逢崎遊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ケガで実業団を引退した元マラソン選手が、ブラインドランナーの伴走者となり「走る意味」を見つめ直すスポーツ小説。
盲目のランナーと伴走者、となると2◯時間テレビ的にキレイキレイな物語に仕上げられそうなところ、まったくそんなことはなく。誰も彼も狡かったり頑固だったり…それでいい。
爽やかな感動ストーリーを予想するといい意味で裏切られます。
主人公は走ることが好きではないし、後ろ向きで身勝手な性格だけれども、その不器用な迷走から不思議と目が離せない。
心身ともにボロボロになりながら泥臭く見つけた答えは、決して模範的ではないけれど。清々しさがあっていいラストでした。 -
Posted by ブクログ
思っていた展開とちがって途中からなんなのこの主人公?この小説どう着地するの?と気になりながら後半急激に面白くなります。陸上で進学して実業団入りする人たちの末路や現役の箱根で走る人たちの裏にはこういう世界が少なくとも本当にあるのでしょう。大衆に受け入れられる「俺たちの箱根駅伝」のようなわかりやすくも面白いストーリー展開ではなくネガティヴ要素が多く散りばめられてどこまで堕ちていくんだ…と語り手を醒めた目で気持ちが離れていってから引っ張られる。自分も伴走をするのでこんな奴あり得ないと思いつつ、ブラインドランナーやそのチームで気を遣ったり媚びたりすることを絶対にしないこの人の走りの才能にほんの少しジェラシー。誰かの記憶に残るためってなんやねん!と突っ込みたくなるけど、こんな息子のご両親(特にお母さん)のように付かず離れずでも見守り味方する立ち位置をとれる母親を尊敬する。ああ非凡な市民ランナーって幸せだなぁ。そしてストレスなく働き適度に身体を動かし睡眠と栄養を摂ることの大切さも。小説のメッセージではないかもしれないけどそんな気持ちにさせてもらった。
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Posted by ブクログ
学生の耕一郎がある冬の日に、酒に溺れる父の愚行に怒り殴り殺してしまう。
逃亡生活を選択し、身を潜め静かに日常を暮らしていくことになるのだが…
というありがちな逃避行物語ではあるが、耕一郎がドがつく程の真面目で寡黙な青年である故に、ドン底にいつつも犯罪に走ったり、人を貶めたりしないところが健気というか馬鹿正直というか。
訳ありのホームレス仲間や、途中で出会うおっちゃんとの生活はただひたすら普通に生きたいが過去から立ち直れなかった者達の成れの果てみたいで、悲しくも現実から逃げていては何も変わらない生活を象徴していた。
しかし耕一郎は若さもあって普通を諦めずに生きる選択をしていくことで父の死の真相を受け止めようとする。
逃げるだけでは変えられないからこそ。
そしてラストに知る事実はある意味耕一郎への罰でもあり救済なんだろうと思う。 -
Posted by ブクログ
【小説すばる新人賞 受賞後第1作!】
俺は本来、ランナーを名乗ってはいけない人間だ。己の役割も知らず、ロードの上を幽霊のように今もこうして彷徨い続けている。
実業団の長距離ランナー・柴田光輝は、脚の故障により選手を引退した。しかしそれは不慮の事故ではなく、終わりなき競争の日々に疲弊した柴田自身が仕組んだものだった。思惑通り実業団を辞めることに成功した柴田だったが、地方の保険営業所に異動させられ、悪質な保険セールスに携わるなか、次第に精神をすり減らしていく。そんなある日、柴田は「ブラインドランナーの伴走者をやらないか」と誘われ、再び陸上の世界に舞い戻ることに。それは「なぜ走るのか?」という問いに向き合う旅路のはじまりでもあった。己の存在証明にひた走る、ひとりの青年の軌跡を描いた異色の青春譚。
(中央公論新社 書籍内容より)
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著者さまは 私の大好きな一冊「正しき地図の裏側より」で小説すばる新人賞を受賞した逢崎遊さん♡
その逢崎さんの新刊ー!と思い手に取ったこの本。
運動が好きでもない私が 友達の付き添いで陸上部に入ってしまって後悔したのだけれど、
柴田は長距離走で輝かしい記録をだしながらも、走ることに意味を見つけられず苦しむ青年。
生まれ持った足の速さで、進学先も就職先も決めてしまう柴田。しかし、本人は走ることにも 良い成績を収めることにもなんら執着はなく、本気で陸上と向き合っている周りとは共感しあえない。
故意に膝を故障させ陸上を離れることに成功するも、陸上選手として就職した保険会社では左遷させられ、ブラックな業務により精神を病んでいく…。
そんな折、かつての先輩からブラインドランナーにならないかと誘われる柴田。
私はここで、走ることの意味に目覚め 生きる希望を取り戻す!みたいな話になるのかと思ったのです。
違いました。
視力をほぼ失ったランナー座間を 神のように崇める「チーム座間」と、座間本人の在り方に疑問を感じた柴田は、試合中とある暴挙に出て座間の前から姿を消す。
そして仕事を辞め(休職だったかな?忘れちった)故郷に帰り、走ることもすっぱり辞め そこでやっと平穏な日常を取り戻す。
かのように見えたが…。
「俺は やっぱり走ることがそこまで好きじゃないと思った」
「それでも俺は、走り続けるだろうと直感した」
柴田がそれでも走り続ける理由に
ちゃんと頭が追いついていかない私でした。
周りの期待を背負い、己の記録を超えるために走る陸上選手にはなれない。
けれど走ることでしか得られないものが柴田にはある。
ということなのか。
『この両脚がある限り、俺は成仏できないのだろう。
それがどこか幸運なことにも思えて、今は少し笑えた。』
なんでも考えすぎちゃうんじゃないか柴田。
最後はなんか吹っ切れたようでよかったね。