松居竜五のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
二〇一六年に慶應義塾大学出版会から出された同著者の『南方熊楠—複眼の学問構想』は博論を元にまとめられた大著だったが、こちらは一見児童向け伝記のようなコンパクトでかわいらしい本。著者は熊楠の文章を引用するたび自称を「ボク」にして現代語訳していて、最初は違和感を覚えながら読んでいたが次第に慣れてしまい、「おわりに」で「本書は、熊楠さんという人のもつさまざまな面について、筆者が主観的に感じてきたことを、読者と共有することを第一の目的としている」(p209)という一文を読んで、なるほどと思った。この本のなかでは、「ボク」は熊楠でもあり、著者の松居竜五さんでもあり、私たち読者でもあるのだ。