アグラヤ・ヴェテラニーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
独裁者によって生活ができなくなった主人公の家族が、国外へ脱出しサーカスの団員として生活をする半生を書いたもの。
社会的な弾圧と家族の中での個々との共存、サーカスという世界、信仰によって造らせた精神がとても危ういと感じる。
子どもという狭い世界での知識による外と内との折り合いの付け方がアンバランスすぎて、環境のせいではあるものの崩れることをこんなにも予感させることはない。
家族をものとして扱う父親や、恐怖で支配し自分で作った世界に押し込める母親、対になる姉、存在することで自分の価値だと思い込むペット、今でいう毒親に育てられ大きく育った主人公の、願いなどなくやっぱりねとなる終わりに向けて読むことを -
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Posted by ブクログ
どれが実体験でどれが小説なのかは分からないけれど、小説であって欲しいところが全て実体験のような気がする。両親がルーマニアを出たことは良かったのかも知れない。ずっと不幸の霧の中を生き抜いていくわけだけど、一度も食べるものがないとか衣服靴がないなどの描写はない。とはいえ食料や衣服があれば幸せかといえば、おおむねそうではあるけれど絶対ではない。
ルーマニアからの避難民、サーカスで各国を転々とする毎日。これだけでも子供にとって安心出来る場所はない。その上に母親が死と隣り合わせの曲芸を毎日やっているとなると子供が不安定な精神状態になるのは当たり前。その様子はロリコンだけでなく全ての男達にとって好都合だっ -
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Posted by ブクログ
どこまでが自伝で、どこまで妄想なのか創作なのか、よくわからない不思議な世界に連れ込まれる。
元靴職人と揶揄されるチャウシェスク政権下のルーマニアでの悲惨な生活は繰り返し語られ、豊かな生活を求めて西側に脱出しても旅回りサーカスの一員であるロマでは難民の暮らししかできない。
にもかかわらずルーマニアに残った親戚縁者からは西側で富裕な生活をしていると信じ込まれて繰り返し支援を求められる。
父母は離婚し、映画スターになる夢も実現しない。
という陰々滅々な世界が延々と続いて、後半では少々うんざりする。
この本の訳者あとがきで驚いたのは、韓国文学の紹介で八面六臂の活躍をされている斉藤真理子さんが翻訳され -
Posted by ブクログ
ひと目見ていま読むべき作品だと手に取って読んだものの、衝撃すぎてなかなか感想がまとまらなかった。
抽象画を言葉にしたらこうなるのではないかという、散文詩のような形式でつづられていくのは、時代と、場所と、家族に翻弄された一人の少女の内側からの視点。
読んでいる方が、おかゆの中で煮られているような感覚を覚えていく。
どこからどこまでが作者の投影なのかはわからないものの、まだ若くして亡くなられたということにどこか納得してしまった。
キャンバスに叩きつけるような言葉を吐き出す感性の持ち主が、このような世界で生きていかざるをえなかった人生の激しさを思わずにいられなかった。 -
Posted by ブクログ
社会主義国ルーマニアから亡命してきた一家。
ロクデナシでピエロの父。曲芸師の母。父に溺愛され、その関係は家族を超えている姉。そして踊り子の私の一家が、放浪生活をしながらサーカスで何とかお金を稼いでいく。
作者のアグラヤ・ヴァテラニーは39歳で亡くなっており、本作は37歳のときに出版された作品。
作者自身がルーマニア生まれで5歳のときに亡命して、77年にスイスのチューリッヒに定住するまでサーカスの興行をしながら生活していたらしい。
余白が多く、作品自体とても短い。だが、読むのは結構苦しかった。
タイトルからすでに何だこれ、となるのだが常に不穏な気配がずっと張りついている作品で、ときには禍々し -
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