あらすじ
世界の美しさと,人間の苦しみと――双方に忠実であろうとしつつ,生きる意味を探求し続けた作家,カミュ.『異邦人』『ペスト』をはじめとする作品は,時をこえて私たち自身の生をも映し出している.アルジェリアでの出生から不慮の死まで,生涯に沿ってテクストをよみとく.「不条理」の先に作家は何を見ていたのか?
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
そもそも不条理からスタートしているカミュの哲学は、不条理に抵抗するマインドを、私達に教えてくれると思う。今を汲み取り、岩の重みに抗い、光へと向かう幸福、その美しさへの触れ方を学べた気がします。不条理な死から逃げずに、しっかりと向き合い、生への愛を活性化し、生を解放するという死生観、そして肯定と否定の間で揺れ動く緊張感の哲学は、沈鬱な気分の時、よく生と死の狭間を行ったり来たりする私の思考と共鳴しました。そして、どっちつかずの立場を貫くことを肯定する彼の言葉は、私にとってはとても衝撃的でした。
Posted by ブクログ
主要作品の概要(といくらか実際に流し読んだ)程度の親しみ具合にあって、人物像の肉付けとしては新書の紙幅の中で広く触れることができる内容であったが、どこかカミュ自身についての関心が薄い部分もあって、内容の充実度に比して自身の感性に響かない部分が残念でもある。
Posted by ブクログ
アルベール・カミュは『ペスト』を読んだくらいだけど、興味ある作家。「不条理」とか哲学的な話は分からないかもしれないけど、三部作とか色んな作品を読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
カミュの生涯と、それぞれの作品についてとても詳しく学ぶことができる本です。
きちんと作品を読んだことはないけれども、カミュの経験した計り知れない個人的な経験に基づいてすべての言葉、ストーリーが生み出されていることを知る。
いくつか著者がキーワードを出されているので、作品の意味するところについて辿る際の道しるべになりそうです。
印象としては、殺人と潔白、潔白な殺人者、について、とても突き詰めて小説を書き続けられているように思いました。
・・・
カミュは自身の作品を、『異邦人』に代表される第一の系列「不条理」(1942年)、そして『ペスト』に代表される第二の系列「反抗」(1947年)の二つに分け、遺作『最初の人間』で見据えていた第三の系列として「愛」があるとのことです。
不条理の主題は、絶対価値の失われた時代にあって、資の定めのもとにある人間の姿。
反抗の主題は、歴史の名のもとになされる抑圧と殺人の拒否。
愛の主題は、未完のため断片にとどまっているものの、家族の会い、故郷への愛、民族共存を可能にする愛などが素描されている、とのことです。
・・・
『ドイツ人の友への手紙』(1945年)では、1943年からカミュがレジスタンス派新聞社に送った手紙3通と未発表の第4信が載せられているそうです。第一次世界大戦前は平和主義者だったカミュがレジスタンス活動家に変貌したことを明らかにするものだと論じられています。第4の手紙では、ニーチェ思想から出発しながら、ニヒリズムではない、人間界の意味を確信しています。
「私は、いまでもこの世界には上位の意味はないと信じ続けている。しかし、世界には意味のある何かが存在すること、それが人間であることを知っている。なぜなら唯一人間だけが意味をもつことを要求するからだ」
また、ここで用いられた架空の対話の形式は、のちにノーベル文学賞を受賞するきっかけともなる『転落』でも用いられているとのこと。
とにかく、人間への愛が強く、それが正義感と行動の原動力になっているように感じました。