灰谷魚のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
文体が軽やかでシティポップを聴いているような感覚になる。けれど物語は純文学みもあって、SFなのに村上春樹を読んだような不思議な読後感。会話とか地の文に出てくる例えがめっちゃ面白い。
一番好きだったのは『純粋個性批判』。
主人公・私は高校時代を回想する。ひねくれていたせいで友達がいなかった。誰かの親友になりたいくせに、周囲の全ての人間を軽蔑していた。尊敬すべき人物はネットや芸能や文学やアートの世界にしか存在せず、皮肉と冷笑を繰り返しながら塞ぎ込んで過ごしていた。唯一の友達、ユカリと過ごす時間以外は。
ユカリとあらゆるものの悪口を言い合った。二人はありとあらゆる嫌いなものが似ていた。あれもクソ -
Posted by ブクログ
ネタバレ分かり合えなさが愛おしいのはなんでなんだろう。と考える。理解しようともがくみじめさが、断絶に打ちひしがれる後ろ姿が美しいと感じるからだろうか。
どうだろう、もっと切実なものなんじゃないか。
私たちは互いを全て理解することは決してできない。だって自分自身の欲求すら理解できていないのに、相手に真に寄り添うことなんてどうしたら可能なんだろう。
だから、ひとりでぼんやりとしているよりも、誰かと一緒にいる時の方が寂しい気持ちになる。
それでも、あなたとこうして向き合っていたい。
そんな孤独を、あまりにも瑞々しい文章で、あらゆる角度で書き出しているのがこの短編集だ。
痛みも苦しさも後悔も、その鮮烈さを保