今野保のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
当たり前のように山中の道なき道を往き、時にありあわせの材料で小屋を掛け、幾日も歩き通して、人跡未踏の渓流で釣りを続けながら何週間も滞在する…失われてしまい二度と取り戻すことのできない、昭和の里山の原風景がここにあるのは、「アラシ」や「羆吼ゆる山」と同じく。
"バリ"どころではない、まさしく山に生きるとはどういうことかという"リアル"を目の当たりにし、軟弱な現代人は慄くばかり。
ノンコを始めとする兎や狐を狩る自立した犬たちや、アイヌの山人・清水沢造と羆の死闘等、これまた他作で見かけた題材が登場するのも嬉しい。
科学技術の進歩と工業の発展に伴い、大概の河川は支流に至るまで護岸がコンクリートで固められ、ごく限られた場所以外は車で横付けできるようになってしまったが、それで良かったんだと一片の疑念なく断言できる人は果たしてどれほどいるだろうか?
かつて確かにあった、今とは時空軸のスケールが異なっていた世界、それこそが、私たち人間という種の記憶に刻み込まれた理想郷なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
冒頭の"クロ"の巻から犬好き、動物好きとしては感情を揺さぶられ、読んでいるうちに自ずと保少年に感情移入、ともすれば同化してしまい、どっぷりと作中世界を味わうことになる。
そして、続いて登場するアラシ、タキ、ノンコも含め皆に、"これぞ犬本来の姿なのだろう"と深く頷かされる。
太古、人と犬との関係が始まった原初の絆がオリジナルの形で残るぎりぎりの時代であり、世の中だったと言えるのではないだろうか。
リードに繋がれるなどという発想すらなく、一旦山に遊びに行けば数日戻らないことも多々、本能の赴くまま山犬と交わり獣と争い、その一方で極めて高い知性を備え、必要とあらば命を賭して人を守る献身性を併せ持つ…巻末の解説で角幡唯介氏が述べられているように、現代の日本社会においてこのような形態で犬と暮らすことはもはや不可能ではあるが、ここで描かれる関係性こそが本質であり神髄なのだ、と強く感じざるを得ない。
人間社会の進化は果たして"進化"なのだろうか?
「かつて、そんな犬らしい犬たちが人と共に逞しく溌溂と生き抜いたことを、折りにふれて想起していただければ幸いである。」
「私がダムや林道のない日高に憧れるのと同じで、このような人と犬との関係ももはや夢幻となってしまった。
~(中略)
それは私たちが自然を喪ったからである。環境のなかにある自然だけでなく、心のなかにある自然を喪ったからである。」 -
Posted by ブクログ
大正から昭和初期にかけて、北海道の山で炭焼きを営む家で育った著者が、幼少期から大人になるまでに出会った犬たちのうちの4匹のエピソードを記す。
飼い主の家族にはよく従い、ヒグマや山犬たちにも立ち向かっていく。遠く離れた場所に預けられても、飼い主をしたって帰ってくる。信じられないような逸話が沢山。100年近く昔の山での生活は、想像するだけでも過酷。それでも、なぜか豊かさすら感じてしまうのはなぜだろう。
現代のように、愛玩犬として都会に暮らす犬と、自然の中を自由に駆け回る犬と、どちらが動物として らしく生きているのか、ちょっと考えてしまった。