、メンバーのために貢献をしている人こそ、実は組織のキーパーソンだったりする。それは多くの人が共感するところではないだろうか。
こうした姿勢や行動をたたえるために「縁の下の力持ち賞」をはじめとするアワードはある。成果を数字で表せる部分についてはどんどん数値化し、客観的に評価すればいい。上からの目線で拾える評価はどんどん拾い上げればいい。ただ数値で見えにくい定性的な行動や、上から目線では見落としがちな姿勢、役割についても人事施策の光を当て、会社として気を配っている姿勢を示す。