科学とは何かの考え、その上で疑似科学との線引き(グレーな領域が存在する)、疑似科学の見抜き方の次の視点が事例を交えて書かれている。理論、データ、理論とデータの関係性、現代社会、人間。疑似科学という切り口の本のあまり見かけないため、参考になり、面白く読めた。
1. 科学とは何か
・科学:一定の目的・方法のもとに種々の事象を研究する認識活動および、その成果としての体系的知識(小学館デジタル大辞泉)、自然科学だけでなく社会科学や人文科学も科学の対象範囲
・ある理論に基づき具体的な仮説を設定し、それがデータによって検証されることによって理論が正当化され、一般化していく→科学とは方法論そのもの
・クリティカルシンキング(批判的思考):論理的、客観的で偏りのない思考であり、自分の推論過程を意識的に吟味する反省的思考
・科学と科学でないもの(≒疑似科学)の線引き→画一的な線引きは不可能(境界設定問題)
・例えば、飛行機が飛んでいる理論の詳細は確立できていないが(疑似科学的)、飛行機は飛ぶという再現性は抜群にある(科学的)
・科学リテラシー:疑問を認識し、新しい知識を獲得し、科学的な事象を説明し、証拠に基づいた滅論を導き出すための知識とその活用(OECD-PISA)
・科学的な証明→科学において確実な証明は不可能。データによる検証は限定した範囲でしか行えず、つねに不完全であるため
・反証可能性:ある仮説に対して証拠による反証によってその仮説を修正できる構図にあるか。こうした想定がないものは疑似科学と判定できる
・パラダイム:科学者集団が共有している規範や体系、世界観のようなもの。この枠組みが別の枠組みへと革命的に転換することをパラダイム転換と呼ぶ
・科学と疑似科学の間:科学~発展途上の科学(暫定的に科学とみなせるが、今後の研究によって科学と言えない状況になる可能性もあり)~未科学(今のところ科学と言えないが、研究を積み重ねた結果、科学と言える段階に進む可能性もあり)~疑似科学(科学に至るためには今後かなりの知見を積み重ねなければならない。社会への適用は控えたほうがよい)
・疑似科学を見抜くための4つの視点:①物事のプロセスが説明できるかという「理論」、②仮説に基づいた結果があるかという「データ」、③理論とデータがきちんと関連しているのかという「理論とデータ」、④経験としての効果や世間での受け入れられ方などの「社会」
2. 疑似科学の「理論」の見抜き方
・科学に大事なのは「定義」→対象がどのような物かを定義しなければ議論は始まらない
・ホメオパシー→もとの自然治癒力以上の効果を期待できる必要がある → 疑似科学
・ラジウム温泉やラドン温泉→ホルミシス効果→注意が必要
・デトックス→何を排出?
・ブルーライト→データによる検証がほとんどない
3. 疑似科学の「データ」の見抜き方
・疑似相関:本来は因果関係がないのに、隠れた要因によって因果関係があるかのように推測されること→相関関係を精査して注意(3た論法では弱い。四分割表やランダム化比較試験など)
・誰がやっても同じ結果が得られるか(再現性)、思い込みや主観的な印象を極力排したデータであるか(客観性)が科学的なデータとして重要
・信頼度の順 → 医薬品>トクホ>機能性表示食品>美容品など
・専門家の意見やデータの信頼度は低い位置づけ → 自身の主張や信念に沿うような情報に選択的に注意が向いてしまう「確証バイアス」に陥る可能性がある
・確証バイアス:当初の自分の考えに沿った情報にはよく目がいく一方、そうでない情報には注意がいかなかったり、過小評価したりする傾向
・ランダム化比較試験:研究対象(例えば薬)の効果を検証する際に、薬を飲ませる「実験群」と、薬を飲ませないもしくは偽薬を飲ませる「対象群」に、被験者をランダム(無作為)に割り当てて実験する手法→因果関係を強く推定できるほとんど唯一の研究デザイン。見えない要因の影響を被験者のランダム割り当てによって統計的に相殺する
・メタ分析(統計データ分析)とシステマティック・レビュー(各研究の概要を記述的にまとめる)
・牛乳有害説→健康効果はランダム化比較試験やメタ分析による強い根拠が揃う。有害説は非常に弱い根拠しかない
4. 「理論とデータの関係性」と疑似科学
・後付け仮説(アドホックな仮説)→あらかじめ大量の地震予測をし、当たったときだけ取り上げる
・ケイ素(シリカ)水→健康効果や美容効果に対応した実験データは乏しい
・因果関係の主張に対する責任が仮説を提唱する側に課せられ、「立証責任」あるいは「説明責任」といい、科学の世界では大変重要な概念
・「知能とは〇〇と××の能力を総合的に評価したもの、とここでは定義する」といった操作的定義が必要
・磁気治療器(永久磁石)→コリ軽減のメカニズムは明確でないが血行改善による説が有力。メタ分析の結果、コリへの改善効果が確認。ただし、メカニズムは仮説にすぎない状態。日本では、「家庭用永久磁石磁気治療器」といった医療機器のカテゴリーがあり、極端に高額な商品の販売はなされにくい状況にある
・水素水→「どのような人が、どの程度引用したら、どのくらいの効果があるのか」といった理論構築やデータ収集の基盤になる知見が不十分。理論もデータも不十分で、疑似科学的なビジネスが先行
5. 現代「社会」と疑似科学
・公共性、歴史性、応用性。社会的に一定のチェック体制や議論の歴史があり、適切な形で応用可能であるかどうかが評価ポイント
・マイナスイオン→身体的効果はほとんど期待できず、特に、喘息などの呼吸機能に関する効果については否定的な実験結果。精神・心理的効果についてもあまり期待できない。理論面・データ面ともに否定的な結論
・GABA→血圧データ以外はかなり疑問
6. 疑似科学を見極める人間の視点
・景品表示法では、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を誤らせるような広告は禁止
・「量の観点」や「比較思考」も大事