青井青のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
風景や人物描写や緻密で、臨場感がありました。小説の冒頭から色鮮やかな映像が浮かぶような作品で、「アニメ化やドラマ化されたら、こんな描写になるのかな」と、想像をかき立てられました。
読み始める前に、タイトルからどんな内容だろうと想像してみましたが、想像を超えてきました。よく思いつくなと、感心してしまう設定でした。設定がわかってからも予想外の展開が続き、最後まで飽きさせない内容でした。
最近は読書時間をなかなか設けることができず、小説を読む機会が減っておりましたが、こちらはちょうどいい文量の短編集でした。おかげさまで、1作品ごとに集中して楽しむことができました。12編全て読ませていただきましたが -
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Posted by ブクログ
12編の短い話からなる短編集です。
1話1話が短いためすぐに読めます。
また、読んだ人の境遇や今置かれている状況によって、人それぞれ感想が全く別物になるような予感がします。
題名で最も興味を惹かれたものは、
「耳の聞こえない風俗嬢」です。
先天性難聴者の女性が風俗嬢になるお話ですが、先天性のハンデがあっても周囲の理解やサポート、そして何より本人の想いがあれば出来る事が必ずあるのだと思いました。
私自身にもとある障害があるのですが、それを踏まえた上で自分自身にも出来る事を探したいと思いました。
他の話もタイトルからでは内容を想像出来ない物が多く、一読の価値ありです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの小説の最大の魅力は、主人公が直面する困難に対する彼の姿勢と、その中で見せる成長です。章吾は、自分の余命を売るという極限の選択肢に追い込まれながらも、人間としての尊厳を失わず、他人を助けようとする意志を持ち続けます。また、彼が周囲の人々とどのように関わり、支え合いながら生き抜くかを描いたシーンは、読者に深い感動を与えます。
物語全体に流れるエモーショナルな要素は、登場人物たちの人間関係の複雑さと、それぞれのキャラクターが抱える内面的な葛藤によって引き立てられています。章吾の親友である楚良との関係や、母との再会、そして彼の命をかけた選択など、全てが読者の感情を揺さぶります。特に、章吾と楚良の絆 -
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ネタバレ【孤独死クライマー】が特に良かったです。ゴミ屋敷を掃除するクリーン会社の人たちが、孤独死をした人の部屋の清掃をしながら、故人のことを考えるストーリー。孤独死するというと、頑張ってなかった人、友達もいなくて寂しい人など、みすぼらしい感じがプンプンするけど、実際はそうでもなくて誰もの隣り合わせに存在しているんだな、と。ふとしたきっかけで自ら社会との間に壁を作り、孤独を選ぶ人もいる。決して可哀想、でまとめてはいけない社会現象。彼らにも歴史があって、誰かの記憶に残っている。人間みな死ぬ時は来るけど、果たして自分はどうなのだろう…と考えさせられました。
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主人公の章吾と楚良の純粋な心に、自己中心的な人間ばかりの現代で忘れていたものが見つかった気がしました。特に章吾の母は信じられないくらいのずる賢い母ですが、何も疑わずに自分の余命全てを母に捧げてしまうなんて心が優しすぎて切なくなりました。
技術が進歩して自分の寿命を売買できるようになった世界。貧しさゆえに自分の寿命を3日間分だけ売ってしまった楚良も世界中で貧困の差が激しい現代の象徴のような気がしました。
そんな貧困な楚良ですが他人を思いやる気持ちに心打たれました。しかも自分の余命を省吾が知らぬ間に捧げてしまいその思いを手紙に託して亡くなってしまいます。
楚良から託された命をガムシャラに働き成功を -
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ネタバレタイトルから気になり、この本を読みました。
短編小説なのに綺麗な言葉や描写がところどころに散りばめられているだけでなく、内容も短編とは思えないほど濃密で読み終わったあと、じん。と来ましたし、自分の人生、そして余命について考えさせられました。
最後の「君の命は僕の命だから。」その言葉に買い戻した53年間を章吾は楚良を想って生きて来た事がぎゅっと詰め込まれており、二人でいられた時間は少なかったものの、その少ない時間が二人にとってかけがえのないものなのだと思いました。
大切なものは何か。幸せとは何か。そして、この先の人生をどう生きるか。それを考えさせられる暖かく優しいお話しです。すっと入り込んで -
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読み終わった後に、切ない爽やかさが心に残る短編集です。
タイトル作の「君の余命、買い占めました」が特に私のお気に入りです。
章吾と楚良の純粋な心に胸が締め付けられました。
また、もし自分がこの世界に生まれたら、自分の人生をどう生きるか考えさせられました。
お金と命を天秤にかけられるとしたら、自分が本当に大切にしたいものがもっとシビアに見えてくるのかな。そんなことを思いました。
題材にされている問題はヘビーなものもありつつ、読みやすくとてもきれいな文章で描かれているため、スッキリした気持ちになりました。
生きづらさを感じている人、生きている意味を考える余裕もなくただ日々を過ごしている人にぜひ -
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Posted by ブクログ
現実的な日常の自然な会話と、非現実的なワクワクハラハラする展開のバランスがちょうどよく、あっという間に読み切りました。
12編どのお話も情景がクリアに思い浮かべられて、読み切るのに時間もちょうどよく、読書をあまりしない方でも入り込める作品だと思います。
「君の余命、買い占めました」
研究や技術の進歩により余命さえも流通する、命が機械的に扱われるようになったと感じてしまう世の中で、こんなにも献身的な気持ちが連鎖するものかと胸が熱くなりました。
「車椅子のナンパ師」
タイトルからはまるで想像できないラストでした。
ナンパが題材のお話では、こんなあたたかい気持ちは絶対に得られないなと。
ぜひこ -
Posted by ブクログ
高校の社会見学で見た「死刑執行」。
密かにそれをスマホで撮影した高校生(裕紀)の身の上に起きる不思議な物語です。
リアルな死刑場の描写、無実を叫ぶ死刑囚、拘置所の外で見た死刑反対派の市民団体と一人の少女、マスコミの報道と少女とのやり取り、そして明らかになる真実と少女の正体。
これ以上書くとネタバレになりそうですが、非常に「捻(ひね)りのきいた」短編小説です。
映像に喩えるならば『世にも奇妙な物語』(フジテレビ)で使われそうなストーリーでしょうか。
「命」「想い」が作品の中に描かれ、それに「ホラー」が絶妙な味付けをしています。
高校生(裕紀)、死刑囚、少女、どの登場人物も「命」に向き合う想いがし -
Posted by ブクログ
人のやさしさ温かさも感じながら、胸が切なくなるショートストーリーをまとめた小説です。
10代のころの好きなのにうまくいかない恋愛や思春期の家族関係、
感情の間でゆれうごいて悩んで前に進んだり立ち止まったりした昔を思い出して
なんだか泣きたくなりました。
技術進歩によって自分の寿命を売り買いできる”余命”をお金にかえられるようになった世界。
母一人子一人で貧しいながらも、周りにやさしくできる主人公。
登場する若者はみんなやさしくだからこそ理不尽な世の中、大人の醜さや傲慢さが際立ち
年齢を重ねれば重ねたほど自分の見栄や体裁をきにする大人たちに疑問を抱えた
10代ころの自分が思春期に読んでいたら -
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Posted by ブクログ
表題作「君の余命、買い占めました」を含めた12編、どれも“生きづらさ”と共に語られることが多い現代的な事象がモチーフになっているものの、つらさの中に“救い”が語られる短編集です。
非正規雇用、孤独死、ハラスメントなどニュースでは社会問題としてネガティブに語られる事象であっても、そこに人がいる限り生まれる心の通い合いやちょっとした奇跡がうまく描かれていて、ホロリときたりジーンと感動したり、感情が忙しくなりながら引き込まれて一気に読みました。
個人的なお気に入りは「余命告知シミュレーション」、Z世代であろう緩和ケア医の成長譚とも言える作品です。電車の2駅分ほどで読み終わるので成長譚とは