あらすじ
【第36回小説すばる新人賞受賞作】
定時制高校に通いながら無職の父に代わり働く耕一郎は、ある冬、苦労して貯めた八万円が無くなっていたことに気づく。
このことを父に問い質すと、父は金を使ったことを悪びれもせずに認めた上、予想を超える衝撃の言葉を言い放った。
衝動的に父を殴り飛ばした耕一郎は、雪の中に倒れた父を放置して故郷を逃げるように去る。
しかし、僅かな所持金は瞬く間に減り、逃亡生活は厳しくなる一方。
遂に金が底をつき、すべてを諦めようとしたそのとき、
「……なに、訳あり?」
公園の隅、小さなホームレスの溜まり場から、ひとつの手が差し伸べられる。
出会いと別れを繰り返し、残酷な現実を乗り越えた先、故郷へと帰る決意を固めた耕一郎を待ち受けていたものは――。
社会から切り離される圧倒的な絶望と、心と心が深く繋がるやさしさを描いた、25歳の若き著者による感動のデビュー作。
感情タグBEST3
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耕一郎は最後自分は選択肢を間違えたと言っていたが、私は間違えたとは思わない
彼なりに父親に気を遣い恩返しのつもりでそっちを選んだ
また家を出たからこそおっちゃんや三浦さんなどに出会えた彼は耕一郎のことをいつも気にかけて助けてくれたそれはきっと何にも変えられないものだと思う
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久しぶりに心が動いた読書体験だった。これがデビュー作とは。おっちゃんとの関係が凄くよかった。耕一くん自体も凄くいい子だからこそ、良縁にめぐまれるのでしょうね。父との関係については、いつかどこかで何か報いがあるのかなとドキドキしながら読み進めたが、そっか、そう着地するのねと。だからもう謝りたくても謝れない。話もできないから推測するしかない。父もそれができたならどうしてもっと早くできなかったの?とかしょうもない嘘なんでついたの?と思うところもあったけれど、そこも含めて人間なのでしょう。贖罪の意味もあったのかな。人生における正しい地図はきっとない。自分の選んだ道を正解にしていくしかないのだ。タイトルは応募時の『遡上の魚』よりこちらのほうがいいね。次作も楽しみ。
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一気読み
高校生だった耕一郎が受けた衝撃とその後の残酷な現実は辛すぎた。
絶望の中での出会う人に救われ、生きる道がつながっていく。このままでは終わって欲しくない気持ちで最後まで読まないと気が済まなくなる作品だった。
読んでいる時に、「親子の関係は、感情的な面も含めると、大小あれ複雑ではないという人は、世の中にいないんじゃないかな」と感じてしまった。
ブク友さんの書評がみなさん揃って高かったので、これはと思い手に取りましたが、私にも刺さってしまいました。ここが無かったら出会わなかった作品のひとつですね
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とても感慨深い内容でした。
生きていくことの厳しさと喜び、
幸せとは何かなど いろんな視点で考えさせられました。
ぜひみなさんにも読んでもらいたい一冊です。
Posted by ブクログ
私はどうやら、ゆーき本さんが刺さる本に刺さるらしいです。
この本も雪さんのレビューを読んだ時、すっごい読んでみたいと思ったのですが、前半の苦しさに私は耐えられないだろうなと思い、とりあえず保留にしていました。
の筈なのに(^◇^;)
ゆーき本さんのレビューを読んだ時、やっぱり読む!!!と方向転換。
今日は皮膚科に朝から並びました。
一時間前に家を出て、45分くらい並んだのか!?
もう並び時間が足らないっ!!!って文句言いたくなるくらい本の世界に引きずりこまれちゃってました。
で、手荒れ、足荒れで皮膚科に行ったのですが、顕微鏡で組織とって調べてもらった挙句、『老化ですね』って言われました。
(*ノω・*)テヘ
老化かーい!( ̄▽ ̄)
この本をぐいっと読ませる理由は、前半の展開の早さですよね。
ページ開いてすぐに急展開。
急展開からのスタートで、続きを読まないわけにはいかなくなります。目が離せない!
ゆーきさんが高評価つけてましたからね、きっと最後は報われる筈だ!って信じて読みましたよ。
半分から後は、少しヒヤヒヤしながらも、少し安心しながら読めるようになりました。
じぃーーーーんとしました。
凄く良かったです!
母親目線で読んでしまうんでしょうかね。
終始耕一くんの幸せを願いながら読みました。
とーっても良かったです!
私にはとっても刺さりました╰(*´︶`*)╯
母親の居ない耕一郎は、働けなくなった父親に代わりに定時制高校に通いながら新聞配達やガソリンスタンドで生計を立てていた。
とある冬の日、貯めた8万円が消えていることに気付く。
その頃アルコール漬けになっていた父親が警察に保護され、引き取りに行った際、酔っ払った父親に問い質すと、父は金を使ったことを認め、さらに耕一郎の心を壊す程の破壊力を持つ言葉を吐いた。
衝動的に父を殴り、雪の中に倒れた父を放置して故郷から逃げる。。。
Posted by ブクログ
めっっっさ良かった…
感情がぐちゃぐちゃになりました
ぐちゃぐちゃの感情のまま 最後は主人公の耕一郎と共に涙を流していました( ノД`)。・゚
生まれてすぐに両親は離婚し、父親に育てられた耕一郎。運送会社で真面目に働いていた父は 事故を起こし無職になってから酒に溺れるようになる。
耕一郎は定時制の高校に進みバイトをして生活を支え始める。しかし、働いて得たお金は父親の酒代やギャンブルに消える日々。 そんな毎日から抜け出そうとコツコツ貯めていたお金を ある日 父親のパチンコ代に使われてしまう。
そして、父親から放たれた最悪の一言…。
キレた耕一郎は夜の雪道で父親に暴行を加え 置き去りにして故郷を去る。
もう!辛い!!
まだ未成年の耕一郎。
すべてを捨てて生きていくには幼すぎるし、夢も将来も捨てるには若すぎる。
「神様は乗り越えられる試練しか与えない」とか嘘でしょ!?とマザーのテレサに突っかかりたくなるほど 耕一郎のに身に次々と起こる出来事は辛いことばかり。
ホームレス、日雇労働者、
「就職して 結婚して 一姫二太郎をもうける」という普通の夢すら叶わないと悟る耕一郎。
耕一郎の誠実さとか真面目さが、耕一郎の考え方や行動からバンバン伝わってくるから余計に なぜこんな良い子がこんな目にあっているんだ!と思わずにはいられないし 「このまま身体が動かなくなるまで日雇労働で働いて、働けなくなったら路上生活に戻るだけなのだろうか」と悲観する耕一郎に胸が締め付けられます…。
だから寄せ場での”おっちゃん”との出会いから、少しづつ変わり始める耕一郎の日々に目が離せなくなって そこからは一気読みでした。 もうこれ以上に試練を与えないで!って気持ちで!
そして 故郷の雪道に捨ててきた父親はどうなっているのか?!
みなさんが言っていたライター。
きっとそういうことかなとは思ってはいたのですが、
耕一郎が呟いた
「あぁ……ここに来て……ここに来てコレかよ……。」
まさにこれっ!!。゚(PД`q*)゚。
耕一郎は若さを謳歌できるはずの時期を 辛い経験に費やすことになってしまったけど、その時に耕一郎と出会えた人たちは、耕一郎との出会いを大切に思っていると思う。三浦さんもA君もおっちゃんも…。
すんなりと心の整理が出来るような結末ではないかもしれません。
でも、だからこそ あの子が言っていたみたいに
「耕一郎は、絶対に幸せになる資格がある」
そうでなきゃやってられん!!
Posted by ブクログ
定時制高校に通いながらアルバイトをして、無職の父の代わりに生活費を捻出している耕一郎。
苦労して貯めた八万円を父に使われ、挙げ句の果てに衝撃的なひと言を放ったことに思わず殴り倒し、雪の中に置き去りにして故郷を去る。
殺したであろう父から逃れるようにその日から逃亡生活が始まる。
所持金も底をつき、ホームレス生活になり、そこから人伝に日雇いの仕事をつき、そこで親しくなったおっちゃんと屋台のたこ焼きを…。
そのおっちゃんとの出会いと別れを経験し、新たな仕事も得て、流れるように年月は過ぎたが、将来が見えないのは父のことがあるからだった。
故郷へ帰る決意をした彼を待ち受けていたものは…。
すべての真相を知ったときの気持ちは、愕然となったとしか言いようがない。
苦しい辛い思いをして逃げて生きてきたことは、無駄とか、無意味ではないだろうと思うのだが、普通では経験できないことや会うことのない人との出会いであり、関わりであり、逞しい道のりであったのでは…と感じた。
ただただ、彼は実直であったと思う。
Posted by ブクログ
今年イチ揺さぶられた本。
故郷からの逃亡。絶望。どん詰まり。
それでも腐らずに生きる道を切り拓いていく主人公を見守る気持ちで、あっという間に読み切った。
ラストで彼が触れる思いに、激しく感情移入すること間違いなし。
Posted by ブクログ
小説すばる新人賞受賞した今作
定時制高校に通う耕一郎がやむなく父を殺してしまう
道を踏み外してしまった少年があとどなく逃亡する社会の裏側で触れ合う人達との物語
デビュー作とは思えないほどの青白く煌めく情熱が渦巻く
社会を追われた少年が、這いつくばって社会の裏側で生きる日々
絶望的な状況でも前を見て日々を生きようとする少年の強さは一読の価値がある
孤独な彼の旅の深い結末に泣かされた
本当にこれはデビュー作ですか?
Posted by ブクログ
読み終わって、タイトルの秀逸さに唸りました。今は、紙の地図を使う機会なんて学校の授業くらいしか思い浮かばなかったのですが、紙ならではの良さがありました。
救いがあまりない展開に、耕一郎のこれ以上の不幸をみたくない思いで終始どきどきしました。表からこぼれ落ちてしまった裏側の世界は、なかなか厳しそうでした。誰もが生きるだけで精一杯で、余裕なんてない世界だから当たり前ですよね。
ドラマチックでもなんでもない、誰にも同情してもらえないような、そんな理由でという理由で裏側に落っこちてしまう。それがリアリティがあって、こわかったです。
Posted by ブクログ
ままならない状況から逃避して、身分証明が必要な世界から転げ落ちてしまった主人公。路上生活者から日雇い労働まで。
そこから何とか這い上がることができて心底良かった。実際にありそうな話で切なくなった。
普段何気なく享受している日常のありがたさを感じた。
Posted by ブクログ
高校生で父親の代わりに生活費を稼ぎ父親の復帰を願うも、現状は望まない方向に・・次第に溜まっていく鬱憤とやるせない思いから、父親に暴力をふるい故郷を捨て、生きていく耕一郎。出会いと別れを繰り返しながら、成長していく姿に強さを感じました。
父親の本当の思いとは?普通の生活のありがたみを知る一冊になりました。
Posted by ブクログ
逢崎遊さんの作品、初読みです。2025年初作家、47人目です。
この作品は36回小説すばる新人賞受賞作でデビュー作だそうです。
この本をブク友さんの本棚で見つけ、読んでみたいと思いました!
あらすじだけ見ると本当に暗くって苦しい話しに思えましたが、読んでみると主人公の強さ、真面目さ、一途さで主人公を応援したくなるお話しでした。
おっちゃんとの話しとかもう、涙涙でした。
これからの耕一郎くんの将来が幸せで素晴らしい物だといいなぁと素直にそう思える作品でした。
Posted by ブクログ
"それでも微かな花火は、確かに目の前で散っていった。"
読む手が止まらなかった。素直になれない人の愛情表現はとても下手くそ。耕一郎の底力をみた。
私の人生で地図を見ることはほぼない。旅行に行く時のMAPしかない。本屋で地図を見てみようと好奇心がわいた⭐︎
Posted by ブクログ
ブク友さんたちが話題にし気になっていた一冊です。著者の逢崎さんはまだ二十代で、本作がデビュー作にして小説すばる新人賞受賞とのことです。
定時制高校に通う耕一郎は、苦労して働き蓄えた金を父に盗られ使われてしまいます。悪びれない態度と別の鬼畜の様な所業に怒りが沸点を超え、殺めてしまうところから物語が始まります。耕一郎が故郷から逃亡し、流転して辿る人生が描かれます。
まずは、筆者の思いの丈、物語の緻密さから熱量がバンバン伝わり、メッセージ性を強く感じます。重い話ながら、一歩一歩階段を登っていくような堅実な成長譚でした。複数のエピソードを一体化させ、章立てのない展開がどんどん先を読ませる吸引力となっています。
さらに、社会からかけ離れた場所での出会いと別れ、温もりと情にホロリとさせられます。登場人物の個性の書き分けも巧みです。著者が生まれる前(30年前)の裏側の世界の取材力にも長けていると感じました。
ただ、感心した点も多かったのに、違和感を感じている自分がいました。
まずは、メッセージ性が強い故か、〈俺〉の一人称で進む展開の状況説明や発話が冗長に感じました。また、〈俺〉の思考が明晰で、苦境への適応力に優れ、判断・行動が10代のそれとは違い、等身大とは思えない気がしました。
加えて、出てくる目上の人がみんな"いい人"で、思いがあふれる手紙や餞の通帳など、余りにも唐突によい方向へ進み、違和感につながった気もします。先が見え過ぎたのも一因かもしれません。
「正しき地図」で普通の家庭を夢見た、真面目で爽やかな耕一郎に共感はもてました。世の中には地図に載らない場所もあります。そう、しっかり自分と向き合えば、道は拓けるのですね。耕一郎の再生の物語としては、十分に訴える力がありました。辛くもありましたが希望のある一冊でした。
Posted by ブクログ
アメリカン・ニューシネマみたいだった。
本書に登場する人々は良くも悪くも「父親」ではある。みっともなく悪い所を見せては「こうなるなよ」と背中で見せるからだ。
主人公が転々とする場所で出会う男たちが皆、魅力的である。ただ、共通しているのは「こうはなりたくない」と思わせてくれる事だ。ホームレスにその日暮らしの労働者。全員悪い人ではない。だが彼らが置かれた立場には行きたくない。
オチに関しては想像がついた。だからと言って本書の評価が云々ではない。
よく出来た話である。どれだけ文学が、文化が、と言っても所詮、小説は娯楽の一つでしかない。言わば夢物語だ。現実にはもっと陰惨な話がゴロゴロしている。これだけの文才と眼があるのだから結末はどうにかなったのではないか……いやでもこれ以外の結末となると……そんな風に戸惑ってしまう。
Posted by ブクログ
社会のレールから外れてどん底まで堕ち、ホームレス生活や日雇い労働といった過酷な日々の中でも腐ること無く、まっすぐに頑張る主人公に好感が持てた。
出会いと別れの繰り返しの中で助けられ、徐々にステップアップし成長していく。
なんといっても、おっちゃんがいい人過ぎて
切なすぎて泣けてくる。
お父さんとの関係に、やるせなさが残るものの、最初から最後まで飽きることなく読み応えがあって良かった。
Posted by ブクログ
新人賞でここまでの読ませる作品なの、すごい。主人公が苦労する系の青春小説で、嫌いにならない応援したい主人公のライン設定が上手いのかな。この先も色々読んでみたい作家さん。
Posted by ブクログ
地図がキーワード
読んでいて、中盤くらいでこのタイトルの意味が少しずつわかってくる
まさに地図の裏側なんです
謎が謎として残る部分もあるし、あの人は結局どうなったんだろうと思う部分もあります
父と息子のすれ違いはなぜ起こらなければならなかったのだろうとも思う
最後で少し不完全燃焼ながらも明るい未来が持てたようなそんなラストかなと思っていたら、ちょっと予想外のことが起きて
この気持ち、どうしたらいいんだ
と涙しました
Posted by ブクログ
2023年第36回小説すばる新人賞
無職となりアルコール依存であった父親を
保護されていた警察へ迎えに行き
衝動的的に殴り続けて雪の中放置した
息子の定時高校生
父親は死んだと思いそのまま逃亡者となる
まず社会の底辺へ身を落としそこから遡上していく青年の真摯な生き方が 汚れたおばさんの心に響きました
“寄せ場”の日雇い労働者を描かれた小説としては
木原音瀬さんの「惑星」
西村賢太さんの「苦役列車」
等を読みました
その2作品も好きなのですが
この小説は、社会の下層で思いやれる気持とか助け合う関係とか そこから次に進もうとする意識とか 共感を得る部分が多いのではと思います
地図というアイテムを 青年の拠り所としてだけではなく父親との共通点として収め、
練ったんだろうなあって感心しました
Posted by ブクログ
綺麗に事が運びすぎ感はあるが、主人公の実直さの結果と思えば納得。
最後に主人公が感じる気持ちには賛否両論かもしれないが、若さゆえかもしれない。
鉛を飲み込んだような重さがあるが、主人公の今後の幸せを願う。
Posted by ブクログ
中学の頃に父親が職を失い、定時制高校に通いながらバイトを掛け持ちし親子2人の生計を立てている耕一。ある日、父親の行動に我慢の限界を迎え極寒の雪の中で父親の意識がなくなる程の暴力を振るい、見知らぬ土地へ。
身分を隠しながらホームレスになり、その後は日雇い労働者を知り、その日暮らしの生活へ。
行く先々で真面目に働く耕一をみて、いろいろな人が支えてくれる。
大勢の10代の子達が歩む道のり、正しき地図を歩めなかった耕一ではあるが、それでも真面目に働く事で良い出会いに結ばれていったんだなと思う。
父親との件に決着がついた耕一のこの先に、彼の思い描く夢が叶う日がきますように。
父親の思いよ、、気持ちをきちんと伝える事の大切さ。
Posted by ブクログ
読み終えたときに、目頭がじーんと熱くなりました。
耕一がたくましく、無我夢中で生きる姿から目が離せませんでした。
ホームレス生活から始まり…三浦さんやおっちゃんとの出会い。
お父さんの真意が気になるところです。
Posted by ブクログ
⚫︎感想
根が真面目すぎてすれ違う父と子の話。結果、二人はとても似ていた。
やはり、自分の存在意義を他者に求めて生きるのは、いつかは破綻するのだから危うい。
真面目すぎる親が、できた子を持つと、自分の不甲斐なさが人より辛く感じられるのもわかる。真面目な子が、なんとか親を助けたい、恩を返したいと張り切るのもわかる。悲しいすれ違いがあった。
経験や人との出会いで成長していく様を、緊張感を持ちながら一気に読み進められるが、ここまでに比べて、地元に帰り、ことの真相を知るラストは少し物足りないようにも思えた。ただ、父の考えは残された遺品や行動と、真面目ゆえ考えを他者になにも語らなかったそのことそのものが、父の愚直さを表現しており、その息子にも同じような血を感じた。現実でも、その人物が語らない限り、何を考えていたかはわからない。父の考えを詳しく書かないことの美学が感じられた。
⚫︎本の概要より
【第36回小説すばる新人賞受賞作】
定時制高校に通いながら無職の父に代わり働く耕一郎は、ある冬、苦労して貯めた八万円が無くなっていたことに気づく。
このことを父に問い質すと、父は金を使ったことを悪びれもせずに認めた上、予想を超える衝撃の言葉を言い放った。
衝動的に父を殴り飛ばした耕一郎は、雪の中に倒れた父を放置して故郷を逃げるように去る。
しかし、僅かな所持金は瞬く間に減り、逃亡生活は厳しくなる一方。
遂に金が底をつき、すべてを諦めようとしたそのとき、
「……なに、訳あり?」
公園の隅、小さなホームレスの溜まり場から、ひとつの手が差し伸べられる。
出会いと別れを繰り返し、残酷な現実を乗り越えた先、故郷へと帰る決意を固めた耕一郎を待ち受けていたものは──。
Posted by ブクログ
高校生の耕一郎(こういちろう)は父親と二人暮らしでしたが、あるきっかけで父親を殺してしまい家を出ます。そんな彼が身元を保証するものもない状態から苦労を重ね様々な人と出会い成長していく物語りだったと思います。シチュエーションとしては究極すぎるようにも思えましたが、出会う人々とのリアリティのある関係性は大変面白く読み進めることができました。星3つの評価としました。
Posted by ブクログ
読んでいる間ずっと違和感が拭えなかった。内容としては面白かっただけに残念。
定時制高校に通いながら必死にバイトをした金は父親の酒代に変わる。そんな毎日を過ごしながら、ある日我慢の糸が切れた耕一郎は、父親を殴り殺してしまう。そのまま逃げるように故郷を離れ、ホームレスとして生きていく耕一郎。やがて、日雇い労働者となり、そこで知り合ったおっちゃんと屋台のたこ焼き屋をすることになる。
その後、おっちゃんの計らいで東京の金属工場に勤めることになった耕一郎は、父親の生死を確認するために故郷に戻るのだが・・・。
まず、死んだか確認せずに逃亡するなんてことがあるだろうか?そして、何年も経ってから父親の事件を調べだしたり、普通の精神状態では考えられない行動としか
思えない。ラストはお涙頂戴を狙っている感ガアリアリだが、これもまた腑に落ちない。ただ、おっちゃんは良かったな。
Posted by ブクログ
フォロワーの皆さんが軒並み高評価なので、楽しみにしていた作品…なんだけど、私には何故だが刺さらなかった。
なんでかなと考えてみると、父親を殴って雪に埋めたその後が、しばらく置き去りになっているところが気になったのかなと。
死んでしまったのだから…と現実逃避して、深く追わないという心理は、わかるようなわからないような。素性を隠し、出来る仕事を探しながら必死で生きていく耕一のことは、ずっと応援しながら読んでいたのだけど。
個人的にはおっちゃんが好きだったな。