愛野史香のレビュー一覧
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とても良かった……。
アート小説であり、お仕事小説でもある。
苦悩の先にたどり着いたラストは清々しく、温かな充足感に満たされました。今、心地よい疲労感に包まれています。
「古典模写」「古典修復」の世界を描いた作品。
読みはじめてすぐ、新たな「知」の扉を開いた感覚。良作に出会えたときの確信にも似た予感を早くもひしひしと感じていました。
休学して引きこもっていた主人公の生活は、従兄に頼み事をされた日を境に一変!
大学の保存修復日本画研究室に通い、模写制作メンバー二人と一緒に模写に取り組むことになります。
その過程は想像以上に大変で、描き始めるまでも描き始めてからも、彼らのひたむきで真摯な姿勢 -
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ネタバレ自分は青春小説はこれまであまり読んできてなくて、今回この本を読んで、「音楽は自分一人で全てできるものじゃなく、周りの人たちの協力によって初めてできる」ということを改めて思い知らされました。
主人公の雨宮大夢は苦しい家庭環境の中でチェロと元世界的に有名だったチェリストと出会い、それからその人のことを先生と呼び、先生の助言でバレーボール部に入って仲間ができ、高校生活を楽しく謳歌できたと思います。高校卒業してからも周りとの縁が切れることはなく、先生はクロアチアに帰って自分の名がついた国際コンクールを主催してくれてそれに雨宮大夢を遠回しに読んだって自分で勝手に思ってます。コンクールだから当然ライバ -
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ネタバレ個人的にとても好きなお話でした。
パッと出てきたのがコミックにはなってしまいますが、「この音とまれ!」や「4月は君の嘘」などが好きな人は、本作も好きなのではないかなと思いました。
先生と繋がっているため、だったチェロは
いつの間にか大夢自身の夢へと変わっていく。
介護士になると決めていた大夢が、
自らの選び掴み取っていく様は胸にグッときました。
先生だけではなく、父親との関係性や兄弟子との出会いにより、大夢の視野がパァーーーっと広がっていくのを目の当たりにした気分。
読んでる自分も前向きに明るくなっていく作品で、本当に素敵でした。
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角川春樹小説賞受賞作品だそうです。
この前情報を受け取ってしまっていたのでバイアスがかかっているのですが…
とても良かったです。美大生の主人公のウジウジした心に模写を通して風が吹いて、共に模写をする仲間と成長していく様がとても爽やかでした。
第三章、襖絵の謎に迫る場面がこの作品の中でも1番印象的でした。著者は薬学部卒とのことでしたが、この場面の土師の言葉には実は美大生だったのでは?というくらいの実感があります。
「真君みたいに『何者にもなれないノイローゼ』になってる人を、何人も見たよ。そういう未練や執着は、熱に変換できなければ、何の役にも立たない。それどころか、重たくなって筆を折らせる。だ -
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古典絵画の模写や修復、自然科学調査等の日本画研究にのめり込んでいた父は、異国の地で亡くなったが、真は美大の油画科を休学して引きこもっていた。
そんな真を修復を仕事にしている従兄の凛太郎が、襖絵の復元模写制作のメンバーとして参加させる。
大学の修士二年の土師と一年の蔡と一緒に十二面の花鳥図を完成させなければならないが、現存するのは九面と切り貼りされた一部のみ。
狩野探幽の血縁であり、父が狩野派を破門された雪信の娘・平野雪香が描いた襖絵を復元できるのか…
真が引きこもっていた心情…価値がないと烙印をおされて何者にもなれない辛さに苦しんでいたことなどを乗り越えたのは、いっしょに頑張った二人が -
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人生に行き詰まりを感じる美大生が、襖絵の復元模写に取り組む物語でした。
日本画についてほとんど知らなかった私にとって、描かれ方や歴史を知れる点も新鮮でした。
主人公は「何者にもなれない自分」に囚われていましたが、復元模写を通じて自分や人、そして過去の絵師と向き合っていきます。
特に、ひとつのことに没頭する感覚を「命の輪郭が輝く瞬間」と表現していたのが印象的で、最後にその感覚を得た主人公に共感し、思わず胸が熱くなりました。
模写の技法的な説明はやや難しかったですが、その分、最後に清々しく終わる展開が心地よく、美しい読後感を残してくれる一冊でした。 -
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ネタバレ音楽って本当に深くて面白いなと改めて感じた。
大夢が演奏するときのどんどんと膨らんでいく曲のイメージが目の前に広がっていき、読んでいるだけでも胸が高鳴る。その人にしか生み出せない音楽がある。答えがないからこそ、音楽は難しくて面白い。今まで音楽が作られた時代背景や作曲家の心情などについてあまり学んだことがなかったけれど、この本を読んでとても興味を持った。背景を思い描きながら聴くと、同じ音楽も全然違うように聴くことができる。
ふとした出会いが人生を変える。音楽を通して、色々な出会いが重なって、大夢の世界が広がっていく。幸せも苦しさも味わいながら、必死に努力して、時にもがきながらも、前を向いて生き