小沢慧一のレビュー一覧
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南海トラフ地震は30年以内に70~80%の確率で起こるー政府の地震本部が出した数字に疑問を抱き、根拠とした数字があいまいなことを、専門家に聞き、論文を調べ、古文書を当たって確認して書かれた本だ。その問題点は、南海トラフ地震の確率が高いとされる分、他の地域では地震が起きにくいと誤解されることである。ところが、この40年で起きた大地震を調べると、すべて政府の「全国地震動予測地図」から外れたところで起きている。つまり、地震の予知や予測はできないということだ。それでも、予算獲得のために地震の確率の発表は続けられている。さっさとやめて、全国いつどこで地震が起きるかわからないことを前提に備えるしかないだろ
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Posted by ブクログ
「今後30年以内に南海トラフ地震が起こる確率は80%」
我々は政府、地震学者の言うこの数字を信じているわけだが、
この本は、東京新聞記者のこの著者は、その数字が欺瞞であること、
水増しされたものであることを、「はじめに」に記し、
そのあと、200頁をかけてその根拠を論理だてて説明している。
①他のエリアは単純平均モデルで予測しているのに対し、
南海トラフだけ「時間予測モデル」が採用されていること
②上記については多くの地震学者が疑問を持ったが、トップの独断で
決められたことが議事録から明らかなこと
③さらにその時間予測モデルですら、その根拠となった過去の文献が、
信用できる時期、数値で -
Posted by ブクログ
南海トラフ地震は30年以内に7~80%の確率で起こると言われ続け、世間はそのように信じていたが、実はその確率の算定は不確定な論文を根拠にしていたことがわかる。
中日新聞・東京新聞の記者が疑問を持ち、その時の学者を丹念に取材し、元となる論文が一本の古文書を元にしていることを突き止めていく。その古文書も計測方法を明確に記したわけでもなく、甚だあいまいなものであった。もちろん、古文書の作者は、南海トラフの根拠となることを想定して書いたわけではないので、まったく罪はない。
数多くのデータを集め、その分析から求めていくのが科学であるはずなのに、推論に合った事例一件を元に確率を出していたとは驚かざるを -
Posted by ブクログ
専門家が出した確率は、なんとなくそのまま信じてしまう。70〜80%と言われたら、ほぼ確実なように思ってしまう。でもその根拠となるものは…
科学的とは言えない事情があった。
科学者とは証拠を重ねて、そこから導き出されたものを発表するというイメージだが、そんな人たちばかりではない。政治的な人がたくさんいる。「原子力ムラ」とはよく言われるが「地震学ムラ」もあったようだ。国に擦り寄って、多くの予算を取り、(政治的な)実績を残す。
素人だからこそ専門家の出す数字を信じ込む。今後も他の分野でも気をつけていきたい。
著者は新聞記者として、その時の持ち場がありながら、合間を縫って全然別の自分の気になるテーマを -
Posted by ブクログ
自分は東海地方に生まれ育ったので、少中学生時代には毎学期に避難訓練をしてきた。ちょうど本書が語るように、「東海地震説」が幅をきかせた始まりの頃の話だ。だが大地震はこれまで東海には訪れず、阪神、東北、熊本、能登と、危機を煽られなかった地域ばかりに起こった。政府や学者、マスコミたちの欺瞞には憤った。世界の地震の五分の一をひきうける日本で、地震の危険がない地域は、ない。下手に危険率ばかり説いて、油断する地方を生み出した罪は重いと思う。地震予知の確率も、降水確率も、同じ数字で表せても、実際に起こった時の被害は大違いだ。最近どこかで見たが、人間の脳は数字や確率を直感的に正確に捉えられるほどまだ発達してい
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2024年8月8日、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、同日「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された。
これまで聞いたこともない「巨大地震注意」なんていう言葉をメディアが突然言いだし、テレビなどでは「南海トラフ巨大地震の発生が近づいているから注意してください」みたいなことを言うから、心底驚くとともに戦慄が走った。いつもは冷静な会社の上司は、気象庁からこんな情報が発出されたことに驚き、右往左往していた。
私は自席の椅子に深くもたれかかり、少し前に本をよく読む友人が「南海トラフ地震は、ほかの地震とは異なる計算式で計算をしているから<30年で70~80%>という高 -
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宮崎県で8月8日に発生した地震は、その後の南海トラフ地震臨時情報の発表に繋がり、広範な対象地域で何らかの対応が求められた。
結果は一週間にわたって特段の地殻変化は観測されず、されど大地震が発生する可能性が無くなったわけではないため、巨大地震注意の状態を継続しつつ、特別な注意の呼び掛けを終了し日頃からの地震への備えを引き続き呼び掛けるという分かりにくい状況に至っている。
些かでもこの状況を咀嚼したくて手に取ったのが『南海トラフ地震の真実』で、昨年8月に刊行された中日新聞記者による調査報道の書である。
表紙からは国民に不都合な真実が隠蔽されていた事実を暴いた書という印象を受けるが、冷静に読め