若宮總のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
我々日本人にとって馴染みのないイランが手に取るように分かる。
馴染みがないからこそ知らないことが多くて、読んでいてワクワクした!内容を思い返してみればシリアス寄りだったんだけど、イラン愛が強い著者の語りが面白くて、ワクワクの方が優っていたかな。日本人にイランを知ってもらおうとする著者の努力も沢山伺えたし。
そ!し!て!解説には高野秀行氏!!著者自身、学生時代から氏の大ファンだったみたいで、道理で同じ匂いがしたわけだ…!ちなみに高野氏は、本書執筆における影の功労者でもある。
まず念頭に置かねばならないのが、著者および彼がインタビューしたイラン人たちは皆仮名だということ。
イスラム体制下の検閲シ -
Posted by ブクログ
最近、『聖なるイチジクの種』『君は行く先を知らない』『熊は、いない / ノーベアーズ』など良質のイラン映画を観た。そしてイランの独特で悲惨でむちゃくちゃな現状を知り興味を持った。
本書は歴史書や学校の授業のような堅苦しさがなく、庶民の生活に密着した知識が満載でよかった。
イラン人は超親日家らしい。
「タアーロフ」という慣用的やりとりがおもしろい。ペルシア語には挨拶への「お返しの表現」として誇張的な謙遜の定型表現の種類が無数にあり、これを使いこなすと通認定されるらしい。
例)
とても美味しかったです → (食べたものが)あなたの命の糧となりますように
お手数をおかけします → あなたに命を捧げ -
Posted by ブクログ
【感想】
イスラム国家と聞いて私たちが思い浮かべるのは、厳格で窮屈な国だ。人々はコーランの教えに基づいて礼拝を欠かさず、酒を始めとした娯楽を控える。女性はヒジャブやブルカの着用が義務付けられ、男性の前に姿を晒さない。政治を宗教が支配しているため、民主主義とは程遠く、身分の差が激しい。
そうした認識は、一部分においては正しい。しかし、あくまでその国によって厳格さは異なってくる。本書『イランの地下世界』で取り上げられているイランという国は、かつて王政であり、イスラム国家とは程遠かった。そのため人々は教えを形式的に守りながらも、「信奉なんてしてられっか」という思いを強く抱いている。そうした「建前の -
Posted by ブクログ
イランでイラン人の中で暮らしている筆者によるイランとイラン人の実態。
イスラム共和国であるイランだが、政教一致であるが故にイスラム教指導者による政治に対する不満や不信がイスラム教そのものに対する不信につながり、筆者の見るところ民衆の過半数が両者に不信感を持っているという。
厳密なイスラム国家であるにもかかわらず、酒、豚肉は普通に手に入るなど、市井の実態は極めて世俗的で、草の根の親日感は本当らしい。
元来ペルシャ人なのでゾロアスタ教が根底にあり、アラブ人を裏では裸足の人と呼ぶ。
外からでは伺い知れない彼の国の実態に、正に眼から鱗が落ちる思いがする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ長くイランで暮らす経験を持つ筆者が、イラン人の生活や国民性、彼らのいいところも悪いところも熱く語る本。筆者のイラン人の友達や知り合いたちに関するエピソードがふんだんにあり、ありふれている飲酒や法律違反、独裁体制を馬鹿にしつつ利用する人々の実態、おしゃべりで行き過ぎた親切、見栄っ張りな性格などなどが生々しくて面白いのですぐに読めてしまう。歴史などにも軽く触れていて、現在のイランの現状が簡単にわかるようになっているのも良かった。
政教一致の負の側面として、宗教が政治の不満をも一身に背負うようになってしまい、求心力が低下するというのはなるほどと思った。宗教革命以降は女性の服装も一変したというのはいつ