長い月日を経て、かつて同じ大学の英文学部の文芸団体「レイヴン・ソサイエティ」で物書きとしての腕を磨きあった旧友達が再び集う。
きっかけは師の没後25周年を偲ぶ式典。
当初来る予定のなかった友人達の中心人物レインから突如届いた参加の意。
学校そばにある″氷の洞窟″で古い人骨が発見されたことに端を発しているとしか思えない。
表面的な懐かしさもそこそこに、各自に去来する過去の秘密、レインと交わした誓約に思いが巡るそわそわ感。
「もし彼女の死体が発見されたら、私たちはこここに戻ってきて、全員で目前の問題に対処する」。。。
旧友邂逅に潜む語られない秘密、創作を学ぶ場を下地にした物語展開、海外ミステリあるある全開な設定なんだけど、やっぱり惹きつけられる。
現在と過去を行きつ戻りつしながら語られる、現在地点から見たときの友人達との関係性のギャップ、いびつさが、この隙間を埋めるはずである秘密を際立たせ、一体何があったのかとどんどんページが進む。
語り手であるエレン(レインの親友)の人柄が癖なく誠実で好感が持てるのも、この王道な展開にして飽きを感じさせずに物語に没入させてくれることに効いているのだと思う。
何と言っても当の嵐の中心、レインの不在。
突然の出席の意が届いた後は、ぱったりと音信不通。
待てど暮らせど現れる気配はない。
外は猛烈な吹雪が始まっており、立ち往生している可能性もあるという現実的な説明もあるにはあるが、やはり何か魂胆めいたものを想像してしまう面々の内面に巣食う不安の表し方が秀逸。
話の筋は全く違うけど、この「不在の力」は『レベッカ』を思い起こさせるものがあった。
終盤のクリスティオマージュ的な展開になってからは、ばたつきが多く逆にちょっとありきたり感の方が優ってしまったが全体として中々に面白かった。
デビュー作『乙女の湖』以来、22年ぶりの邦訳とのこと。
解説三橋さんによれば、当時は『飛蝗の農場』や『半身』が席巻していて(懐かしい!!)埋もれてしまったとの見解だが、本国ではその後2度のエドガー賞(メアリ・ヒギンズ・クラーク賞)を受賞しているサスペンス作家としての実力者。
今後、過去作の邦訳も期待な作家さん。