カミュの生涯と、それぞれの作品についてとても詳しく学ぶことができる本です。
きちんと作品を読んだことはないけれども、カミュの経験した計り知れない個人的な経験に基づいてすべての言葉、ストーリーが生み出されていることを知る。
いくつか著者がキーワードを出されているので、作品の意味するところについて辿る際の道しるべになりそうです。
印象としては、殺人と潔白、潔白な殺人者、について、とても突き詰めて小説を書き続けられているように思いました。
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カミュは自身の作品を、『異邦人』に代表される第一の系列「不条理」(1942年)、そして『ペスト』に代表される第二の系列「反抗」(1947年)の二つに分け、遺作『最初の人間』で見据えていた第三の系列として「愛」があるとのことです。
不条理の主題は、絶対価値の失われた時代にあって、資の定めのもとにある人間の姿。
反抗の主題は、歴史の名のもとになされる抑圧と殺人の拒否。
愛の主題は、未完のため断片にとどまっているものの、家族の会い、故郷への愛、民族共存を可能にする愛などが素描されている、とのことです。
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『ドイツ人の友への手紙』(1945年)では、1943年からカミュがレジスタンス派新聞社に送った手紙3通と未発表の第4信が載せられているそうです。第一次世界大戦前は平和主義者だったカミュがレジスタンス活動家に変貌したことを明らかにするものだと論じられています。第4の手紙では、ニーチェ思想から出発しながら、ニヒリズムではない、人間界の意味を確信しています。
「私は、いまでもこの世界には上位の意味はないと信じ続けている。しかし、世界には意味のある何かが存在すること、それが人間であることを知っている。なぜなら唯一人間だけが意味をもつことを要求するからだ」
また、ここで用いられた架空の対話の形式は、のちにノーベル文学賞を受賞するきっかけともなる『転落』でも用いられているとのこと。
とにかく、人間への愛が強く、それが正義感と行動の原動力になっているように感じました。