◆かつて「沢山の中から選べることは」豊かさの象徴だった。
今は物が溢れすぎている。
コンビニでお茶を選ぶとき、どれを選んでもある程度の味は保証されてるという状況なのに、ほうじ茶、麦茶、ウーロン茶、ジャスミン茶、紅茶。さらにそれぞれのメーカーやブランドの違い。糖分や、添加物の有無、健康促進か、温かいか冷たいかと、判断材料が際限なく増えてきていて、選択肢が多い。お茶選ぶだけなのにその中の1つを選ぶためにどれだけ考えさせるのか。
日常の些細な選択も、人生最大の決断も、何かを選ぶとき、事前に口コミや評判をチェックするのが当たり前になった。
裏を返せば、それだけ膨大や情報を処理しなければならなくなった。徐々に「選ぶこと」が「煩わしいこと」に変わり始めている。
◆選ばれるハードル
選択肢が増え続けると、どれを選んでも満足できない気がしてしまう。「もっと良い選択肢があるのでは?」という後悔が生まれやすい。
◆選択するときの思考
人々は沢山の選択肢の中から最高の1品を選びたいわけではない。「選ぶストレス」から解放されたいのだ。
◆現代のマーケティング
最大の脅威は同業他社ではなく「情報競合」だ。世界で生成、取得、複製、消費されるデータを比較すると、2010年から2020年にかけて32倍に増加している。
消費者は日々凄まじいほどの情報を吟味し、選択しなくてはいけなくなった。
そんな情報の海から自分を見つけてもらうには目立つしかないと、あらゆる個人や企業は目立つための情報を発信してきた。
しかし、結局その情報も消費者からすると判断材料になってしまって、選択するのが億劫になってしまい、結局いつものやつを選んでしまう。
選ばれるための情報が、選ばれない原因になってしまうのだ。
◆目立ちたい奴らの中で目立つには
例えばお店のPOP。
消費者に商品を気づいて欲しいから目立つための目立つ色、赤色のPOPを作成して、所狭しと並べる。
しかしそんな赤いPOPだらけの商品棚でも、消費者は気づかずに通り過ぎてしまうのだ。
赤は単体では目立つが、赤だらけの中から1つだけを見つけることはできない。
目立つためには、競合他社ではない、他の情報が何を発信しているかを相対的に見る必要がある。
本当に目立たせないなら、絶対的な赤ではない。赤の中で目立つ色、緑色をPOPにするのが正解だ。
会議では目立たなかった緑色単体も、赤の中に紛れると目立つことができる。
◆目立つとは
絶対的な特性ではなく、周囲との関係性の中で生まれる相対的な現象なのだ
◆売上を伸ばすなら選択肢を減らす
「お客さんを選ぶストレスから解放してあげること」が生存戦略となる。
「これを選べば間違いない」という安心感や「自分にはこれがあっている」という納得感を、短時間で提供できる仕組みが必要だ。
例えば、「最初はこれから」といった、入門編を用意し借りすることで検討のハードルを下げられる。
◆共感は不要
「全ての人が共感できること」というのは、大多数のあるあると言い換えられる。全ての人に好かれようとすると、エゴがなく、特筆すべき点もないありがちな物が出来上がってしまう。
例えば、町の小さな書店が「本で一人一人の明日が輝く」とビジョンを設定したとき、これはビッグワードのオンパレードだ。誰がこの言葉を見て「自分のことだ」と思うだろうか。広い範囲に目の広い網を投げたら、確かに見てもらう人は増えるだろうが、そんな網に誰も引っかからない。
それよりも「本で女性ならではなのモヤモヤをスッキリさせる」や「本をきっかけに起業する人が地域から年間100人生まれる」などと表現した方が「実現したい未来像」として明確で、応援してくれる人は増えるだろう。
万人の共感はいらない。狭い範囲でも目が細かい網ならば刺さった人は応援してくれる。
◆失敗は資産
現代では「他人によく思われたいから失敗を隠す」のではなく「他人によく思われたいから失敗を晒す」という発想に切り替える必要がある。
失敗の後悔は、あなたのブランドに「人間味」という強力な特性を与える。