筑紫哲也のレビュー一覧
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自伝を書いてくれと頼まれた筑紫が考えたのが,「自分と出会ってきた人とのかかわりを書くことで,自分の生きてきた一部分を示していく」というやり方だった。筑紫の言葉を借りると「他人様に読んでもらうほどのことはやっていない。それでも強いて何かを書くとすれば,自分が出会ってきた他人様のことしかないだろう―というものだった」。
他人様との貴重な出会いを導いてくれたのは,ジャーナリストとしての指名と言うよりも,文字通り,好奇心の旺盛さのなせるわざのような気がする。多士済々な面々との出会いは,その度に筑紫の懐を大きく大きくしてくれたようだ。
こんな本を読むと,「わたしの出会ってきた人は,どんな人だったのだろうか」と気になってくる。名前だけでも挙げてみると,少なからず,今の自分を導いてくれたことに気づくだろう。
既に個人となった筑紫の旅の中間報告です。 -
Posted by ブクログ
筑紫哲也さんが遺しておきたい言葉があるということで始まった「若き友人たちへ」の連載だったが、たった2回で終了してしまった。その2回分と大学での講義テープを構成したものでこの本は成り立っている。
筑紫さんの人間愛が強く伝わり、日本という国を私たちの未来を真剣に心配していることがよくわかる。これがたった2回で終わってしまったことは非常に悲しいが、後のメッセージは個々が自分の言葉で後世に残して言ったらよいのだと思う。
日本国憲法には世界で例のないことがたくさんあるという話や映画の話、教育の話など興味深い話がたくさんあった。筑紫さんの危惧は2011年末でも危惧のままです。 -
Posted by ブクログ
筑紫さんは肺がんを患われ、2008年に他界されました。
BSで特集番組を見ていて、過去に読んだ本書を再読しました。
本書は最後の時期に早稲田大学、立命館大学で行われた講義録を元に若い世代の人たちに、筑紫さんが残したラストメッセージになってます。
本当であれば、「若い友人への手紙」として連載されるはずであった企画は、筑紫さんの病状により2回で終わっているそうです。
あなたは何をを考えなくてはならないか
あなたは何をやらねばならないか
あなたは何をやってはいけないのか
ジャーナリストの視点に立ち、世の中全体の論調が一つ方向で進んで行くときに、立ち止まって真実を自分の視点で考え直し、互いに論をなすことの重要性を繰り返し述べています。
憲法問題、日本人と愛国心、メディアとジャーナリズム、国家の行方情報化社会の中の知、講義の焦点は多岐に及びます。2008年の講義録ですので、その後世の中はリーマンショックと世界規模の景気後退に入りました。この前後で世の中の論調は新自由主義の支持から、景気後退後の再検討、再批判と180度転換しているようにも思います。
小泉チルドレン、小沢チルドレンではないですが、メディアが作り上げた虚像をそのまま信じてしまうリスクを、自分の頭で考え回避せよと論じられている気がします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ筑紫さんは朝日新聞社記者、朝日ジャーナルの編集長をを経て、長年にわたりTBS「筑紫哲也 NEWS23」のメインキャスターとして活躍なされました。2008年、他界しました。
「日本人とは何者か」。日本人とは、自分がなんであるかを、まるで説明しない民族です。そのなかで、ほとんど唯一例外的に外に向かって自己説明したのが、新渡戸稲造の「武士道」です。
「武士道」は1900年に英語で書かれたものです。奈良本辰也さんという著名な歴史学者の翻訳で読まれた方が多いと思うんですが、「自分とは何者か」を考えて武士道に辿り着くというプロセスが書かれた本です。
戦時中に当然この「武士道」は特別な読まれ方をしました。それがこの「武士道」という本についてまわったある種の宿命だったと言いましょうか。
これから死ににいくという時にどうしたらいいのかを考えるのに、この本は非常に大事だったわけです。戦争という極限の場で、自分の命を捧げるための精神的な拠り所にする本として使われ、戦後は忘れ去られていたんですが、今再び、また悪用が始まっているんじゃないか、という恐れを感じています、
この本が書かれた動機、「武士道」というものを考えてみようとした動機、ここ数年、この本が小さなブームになっている動機、そういうものには共通したものがある。つまり、「自分は何者か」という問いに対する答え探しです。
新渡戸は旧制一高の校長もやりました。その校長を辞める時に、サミュエル・ジャクソンの言葉を引用して辞任演説を締めくくっています。それは「愛国主義は悪党の最後の隠れ家である」というものです。これ、痛切に今も生きていると思います。
国を愛するということは、悪いことでもなんでもないと思っています。でもそれが地球環境の問題やいろんな問題を考えた時に過剰に出てくるのは、自分にとっても世界にとってもプラスにならない。愛国主義とは、そういう両刃の剣だということをきちんと認識しておいたほうがいいと思うのです。
本書は愛国主義、憲法改正、国家論、ジャーナリズム、教育など筑紫哲学というべき考えが書かれています。
筑紫氏を表す言葉として「死してこれほど喜ばれる人はいない」といわれることもあります。
これはある意味ではジャーナリストとして評価されているのではないでしょうか。
この言葉の真意がどうあれ、日本に本物のジャーナリストが少なくなったのは間違いないでしょうね。
今日、11月7日は筑紫さんの命日になります。
筑紫さんは、今の日本の現状を、天国でどんな事を思いながら見ているのだろう。