超★5 元スパイから託された歴史の裏を書いた手記… とろとろ濃密度のスパイ小説 #スパイたちの遺灰
■あらすじ
マックス・アーチャーは諜報の歴史を研究している学者、彼のもとにスカーレット・キングと名乗る女性から連絡が来る。彼女は高齢であるものの、かつては国外の諜報機関MI6のエージェント。長きにわたる活動の手記を出版するためにマックスへ依頼する。彼は秘密を暴露する違法行為と分かっているが、報酬と名声に目がくらみ苦慮するのだった… 一方、国内の諜報機関であるMI5では、長官代理のソールが二人の行動に目を付け始めていた。
■きっと読みたくなるレビュー
おもろい!超★5
ぐいぐい惹きつけるストーリーテリング、読みだしたら止まりません! 決して派手に展開するわけではなく、登場人物がやり取りしていく中で謎や隠された関係性を解き明かしていく。物語が二転三転するんじゃなくて、物語の深みがどんどん増してくるって感じ。
本作は諜報学者であるマックスが主人公。彼は妻に愛想をつかれ離婚したばかりで、学者の仕事もイマイチ冴えない。そんな彼のもとに伝説のスパイであるスカーレットから呼び出され、マジモンの世界に足を踏み入れてしまうところから始まる。
最初は疑心暗鬼だったマックスも協力することになるのだが、序盤でスカーレットは殺害されてしまう。容疑者となってしまったマックスは、逃げのびながらも歴史の裏側を紐解いていかなくなるという筋立てです。
並行してスカーレットの手記が語られ、過去どんな陰謀があったのか提示されていき、追手であるソールの活動、MI5内での振る舞いも読みどころだったりします。
ストーリーをざっと書くだけでもトロトロの濃厚度。これ本当にあった話なのかも…と誤解してしまうほど凝縮されたスパイ小説なんです。
また登場人物ひとりひとりに味が出てるところも素晴らしい。特に輝いてるのは女性たち、あまりの狡猾さに痺れっぱなしですよ。そして怖い。
スカーレット:元MI6エージェント
最初っからヤバそうなおばあちゃんなんですが、手記の内容から過去を知ると恐ろしさが更に倍ですね。これだけ度胸があって、信念も強い人じゃないとエージェントなんて務まらないだろうな…
クレオ:スカーレットの助手
エマ:マックスの元妻
この二人も大好き。食えない女性たちでマックスじゃ全く太刀打ちできてない、完全に手玉に取られてますね。
また本作は諜報機関に関する情報の品質も高いんです。イギリスのMI5とMI6、他にも様々な国の諜報機関や政治家の名前が登場する。もちろん架空の話であることは分かってますが、マジモンかと思ってしまうほどリアリティに溢れてるんですよね。
物語は終盤に近づくと、いよいよ登場人物たちの距離も近づいてくる。果たしてマックスは捕まってしまうのか、手記は世の中に出てしまうのか、そして手記の背景は…
読み応えもたっぷりで、スケールのデカさに何度も目ん玉飛び出た作品でした。今年読んでおきたいミステリーの一冊だと思います!
■ぜっさん推しポイント
スパイものって、超クールな主人公(トム・クルーズみたいな)が多いと思うんですが、本作の主人公マックスは、めっちゃ地味ってところがイイ!
男って奴は、いざとなると肝っ玉が小さいし、変な拘りやプライドがあったりするんですよね(私も含めて)。そんな彼が一生に一回の大仕事に対し、どう向き合っていくかってところが激熱な読みどころでした。
年齢なんて関係ないんです。自身の強みをどう生かすか、そして前向きに歩くってことが大切なんですよね。