作品一覧

  • ヤマケイ文庫 秘境釣行記
    4.5
    「激しさと穏やかさが、さも当然といった風に共存する山の姿を垣間見て、私は心の殻がはがれて、それがむき出しになるような戦慄(おののき)を感じていた。川の流ればかりではない。ここでは、魚も獣も人も、死と背中合わせに生きている。ちょっとした油断、そして恐らくは抗いようのない偶然が、それらの生を死へとすり替えてしまうのだ。」(本文より) 濃霧の中の山越え、沢を走る鉄砲水の恐怖、掴み取りできるほど大量のイワナ、一日で百匹を超すヤマベ釣り、暗闇にひそむヘビ・タカ・ヒグマ、目の前で宙を飛び滝壺に消えていった巨大イワナの勇姿――かつて北の奥地にあった圧倒的な自然を描き、「喰う・喰われる」の掟に従ってひしめきあう生命に心が震える。 解説/服部文祥 ■内容 1 母なる川よ 染退川へ/無言の教え/行く人、来る人/自然の戦い/ふたたび東の川へ/鱒の群れ/大きなヤマベ/ペンケホカイ/大水/迷い人 2 奥地へ 悪夢/三叉へ/岩上の危機/濃霧の山越え 3 燃ゆる渓 他流試合/巨大魚/渓流に帰る/雨の徳富川/黄金川 解説 服部文祥
  • ヤマケイ文庫 アラシ 奥地に生きた犬と人間の物語
    4.0
    「アラシ、どこへ行く」と呼びかける私の声に見向きもせず、アラシは沢に架かる木の一本橋を渡って対岸へ走り、たちまち視界から消え去った。 こんなことは今までのアラシにはなかった。”もしかして、このまま帰ってこないのではないか。” 私は何故とはなしにそう思った。 (本文「アラシ」より) 川で溺れかかった今野少年を救ったクロ(1)。 嵐の夜に迷い込んできた山犬・アラシとの絆と野生の掟に従い訪れる別れ(2)。 大熊をも倒したという勇猛果敢なタキの話(3)。 人と驚くほど意思を通じ合わせることのできたノンコのこと(4)。 北海道の美しく過酷な大自然の中でそれぞれの犬と刻まれる4つの物語。 野生みなぎるノンフィクションの名作。 解説/角幡唯介。 ■内容 1 クロ 鶏小屋の侵入者/野犬の群れ/夜の山道/旅立ち/別れのとき 2 アラシ 山火事/吹雪の夜/山犬の群れ/夜襲/身近な出来事/吹雪の道で/山へ帰る 3 タキ 働きもの/大きな足跡/毒矢/野辺送り 4 ノンコ 悲鳴/心を読む/習癖/野性の戦い/離散 解説 ■著者について 今野 保(こんの・たもつ) 1917年、北海道早来町生まれ。 奥地での製炭業を経て、1937年から26年間炭鉱に勤務。 その後、室蘭にて土木会社を設立。1984年に事故で右手を負傷するが、入院中に左手で文字を書く練習を行い、その後、執筆活動を始める。 著書に『渓流の想い出』『染退川追憶』(以上、私家版)、『アラシ―奥地に生きた犬と人間の物語』『羆吼ゆる山』『秘境釣行記』がある。
  • 羆吼ゆる山
    3.0
    北海道日高山脈――悠久の大自然に展開する人とヒグマとの対決の日々を、自らが生きた時代の証言として物語る、戦慄の回想録。〈解説〉宮原昭夫

ユーザーレビュー

  • ヤマケイ文庫 秘境釣行記

    Posted by ブクログ

    北海道の圧倒的な自然に、少しの荷物で臨む著者とその家族たち。
    釣りや釣れた魚の保存、小屋を作る時の手際がよく、読んでて気持ちがいい。

    特にP250「せせらぎの音。遠くで鳴く夜鳥の声。それらが耳に留まっては退き、ひときわ大きく耳についたとき、ふと目が覚めた。」が好きだった。
    自分自身もたまにキャンプに行くので、この一文でキャンプで夜に目が覚めた時の、感じがよく表現できてるなぁと思った。

    今はもう存在しないような景色を、文章を通して見せてもらったような気がした。

    0
    2025年08月08日
  • ヤマケイ文庫 アラシ 奥地に生きた犬と人間の物語

    Posted by ブクログ

    泣いた
    著者が子供頃から共に暮らした犬達
    こんなに賢く強く従順な尊い生き物と一緒に暮らせた事が羨ましい
    川で溺れそうになってる飼い主を助けるクロ
    野生の掟に従い別れるアラシ
    人の言葉が通じるノンコ
    著者が生涯飼った犬は21頭だがそのうちこの3頭は特別な犬だったらしい
    犬好きは是非

    0
    2024年10月08日
  • ヤマケイ文庫 秘境釣行記

    Posted by ブクログ

    当たり前のように山中の道なき道を往き、時にありあわせの材料で小屋を掛け、幾日も歩き通して、人跡未踏の渓流で釣りを続けながら何週間も滞在する…失われてしまい二度と取り戻すことのできない、昭和の里山の原風景がここにあるのは、「アラシ」や「羆吼ゆる山」と同じく。
    "バリ"どころではない、まさしく山に生きるとはどういうことかという"リアル"を目の当たりにし、軟弱な現代人は慄くばかり。
    ノンコを始めとする兎や狐を狩る自立した犬たちや、アイヌの山人・清水沢造と羆の死闘等、これまた他作で見かけた題材が登場するのも嬉しい。

    科学技術の進歩と工業の発展に伴い、大概の河川

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    2025年08月05日
  • ヤマケイ文庫 アラシ 奥地に生きた犬と人間の物語

    Posted by ブクログ

    冒頭の"クロ"の巻から犬好き、動物好きとしては感情を揺さぶられ、読んでいるうちに自ずと保少年に感情移入、ともすれば同化してしまい、どっぷりと作中世界を味わうことになる。
    そして、続いて登場するアラシ、タキ、ノンコも含め皆に、"これぞ犬本来の姿なのだろう"と深く頷かされる。
    太古、人と犬との関係が始まった原初の絆がオリジナルの形で残るぎりぎりの時代であり、世の中だったと言えるのではないだろうか。
    リードに繋がれるなどという発想すらなく、一旦山に遊びに行けば数日戻らないことも多々、本能の赴くまま山犬と交わり獣と争い、その一方で極めて高い知性を備え、必要とあら

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    2024年09月29日
  • ヤマケイ文庫 アラシ 奥地に生きた犬と人間の物語

    Posted by ブクログ

    大正から昭和初期にかけて、北海道の山で炭焼きを営む家で育った著者が、幼少期から大人になるまでに出会った犬たちのうちの4匹のエピソードを記す。
    飼い主の家族にはよく従い、ヒグマや山犬たちにも立ち向かっていく。遠く離れた場所に預けられても、飼い主をしたって帰ってくる。信じられないような逸話が沢山。100年近く昔の山での生活は、想像するだけでも過酷。それでも、なぜか豊かさすら感じてしまうのはなぜだろう。
    現代のように、愛玩犬として都会に暮らす犬と、自然の中を自由に駆け回る犬と、どちらが動物として らしく生きているのか、ちょっと考えてしまった。

    0
    2025年08月11日

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