竹村牧男のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「はじめに」では、「日本仏教の主要な思想史のほぼ全体を見るに便利な一緒かと思います」とありますが、本書であつかっているのは聖徳太子から鎌倉新仏教までとなっており、江戸時代や近世以降の仏教思想の展開はとりあげられていません。また「特に教理の要点を詳しく平易に解説したつもりです」と書かれていますが、じっさいのテクストをなるべく紹介しようという方針が採用されているようで、末木文美士の『日本仏教史』(新潮文庫)などの入門書にくらべると、若干敷居が高いのではないかと思います。
けっして悪い本ではないと思うのですが、日本仏教の全体像を一通り知りたいという読者のニーズからはすこしずれている内容だと感じまし -
Posted by ブクログ
仏教の思想を信仰の立場からではなく、世界と人間のあり方について考察する「哲学」としてとらえるという、少しユニークな視点からの仏教入門書です。
縁起の思想を関係論的コスモロジーとして解釈したり、唯識をユング心理学のようなものとして理解する試みはけっして珍しくないのですが、わたくし自身は信仰によるコミットメント抜きで哲学的にその思想を理解することには抵抗を感じます。著者はこのことも十分に留意していて、「私はただ仏教は哲学であるということだけを主張しようとしているわけではない」と語っていますが、仏教の中に現代のアクチュアルな問題を解決するための「知」を求める立場から、仏教を哲学としてとらえることが