石井信介のレビュー一覧

  • 巨匠とマルガリータ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    翻訳はうまい
     なかなか難儀な作品で、前半は文学協会の編集長が謎の外国人(=悪魔)の予言どほり、路面電車に引かれて死にいたるドタバタで始まる。

     そこが魅力的にうつるかどうかは人しだいで、私はかういったサスペンス調が意外と平坦に感じられて、近代文学としてはかなり退屈な方だ。
     要するに、この小説は通俗仕立てで、悪魔はモスクワにあらはれるし、魔法を使ふし、巨匠とマルガリータの大恋愛も、街角でばったり出会った一目ぼれといふラヴロマンスもびっくりの粗雑さで、そこが問題だ。

     宗教小説の側面もあり、あひまあひまに、ナザレのイエスの挿話がさしはさまれるが、ただの小道具で、結局は第1部はパニック小説と

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    2025年11月06日