最首悟のレビュー一覧
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素晴らしい本でした。著者の最首悟さんの重度障害のある47歳の娘、星子さんとの暮らしや津久井やまゆり園事件の犯人「植松青年」との手紙のやりとり、水俣病などについて、3人の高校生と語った記録。
高校生たちの話すことがなかなかに素晴らしい。
p26
自分にあるものは限られてますから、「自分にないもの」って、もう無限です。短所と言われるものでも、障害と言われるものでも、自分が持っていなければ、それは相手を立てる理由になる。たとえば星子は「目が見えない」っていうことや、「しゃべらない」っていうことを持っています。どんな人でも、どんな動物でも、私にないものを持っている。それを、こう、すごいこととして、そう -
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去年、心を病んで休職を経験したのだが、休んている間は社会の役に立てていない自分に耐えられなくて、かえって辛くなってしまい、何かに焦るように復職した。
実際、復職後は誰かの役に立てていることが嬉しくて、復帰してよかったと思えた。しかし、最近はまた激務に追われてかなり苦しい思いもしている。
そういう状況の中で読んだこの本には、今の自分にとって金言とも言える言葉がたくさんあった。
87歳の最首さんは、星子さん(重度の障害をもつ娘さん)の身の回りをしているが、「私たちは星子に頼られながら、星子を頼りにしている」と語る。
星子さんが物理的に何かをしてくれるわけではないが、星子さんに頼られている状況こそ -
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日本経済新聞に「能力主義、前提は強い「個人」。競争より共創で生産性を」と題する書評コラムが掲載されて、その中の1冊として、本書が紹介されていました。著者が、重度知的障碍をもつ娘をもつ父親であり、「相模原障碍者施設殺傷事件」(2016年)を起こした殺人犯と対話したことがあるとの紹介とともに。
Over the topとは40歳のころを指すのですが、中高年まで人生は上り坂で、何かを成し遂げたいと思い、人は格闘するのでしょう。著者も大学紛争という特殊な状況下で自己否定を迫られる一方、いずれ大学教授になるのだろうなと思っているところに、この娘さんが誕生します。そして、それ以来、娘があって私が生きてい -
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能力主義、優生思想、脳死、いのちの価値づけ
答えるのが難しい内容にも関わらず、
最首さんの問いに、真剣に向き合い、
自分の言葉で話す中高生3人。
自己責任は、個人を重んじる西洋の考えで、
従来の日本は、持ちつ持たれつ、情けの関係
成り行き主義で、曖昧にぼかす
また日本の死生観は、現世は繰り返す輪廻思想。
日本は、開いた世界で、未来は広がる
と捉えていた。
一方、西洋は、因果関係。
人間が世界を変えることができる。
創造から始まりいつか終末がくる。
死はこの世の終わり。閉じた世界。
明治維新によって、西洋の考えに追いつけと
必死にやってきたが、
1970年代から、個人の自立が重んじられる。 -
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個人主義のわたしに、新たな知見を与えてくれた。
重複障害の娘さんを持つ最首悟さんと、中高生3人の会話。
いのちの価値とは、能力の高低や有無ではない、というのが一貫した主張。よく分かる。
最首はさんは、脳死は死ではないという立場。
私は脳死は死で、臓器提供はむしろしたいという立場だった。
私の母は臓器提供反対派で「自然じゃない」というようなことを言っていたけど、なんとなくその気持ちにも寄り添えるようになったかも。
津久井やまゆり園事件の犯人の植松青年は優生思想の持ち主。入所者に声をかけて意思疎通ができない人間を殺していったという。
成田悠輔氏が「高齢者の集団自決、集団切腹みたいなのしかな -
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新聞の書評で見かけた。最首さんが、十代の若者4人との対話を通して、命について考える企画。『なぜ人と人は支え合うのか』で知った最首さんの本なので読んでみた。生きるって何か、命とは、価値とはという、答えのないテーマを4回に分けて対話した記録だ。もちろん、植松死刑囚の話も出てくる。
最首さんなので、哲学だし思想だし、生きることについて深いんだけれどとても身近に話してくれる。
思うところはたくさんあるけれど、とても深く心に残った箇所があるので、フレーズ登録ではなくてここに書いておく。
以下P29から引用
最首さんがみんなに突然、「『聴す』と書いてどう読むか、わかりますか?」と問いかけました。
こ -
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トピックや所々は気になる話だったが、若いパネラー達の自分探しに感情移入出来ず、バタバタした読書になってしまったのが残念。
きゅうけい
休憩時間が終わる頃、最首さんがみんなに突然、「「聴す』と書いてどう読むか、わかりますか?」と問いかけました。
最首
これは「ゆるす」と読みます。「ゆるす」は「ゆるい」や「ゆるゆる」と元は同じらしいんですが、「聴す」と書いて「心をひらいて聞く」意味合いがあるんです。普通は、相手に注意を集中させて熱心に聞くことがよしとされますよね。でも「聴す」の聞き方はそうではなくて、ぼ1つと聞く。心をひらいてぼーつと聞いていると、相手もしゃべってるうちにリラックスしてきて、 -
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ネタバレやまゆり園の事件は衝撃だった。
人として、彼の主張する理屈を認めてはいけない、だけど、彼の主張の背景が理解できるように思う自分も、いる、ということを、残念ながら、否定はできない。
なんとも後味が悪く、どう整理すればよいか、わからない。
難しいし、答えはないけど、考え続ける必要を感じるテーマとして、この本を手に取りました。
結論、やっぱり、難しいし、答えはない。(知ってた)
この企画、素晴らしいと思う。
それでも、言いたい。
高校生3人相手の座談会は、企画として無難で受け入れやすそう。
でも、ほんとに切り込むべきは、86歳の最首さん(水俣病実地調査座長を経験し、意見や立場が異なる人と言葉で -
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ネタバレ最首悟さんと3人の中高生の対談4回分。この中高生たちがまた立派な子らで。どういう繋がりでセッティングされたのかなと思っちゃう。障害福祉と言われる仕事をしていたけど能力主義とか考えたこともなかったな。いるのが当たり前だったし、そのおかげでお給料もらっていたし。水俣病についても興味深かった。もともとの漁師への差別があったというのは知らなかったし、公害認定されるまで国や企業がそんなにひどいことをしていたとは。まぁまだ訴訟というか続いているし、最近もニュースになってたのに、ほんと小中学生以降、全然知ろうともしてなかった。本当に勉強すべきことはたくさんあるのだ。
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重度障害者である娘の星子さんと暮らす最首さんの語りを中心とした、若者との座談会にて、人の価値や関係性、優生学や水俣病などについて話していく。あまり深い話には至らない。とっかかりには良いのかも。最首さん夫妻と星子さんの話をもう少し知りたいなと思う。別の本をいつか読んでみたいかも。
障害のある家族が、自分がいなくなった後でも、どうにかやっていける、それだけ周りの人が助けてくれるだろう、という感覚を持てることが、信頼の世界であり、ある意味それが豊かであるということなのかもしれないなと思った。そういう豊かさは、世界にあり続けられるといい。そのために自分も尽力できると良いな。
苦海浄土読まないと・・・