笠間直穂子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ年初の新聞書評(日経新聞)で知り興味を持った。
秩父へ移り住んだ文学者(大学教授)のつづる田舎暮らし、地方と都会の対比のライトエッセイか? くらいのつもりで手に取ってみたが、いやいやどうして、なかなか骨太の一冊だった。
書評子は、
「決して大きな声ではない。だが、私たちは他人の注意を引こうとして声を張りあげる本ばかり読んでいるのではないか。著者の、静かな語りに導かれながらそう思った」
と書くが、静かな語り口ながらも、その主張は力強いし、田舎暮らしへの不理解、都会者の上から目線に物申す口調、論旨には一本筋が通っていて痛快でさえある。
著者はフランス文学者。マリー・ンディアイやC・F -
Posted by ブクログ
ネタバレフランス文学研究者である著者の秩父への引っ越し、そこでの暮らしのエッセイ。秩父や庭の豊かな動植物の話、文学の話が印象的でちょっと梨木香歩さんに似ているが、繊細なようで芯がきちっと通っていて、梨木さんよりは文章が硬質で揺らぎがない感じがする。すっすっと線を引いていくような美しい文章の流れが読みやすく、心にしみ込んでくるようだ。
絲山さんの小説のことを書いているくだりの「微細な変化が内面に生じ」、わだかまりが反転する、という一連の表現には唸ってしまった。あと、「いきている山」を引用していたが、これは私も大好きな本なのでとても嬉しかった。山との交歓をひたすら楽しむナン・シェパードの山での過ごし方は